僕が死ぬ日・・生まれる日 -62ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

私はたまに考える事がある。


もしも、魔法が使えたら自分は一番先に何をするかと・・・


もしも、人生の中で1度だけ魔法が使えたら・・


私はきっと、言うだろう・・・


もう一度・・人生をやり直させてください!と・・


今夜も私は最終電車の指定席に座っている。


「家が欲しいの・・大きな家が・・」


そう妻の友美が言い出したのが今から丁度、2年前の事であった。


私の名前は坂本誠、東京の貿易会社で営業の仕事をしている。


自慢ではないが、そこそこの給料も貰っているし・・・


現在、課長と言う役職を貰っている私は同期の人間から比べれば優秀な方であると思う。


妻と結婚したのが今から5年前・・


結婚して次の年に長女が生まれた。


現在3人家族・・・次にもう1人増える予定無し・・・


私は大きなリスクと引き換えに静岡の片田舎に夢のマイホームを購入した。


それと引き換えに私は片道2時間30分と言う長い通勤時間を背負わされる事になる。


何度も・・何度も・・反対をした。


しかし・・私の希望など聞き入れてくれる妻では無かった。


別に夫婦仲が悪い訳ではない。


今でもたまにデートをする。


結婚した今でも恋人同士のような関係だ。


ただ・・・


私は何時も妻とある女を何かある度に比べている・・・・


その女の存在は・・・


正直に言うと私の人生の最大の悔いであると言っても良いであろう・・・


そう・・・


その女性とのもう1度・・恋をしたい。


それが私の願い。


もしも、1度だけ魔法が使えるのなら・・


もう一度、今までの人生をリセットして・・


今度はちゃんと彼女にふられたい・・・


自分が年老いて死ぬ時に大きな悔いを残さないように・・・


ただ、そんな魔法など使えるわけも無く・・


きっと、私は死ぬまで自分の妻とあの女を比べながら生きて行くに違いない。


彼女の名前は佐藤今日子・・・


私が永遠に愛する事を誓った女である。


私は今日子を愛してる。多分・・いや・・きっと・・・愛している。


妻が居るのにそんな事・・卑劣な男だと罵声を浴びさせられるかもしれないが・・・


仕方が無い。


ただ、それは自分の心の中で未だに未練と言う名の思いで作られた小さな希望なのかもしれない。


愛してるのか??いや・・もしかしたら・・愛していないのかも???


本当は・・それを確かめたいのかもしれない。


時計を見ると夜中の12時をまわっていた。


最終電車など始発電車と同じようなもので・・


降りる人間も殆ど同じメンバーである。


私は駅を出ると自宅に向かい歩き始める・・


しばらくすると小さな明かりが目に付いた。


「何だろう??こんな夜中に・・こんな寂しい場所で・・・」


私はなぜかその光に導かれるかのように近づいて行った・・


まるで、電灯の明かりに吸い寄せられる羽虫のように・・・


その明かりの正体に気が付いたのは大分、その物体に近づいた頃であった。


「占いか・・珍しいな・・・」


そこには1人の老婆が座っていた。


こんな場所でこんな時間にお客など居ないだろうに・・・


私はそう思いながらその老婆の前を素通りしようとした。


「待ちなされ!そのお人・・・待ちなされ・・・・」


それが私の世にも不思議な世界への旅立ちの幕開けであった。


人生は辛すぎて私の手には負えない。



次の日の幼稚園からの帰り・・・


今日子はタヌキは2人で帰宅をした。


葵はタヌキの子供が大好きで今日も2人でじゃれあって居た。


「言い加減してちょうだい!どんどんうちの純が悪くなっていく!

葵ちゃんと遊ぶようになってからどんどん悪くなって行く!!」


今日子は笑顔で言った・・・


「子供には子供の世界があるのよ・・

まだ、4歳だなんて勘違いをしてるのは親だけ・・

4歳ながらも自分の世界がある。

そして責任を学んで行く・・

うちの葵と遊んでいるから悪くなるって・・・

ならば、葵と遊ばなくなったらあなたのお子さんは立派になるの?

良い子って何??

どんな子が良い子なの??

静かで自分の我を出さない親の言いなりの子供が良い子なのかしら?」


今日子の言葉にタヌキは顔をしかめる・・


「何よ!あんた・・偉そうに・・

自分の子供の面倒も見れない親のくせに!!」


「そう・・

私はダメな親なのかもしれない・・

でも、親も子供を通して学んで行かなくてはいけない・・

完璧な大人なんか居ないのよ!

子供の成長と一緒に親も学んで行かないといけない。

解った!もう、あなたにもあなたの子供にも関わらないようにすれば良いのでしょ?

解りました・・」


それが今日子の出した答えであった。


親は・・


親はね!


どんなにダメな親でも自分の子供を最後まで守ってあげないといけない。


子供がどんなに世間から悪く思われていても最後まで・・


その子を信じてあげなくてはいけない。


最後まで守ってあげないといけない。


それが、その子をこの世に誕生させた責任である。


そして、子供の人生は誰の責任でもない。


子供の責任である。


いろいろな失敗を繰り返しながら人間は成長をして行く。


そして、あくまでも子供の人生を左右するのは誰でもない。


親のだ。


自分の子供の悪を・・・


誰かのせいにしてはいけない。


自分の思い通りにならない子供を誰かのせいにしてはいけない・・


なぜなら、子供を育てているのは親であって他人ではないからだ。


自分が劣っている事を誰かのせいにしてはいけない。


他人は確かに様々な影響を与える。


それは、善でもあり悪でもあるかもしれない。


その中から、子供の進む道を導いてあげるのも親の責任ではないのだろうか?


人間は弱い生き物で愚か者である。


何時もだから逃げ道を探している。


「子供は親の背中を見ながら前に進んで行く・・・」


だから親は何時も真っ直ぐに前に進んでいなければいけない。


何の迷いも無く・・・真っ直ぐに前を・・


それが親の責任である。


子供は親の鏡・・・


くすんだ親の子供はくすんで行くのだ・・


世間からどんなに立派な人間だと言われている人間でも・・


心の中はその人間しかわからない。


子供を諭す前に・・・


まずは、自分を諭すべきだ・・・


子供を叱る前に・・


まずは、自分を自分自身で叱るべきではないだろうか??


子供は何時も親を見ているのだ・・


見ていないようで・・・


何時も親の背中を見ている・・


それは自分にとって一番の学びの対象が親であるからだ。


そんな親が誰かを平気で傷つけたり意地悪をしたり・・


それで良いの??それで・・・


弱い親にならない・・・


私は孤独は無い・・


たとえ幼稚園のママ達が全員、自分を邪魔者しても・・


私には旦那と可愛い娘が居るじゃないか・・・


今日子が出した答えは・・・


「悪に屈する事なかれ・・」


孤独になる事はなんか本当は怖くない・・


負ける事が本当は怖いのだ・・


「違う」と言えない事が本当は怖いのだ・・


弱い親の子はやはり弱い・・


真の強さとは誰かを傷つける強さではなく・・


誰かを幸せにしてあげる強さであると・・


親は子供に教えるべきであると思う。


今日子は葵の手を握り笑顔でタヌキに言った・・


「ごきげんよう・・さようなら・・」と


これから今日子が進む道は茨の道なのかもしれない。


しかし、1つだけ今日子は今回の事で解った事があった。


親は常に強くなくていけない。


そんなくだらない事を・・・


ただ、振り返ることも歩き出した今日子の顔は笑顔であった。


そこには孤独と言うな不安はまるで無かった・・・


きっと・・・


無邪気に笑う娘の手の温もりが・・・


今日子を笑顔にさせたに違いない。


親は子供の鏡である。


子育てにおいて正解は無いのである。


なぜなら、その子供によって正解が違うからだ。


そしてその正解を探す事が子供を育てると言う事なのかもしれない・・


「葵!今日は特別にアイスを買って帰ろうか!」


そんな言葉に小さな天使は嬉しそうに微笑んだ・・・ 


                           終劇

次の日から今日子はまるでタヌキの奴隷のような存在になった。


誠は毎晩のように聞かされる今日子の愚痴にいい加減、飽きていた・・


そんなもの・・相手にしなければ良いのだ・・・そんな女・・


いじめや、人間関係で悩んだ事が無い誠の答えは何時も簡単である。


嫌なら付き合わなければ良いのだ。


友達などまた、勝手に出来て行くものなのだから・・


何かを我慢しなければいけない友達とは???


存在する意味があるのだろうか??


毎晩、疲れ果てて帰って来る今日子・・・


そして自宅に戻るとなんとも重い空気になっている我が家・・


「お前さ~」


次の言葉が見つからない・・


夜、葵が寝ると今日子は1人で泣いていた・・・


そしてメールの音がなると怯えたようにそのメールを開いている・・・


いい加減にしろ!いい加減に・・・


誠はそんな家が嫌で自然と帰りが遅くなる・・・


今日子はドンドン・・孤独になって行った・・・


事件は畑で起こった・・・


その日は誠も気まぐれに畑に行った・・・


なんとなく・・・それはただ、なんとなくの行動であった・・・


畑に着くと葵は無邪気にタヌキの子供とじゃれて遊んでいた・・・


今日子はタヌキやカマキリの視線が気になり葵の世話どころではない・・・


葵が泥いじりをした手でタヌキの洋服を触った・・・


葵がタヌキの息子に叩かれていた・・


そして・・反撃とばかりにタヌキの息子を数回・・叩く・・・・


「ふざけんじゃないわよ!」


タヌキの怒鳴り声が響き渡る・・・・


ママ達が一成にタヌキを見つめる・・・


「クリーニング代・・払いなさいよね!

あんたの子供と遊ばせるとうちの息子がドンドン悪くなる!

本当はこんな子じゃなかったのに!

あんたの娘のせいよ!

この服だってドロドロじゃない!いい加減にしてよ!」


今日子が必死に頭を下げていた・・・


誠は・・・


「ママ達の世界にはママ達の世界があるのよ!

だから旦那が出て行くと話がややこしくなる!

ママ達の揉め事は・・ママ達で解決しないと・・・」


そんな言葉を思い出し何も言わなかった・・・


見て見ぬ振りをした・・・


ふと・・心の中でもう1人の自分が囁く・・


お前・・本当にそれで・・良いのか?と・・・


誠は泣きながらタヌキに謝罪をする今日子に近寄り今日子の右手をしっかりと握り言った・・


「お前・・どうする??」と


今日子は・・・弱々しく首を左右に振った・・・


それが・・お前の答えなのか??


誠はなんとなく寂びしくなった・・・


それが・・答えなのか???


「申し訳ありませんでした・・うちの娘がご迷惑をおかけしまして・・」


誠が出した答えは・・・


そんな今日子を支えてあげる事であった。


ママ達の問題はママ達で解決しなければいけない。


ここで誠が怒鳴り声をあげれば、きっと、今日子へのいじめは無くなるだろう・・


しかし、それでは何の解決にもならないのだ・・・


タヌキは誠の行動に一瞬、動揺した顔を見せる・・・


誠の手が怒りで震えていた・・・


それを見ていたタヌキの旦那が慌ててタヌキに言い過ぎた事を謝るように言った・・・


不機嫌そうにタヌキが今日子に頭を下げた・・・


「帰ろう!今日子・・・家に・・・」


誠は葵を抱き抱え・・今日子の手を引きながら自転車に乗った・・・


「泣くなよ!お前・・母親だろ??

そして・・俺の女房だろ?

だから・・こんな事ぐらいで・・泣くなよ!」


「何よ!あれ・・最低の家族ね!旦那も娘も最悪よね・・」


カマキリの声が聞こえる・・・・


「本当よね・・最低・・・」


タヌキの声が聞こえる・・・


最低の人間だなんて・・何年ぶりに言われたのだろう??


なんとなく・・誠の顔に笑みがこぼれる・・


「ほれ!今日子!帰るぞ!今夜は久しぶりにイッパイやるか??

たまには飲みにでも行こうぜ!昔みたいに・・・」


そんなおどけた誠に今日子が目に沢山、涙を溜めて微笑んだ・・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・