僕が死ぬ日・・生まれる日 -63ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

その月の2回目のサークルの時に今日子にとって最も悲惨な事件が起こる・・


その日の朝、何時ものように幼稚園の近くでタヌキと待ち合わせをして幼稚園に向う。


そんな時でも葵はタヌキの息子を何度も叩いていた・・


しかし、葵だけがそうかと言うとそうではなくタヌキの息子も同じくらい葵を叩いていた。


何なのだろう?やはり年をとってからの子供は甘やかせる為だろうか??


今日子もタヌキも30歳をとうに越えている・・・


もう良い年の大人である。


ある意味、若い母親の方が厳しく子供を育てるのかもしれない・・


しかし、葵に息子を叩かれる度にタヌキは今日子と話をしながら落ち着かないようにチラチラ息子を見つめる。


しかし、子供の世界と子供の世界は違うようだ・・


タヌキの子供もそんな葵との遊びを楽しいで居た。


「今日もサークル行くのに乗せて行ってくれないかな~~」


今日子のそんな言葉にタヌキは笑顔で頷いた。


幼稚園に無事に送り届け2時ごろに葵を迎えに行く・・


タヌキ親子と一緒に途中まで帰った。


帰り際に・・


「それじゃ~3時に迎えに来てね!」


今日子は笑顔でそう呟いた。


しかし、自宅に戻るとどうも体調が悪い・・・


ダルと言うか・・何と言うか・・・


なんか・・行きたく無くなった・・・


今日子はタヌキにメールを打った・・


「なんか、調子が悪いので今日は行けません・・・」


丁度、その頃、タヌキは今日子を乗せて行くのに車の中を掃除していた。


そしてそのメールを見た瞬間に殺意に似た怒りを覚えたのだ・・


ふ・・ふざけんな!さっきまで元気だったじゃん!


しかし、人間の体とはとてもデリケートで急に具合が悪くなる事だってある。


そんな経験・・誰でもあると思う・・


きっと、今日子が行けないとメールした事は大した事では無かったのだと思う・・


それはただのきっかけで、タヌキの中のストレスが一気に爆発したのだ・・


「あんた・・ふざけてるの!

もう、一緒に行かないから・・・」


怒りに震えた指先でタヌキはそう返信をした。


ビックリしたの今日子である!


そのメールを見て直ぐに事情を説明する為に携帯電話の番号を押した・・・


数回の呼び出し音の後、電話は留守番電話に切り替わる。


何度も何度も震える手で電話をかけたが全くタヌキが電話に出る気配は無かった。


今日子は急いで娘の葵を自転車に乗せるとタヌキの自宅に向った。


数回、チャイムを鳴らすと笑顔のタヌキがドアから顔を出す・・


そして今日子の顔を見た瞬間、鬼のような形相にその顔は変化する・・・


「何回も電話したのよ!ごめんなさい!急に調子が悪くなってしまって!」


今日子は申し訳無さそうにタヌキに謝罪をした。


何時もならここで・・


「良いのよ!仕方が無い・・・」と言う返事が来るはずであった・・


「あんた・・元気じゃない!私の事、バカにしてるの??」


意外なタヌキの言葉と冷たい視線に今日子は震えた・・


「い・・いや・・ごめんなさい!」


消えてしまう!友達が・・友達が・・消えてしまう・・・


今日子はその場で土下座をした・・


泣きながら・・土下座をしてタヌキに謝罪をした・・


何度も・・何度も・・頭を床に擦りつけながら謝罪をした・・・・


そんな姿を見てタヌキは・・・


あ~この女は自分の下の人間だと思った・・・


友人ではない・・こいつは・・私より下の人間だと・・・


タヌキは含み笑いをしながら・・・


「今回は許してあげるけど・・

次は無いからね!」と呟いた・・


そんな言葉を聞きながら・・


「ありがとう!ありがとう!」と何度も今日子は泣きながら言った・・・


友達って・・何だろう???


友達って・・そんな事までして持たなければいけないものだろうか???


ある意味、確かに今日子にも非がある。


しかし、も直ぐ40歳になるような大人の人間が・・・・


そんな単純な事で涙を流しながら謝罪をしてる人間に対して・・・


言う言葉はあるのでは無いのだろうか???


それ程までになぜに友達を守ろうとするのか???


孤独になると言う事は・・そんなに恐怖なのだろうか???


その日の夜、誠が自宅に帰宅すると真っ暗なキッチンで椅子に座り今日子が泣いていた・・・


さずがの誠も・・


「どうしたんだ?」と声をかける・・・


詳しく話を聞きながらなんとも大人気ない話に呆れてしまった・・・


確かに約束を破った今日子が一番、悪いのかもしれない。


しかし、具合が悪くなったのだから仕方がないと言えば仕方が無い・・


1つ、許せなかったのは今日子が土下座をして謝ったのにそれを止めなかったタヌキの態度であった。


常識・・常識なんて口にする人間に限って本人が常識が欠落している・・・・


40歳にもなる人間が・・普通、相手にそこまでさせるだろうか???


まして、ただ、約束を破っただけなのに・・・


誠には土下座をした今日子も信じられなかったし・・


それを何も言わないで見ていたタヌキと言う女も信じられなかった・・・


誠は今日子に向った言った・・


「何もそんな辛い想いまでしてそんな奴と付き合わなくても良いじゃ無いか?」と・・


誠にしてみれば、別に居なくなっても良いじゃないかと簡単に言いたい気持ちであった。


別に・・・周りに人間は沢山居るのだ!


何時か、気の会う相手が見つかる・・・


なにも、そんな事までして友達で居なければいけない理由が誠にはどうしても解らなかった・・・


「簡単に言わないでよ!ママ友の世界の事なんか!何も解って居ないくせに!

1人に嫌われたら全員からシカトされるんだからね!

色々な陰口を言われて!

私は良いわよ!でも、葵が可哀想じゃないの!葵が・・」


誠は興奮しながらそう叫ぶ今日子を見ながら心の中で呟く・・


違うだろ・・本当は・・・葵じゃないだろ・・お前だろ?と・・


「そうか!なら、別に何にも言わないよ!

それに、俺は、1度もいじめってヤツに合った事がないから・・

何も助言できないしな!

まぁ~頑張れよ!」


本当は誠もその時に今日子と一緒にこれからどうするか?考えようと思っていた・・


しかし、そんな今日子の言葉が誠の開きかけた心をまた閉ざしてしまったのだ・・・


誠は一言・・・言ってあげたかった・・


「誰も居なくなったって良いじゃないか?

お前と葵には・・俺が居るんだから・・・」と


でも、その言葉は・・誠の口から発せられる事なく・・


再び誠の心に閉じ込められた・・・


数ヶ月後、誠はこの時にこの言葉を言ってあげなかった事をもの凄く後悔をする・・


そして、この時に妻の苦しみを少しでも理解してあげようとしなかった事を・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・




オカメは完全に今日子と離れてしまった。


若いグループの仲間と楽しそうに話をしてる姿をみるとなんとなくイラ付いた。


なんて我が侭な女なのだ!この女は・・・


車・・どうしょう??


その時、今日子は幼稚園の他に2箇所のサークルに参加をしていた。


全てオカメと一緒だったので月に2回ほど通うサークルに何の不便も無かった。


しかし、オカメが消えてしまった悩みは通う手段である。


車を持っていない今日子の移動手段は殆ど自転車である。


会場は二駅離れた場所にあり自転車で通うのは少しきつかった。


今日子はタヌキに連絡をする。


1つの体操サークルは無理だがもう1つの児童サークルにはタヌキも参加をしている。


「タヌキ・・14日のサークル・・参加する??」


「えっ?するけど・・

悪いんだけど乗せて行ってくれないかな??」


「えっ??別にかまわないよ!どうせ・・車だし・・・」


そんなタヌキの言葉にやはりいろいろとあるけれどタヌキが一番の親友だと今日子は思った。


14日の日に自宅前までタヌキは迎えに来てくれた。


葵はアイスが大好きで行く前にアイスを食べたいとごねて泣いた。


今日子は仕方が無く凍らしたチューペットの半分を与える・・・


丁度、その時に今日子の携帯電話が鳴り急いで今日子は葵を連れて外に出た。


葵の手は・・アイスでべとべとになって居たが洗ってあげる時間も無かったのである。


車に乗り込むと車内の甘い香りが充満する・・


一瞬、タヌキが渋い顔をして葵の手と口の周りを確認した・・・


葵は何のためらいも無くタヌキの子供とじゃれあっている・・


タヌキの子供の洋服はアイスを触った葵の手で少しだけ汚れた・・・


しかしそれに気が付いていたのはタヌキだけで今日子は気が付かない・・・


より一層・・タヌキの表情が渋くなる・・


自分の子供の世話できないなんて・・・


心の中でタヌキはきっと呟いていたに違いない・・


サークルに付くと葵の手を洗いにトイレに向う。


タヌキの所に行くとカマキリと一緒であった。


「こんにちは!」


今日子が挨拶をしたがカマキリは知らん顔だ・・・


そして今日子に聞こえよがしに嫌みったらしく呟く・・


「いや~ね!気遣いの出来ない人間って・・・」と


今日子にはその意味がわからなかった。


サークルが始まるとタヌキは今日子の側に居ないでさっさとカマキリのグループに・・


葵には人を叩く癖があった。


旦那の誠はその度に葵をもの凄い顔で叱った・・


しかし、その度に今日子に文句を言われる・・


「うちは叱らない教育方針なんだから・・・」と


悪い事は叱ってあげなくて、理由を理解させなくてはいけない。


誠はそう思ってたが、何度も今日子に言われるので面倒になり葵を叱る事を止めてしまった。


自由奔放とは聞こえが良いがその行動はどが過ぎている・・・


なんとなく今日子と葵の周りを皆が避けていた・・・


「小さな子供がやっている事なのに・・・なんだか・・・皆、理解が無いな!」


それは今日子の能天気な考えで・・・


周りの人間からしたら、可愛い自分の子供が叩かれているのだからたまったものではない・・・


それに気が付かない今日子も今日子だが・・


そんな事を言ってくれる人間が誰も居なかった事が今日子の不幸の原因だったのかもしれない。


今日も周りのママサン達のヒソヒソ声が聞こえる・・・


「本当に葵ちゃんママは・・常識が無い」と・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・


その日も今日子は何時もの場所でオカメを待っていた。


しかし、何時もの約束の時間になっても結局はオカメは現れない。


今日子はしびれを切らし娘の葵を連れて幼稚園に向った。


何度も、オカメの携帯にメールや電話をしたが通じる事は無かった。


幼稚園に着き、教室を覗くとオカメの娘が楽しそうに遊んでいる・・


何で??もう、来てるんじゃない・・・


今日子を何とも表現できない息ドウリが襲った・・・


その日の夜に今日子にオカメからメールが届いた。


「悪いけど・・朝は別々に行きたいんだけど・・・」


そんな短いメール


今日子は返事を返す気力も無くなった・・


ただ、何も考えられずにその送られたメールを眺めていた。


私がいったい彼女に何をしたのか??


あんなに気を使っていたのに・・


色々な物をあげたし・・・


お弁当だって作ってあげていたし・・・


「あげたし・・」


それが今日子から友達が消えて行く理由である事を今日子はまったく気が付いていなかった。


そしてまた、泣きながら母親に電話をした。


「何で私ばかり・・・こんな目にあうのよ!」


今日子の母親はそんな娘を不憫に思い一緒に泣いた・・・


しばらくしてタヌキから真相めいた話を聞いた・・


「ほら・・あの子、まだ若いじゃない・・

カッパとか私と10歳以上も年が離れているし・・

なんか、昔からあんな感じらしいよ!気まぐれなんだよ!

それに、葵チャンの誕生日会がオカメの娘の誕生日会より盛大だったから・・・」


そう何ともあやふやにタヌキは今日子に言った。


誕生日??


そう言えば・・葵の誕生日の後からだ!


オカメが疎遠になったのは・・・


何だ!それ!


今日子は叫びたくなる気持ちを必死に抑えた・・・


自分の娘の誕生日会より私の娘の誕生日会が盛大だから・・・


何て理不尽な理由なのだ!


ならば、自分も出来合いの惣菜なんかではなく手造りに料理を並べればよかったのだ!


矛盾している・・


それにもしも言ってくれれば気軽に手伝ってあげたのに・・・


今日子は呆れてしまった反面・・・


自分に落ち度が無かった事に少しだけ気持ちが軽くなった・・・


安心をした今日子はまた、母親に電話をする・・


丁度、その時に誠が帰宅をした。


「ただいま~」


そう言ったが誰も家の中から誠を迎える者は居なかった・・・


何時のように無言でシャワーを浴びて出て来ても今日子の電話は終っていなかった・・


誠はまた、適当に食事を始める。


電話を切った今日子が嬉しそうに自分に非が無かった事を誠に話し始める・・


誠は興味無さそうに食事を済ませると食器を洗ってウォーキングに出かけた。


次の日から今日子は1人で幼稚園に行った。


そして途中で何時もタヌキ親子と待ち合わせをして幼稚園に向う・・


葵は相変わらず汚れた手でタヌキの服を触っていた・・・


嫌な顔をするタヌキに対して今日子はまるで気が付かないかのように何も娘に注意をしない・・


タヌキの中で少しずつストレスが溜まり始めた。


ママ友のなかで・・・


「あげたし・・」はタブーな言葉らしい・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・