僕が死ぬ日・・生まれる日 -79ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

夕暮れ時の神社は昼間のざわめきなど想像もつかない程・・


静寂に包まれていた。


ゴォ~ン・・ゴォ~ン・・


夕暮れを告げる山の向こうの寺の鐘が静かに響き渡る。


晃は神社の境内に着くと無理矢理に真子の手を引き離した。


「で、俺に話ってなんだよ!早く言えよ!」


そんな晃に真子は恥かしそうに話し始める。


「あの時はありがとう!私の命を助けてくれて・・

うちのお父さんがあなた達に酷い事をしたのに・・

私を助けてくれてありがとう・・」


真子は全てを知っていた。


自分がこの世に誕生した変わりにある大切な命が消えた事も・・


「別に・・

お前えを助けた事とお前のオヤジの事は関係ないよ!

それに大人の事情は俺には関係が無い!

俺はお前を助けたいと思ったから助けたんだ!

だから、そんなくだらない事を気にするなよ!」


晃はわざと大人びた言葉を使った。


スッ・・・


すると不意に真子の手が晃の額の傷に・・・


「それに私の為にこんな大きな傷を・・

本当にごめんなさい!」


「だから、お前は何が言いたいんだよ!

回りくどい話は嫌いなんだ!早く言えよ!」


「もうお別れでしょ!私達・・

私、小学校は沼津の学校に行くんだ!

だからもうお別れでしょ・・」


「お別れって!お前!何時でもこうして会えるじゃないか!

家だってすぐ側なんだから・・・」


「違うの!私、沼津の叔母の家から通うの!

だから明日、引越しをするのよ!」


大人の今ならさほど気にする事が無い距離であった・・


しかし、幼い子供の二人には長岡から沼津と言う距離は・・


まるで外国にでも行くような遠い国のように感じられていた。


「そ・・そうか!でも仕方が無いじゃん!親が決めた事なんだろ!

仕方が無いじゃん・・それでも・・」


晃はそう寂しそうに呟いた。


「わ・・私ね!あなたの事が好きよ!

わ・・私・・晃君の事が好きなの!」


突然の真子の言葉に晃はなんと答えて良いか解らなかった・・


しかし、心は嬉しがっていた・・


そんな心とは裏腹に口で酷い言葉を言ってしまう・・


それが男と言う物なのかもしれない・・


「えっ!冗談だろ!俺はお前の事なんか何とも思っていなよ!

悪い冗談だ!勘弁してくれよ!」


そんな晃の言葉に真子の目から大粒の涙がこぼれ出した・・


すると・・


「オイオイ!熱いね!お二人さん!ガキのくせにデートかよ!」


振り返るそこに数人の小学生が立っていた。


「あれ!お前!山田の真子じゃね~~か!

お前のオヤジ、サイテーだって俺の父ちゃんが言ってたぞ!

偉そうにガキのくせに男とデートなんかしてんじゃね~~よ!」


そう言うとその少年は真子を突き飛ばした!


「おい!お前!小学生だからってあんまりふざけんなよ!」


晃が鋭い目つきでそう呟く!


「あれ~お前!義明さんの所の晃じゃね~か!

お前!良いのか?こいつ・・お前ら親子の敵だろ??

お前のオヤジに知られたら殺されるぞ!」


「別にお前らには関係無いだろ!」


「何だ!お前・・偉そうだな!

子供には大人の理屈は通用しないんだぜ!

おい!皆、少しこいつ勘違いをしているみたいだぜ!

いろいろと教えてあげようぜ!」


そう言った途端に少年は晃を殴りつけた。


「ウッ!」


晃はそのまま倒れこむ・・


「ふざけんなよ!お前・・・」


そう叫びながら晃はその少年を投げ飛ばした!


「俺だって柔道やってんだぞ!お前らなんかに負けるかよ!」


そう晃が言った瞬間・・


数人の少年達が一成に晃に襲い掛かった・・・


体つきは倍以上も違う小学生数人に晃が勝てる訳が無かった・・


晃はそのまま地面に叩きつけられると何度も何度も殴られる・・


「や・・やめて!お願い!晃君を殴らないで!お願い・・・」


晃が動かなくなると・・


少年は言った・・


「お前・・あんまり俺らを舐めるなよ!」と・・


晃は彼らに殴られながら考えていた・・


力が・・力が無ければ大切な物は皆・・消えてしまう。


小雪さんは言っていた・・


本当に大切な物を守るのは力ではないと・・


晃もそう思っていた・・


しかし、現実はそんなに甘くないのだ・・


現に今、晃は真子の目の前で無様な姿をさらしているのだから・・


「反省しろよ!」


少年達は笑いながらそう呟き消えた・・・


涙が止まらなかった・・


殴られた痛みよりも・・・


心が痛んだ・・


守れなかった自分と言う人間が悔しかった・・


「大丈夫??立てる???」


真子は心配そうに右手を差し出す・・


「別に!お前には関係ないだろ!」


晃はその手を払い自分で立ち上がった。


「それで・・話って・・話が無いのなら俺、帰るぞ!」


すると真子はポケットから可愛い鈴のついたピンクのキーホルダーを取り出した。


「私はあなたを忘れない・・・

だってあなたが大好きだから・・・

だから、晃君も私を忘れないで貰いたいの!

何時かもう一度・・二人で出会う時まで・・」


チリン~~~チリン~~~


そんな言葉を呟きながら真子は数回、その鈴を鳴らした・・・


「けっ!くだらない!」


晃はそんな言葉を呟きながら心の中で呟いた・・


「ああ・・俺もお前を忘れない・・

もう一度・・お前と出会える時まで・・」と・・


真子は本当はその時に晃に言うつもりで居た。


「あなたの事を愛している!」と・・


でも、また、神のイタズラなのだろうか・・


偶然の出来事が二人を引き裂いた・・・


晃はそのキーホルダーを真子から奪い取るかのように受け取ると・・


大切そうに右のズボンのポケットにしまった。


真子の初恋は無残にも破れようとしていた。


しかし・・


初恋なんてそんな物なのかもしれない・・


叶わないから・・


初恋の想い出は多くの人々の永遠の心の支えとなっていくのだから・・