僕が死ぬ日・・生まれる日 -59ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

その日の夜に飲み会が開催された。


メンバーは、私と木村、今日子と友美の4人であった。


「純子は呼ばないのか??」


木村が不思議そうに私に聞いた。


どうも、この世界では仲良し5人グループらしい。


「ああ・・あいつも誘ったんだけど今夜は都合が悪いんだとさ!」


私は嘘をついた・・


本当は純子を誘っていなかった。


なぜか・・私は純子と言う女が怖かったからかもしれない。


自然と彼女を避けるようになっていた。


飲み会は、「木村と友美のカップル誕生祝賀会と今日子の失恋慰め会」と言う・・


大人の感覚では理解できない趣旨で行われた・・・


ようは・・ただの飲み会なのだ。


学生の飲み会などそんなものなのかも知れない。


11時をまわると何時ものように木村が時計を見ながら叫び出す。


「やば!終電じゃん!」と


それを合図に飲み会はお開きになる。


私は今日子を自宅に送る事にした。


今日子のアパートは私の降りる駅の1つ後の駅であったが歩いてもさほど遠くは無い。


2人で最終電車に乗り込み自宅に向った。


駅を降りて二人でくだらない話をしながら歩き出す。


それは・・何時もと変わらない光景・・


「ねぇ~誠・・」


「何だ??」


「島田君は何で私を嫌いになったのだと思う??」


「えっ??何でだよ!」


「だって・・私、彼に振られた理由がわからないから・・」


「多分・・あいつが本当の今日子の良さを理解できない子供だったんだろ!」


そんな私の言葉に今日子は納得が出来ないような顔をした。


「あのな!今日子・・

本当に好きだったらな!たとえ何があっても別れないんだよ!

どんな苦しみが待ち構えていようと・・

自分がどんなに傷つく事になろうと・・

愛する女を男は手放す事なんか出来ないんだよ!

島田がお前と別れたと言う事はさ~

その程度だったって事さ!

あいつのお前に対する想いが・・その程度だったのさ!」


私がそう言い終ると今日子は私の肩に寄りかかり・・


「でも・・別れは辛いもんだよ・・誠・・」と呟いた。


今すぐにでも・・抱きしめたい。


今夜の今日子はそう思わせるほど、魅力的な女であった。


本当は気弱になっている女を口説くのは自分のポリシーに反する行為であった。


しかし、私はもたれかかる今日子の肩をグッと抱きしめ・・・


「お・・おれ・・は・・お前を絶対に・・」


そう呟いた瞬間・・また、背後に人の気配を感じる・・・


「えっ??何??誠・・何か言った??」


私はゆっくりと後ろを振り返った・・・


そして私達を睨みつけるように見つめる女の顔を見た瞬間・・


私の全身に鳥肌が立ち・・体が震えた・・


「ど・・どうしたのよ!誠・・・」


驚いたように今日子も後ろを振り返る・・


そして・・言った・・


「あれ!純子じゃない?どうしたの??」と・・


「やっぱり~何か良い感じのカップルが居るな~って見てたら・・

もしかして誠と今日子??とか思ってさ~

やっぱり正解だった!」


純子は笑顔で私と今日子に近寄って来た。


「用事は済んだの?今夜、来れなくって残念だったよね!」


私は一瞬、全身に悪寒が走る・・


「ええ・・今、用事が済んでね!家に帰る途中だったのよ!

終電が終ってしまったから歩いていたの・・」


「そう・・大変ね!」


そう今日子は純子に言うと私に向かって言った。


「誠、私はもう大丈夫だから・・純子を送ってあげてよ!」と・・


私はあからさまに嫌な顔をした。


しかし、今日子は気がつかなかったようである。


「そんじゃね~」


そう呟くと今日子は足早に自宅へと走り出す。


今日子の姿が暗闇に消えると・・純子は微笑みながら呟いた・・


「なんか・・お邪魔してしまったようで悪かったわね!」と・・


なんとも・・なんとも表現できない冷めた微笑を浮かべながら・・


「お・・お前はいったい誰なんだ!

何で何時も!何時も!俺の邪魔をするんだ!」


そう叫びそうになった・・でも私はその言葉を必死に飲み込んだ・・


言ってはいけない・・


それは動物の防衛本能に似た・・脳からの命令だったのかも知れない・・


私と純子は歩き出す。


不意に純子が私の手を握った・・


「えっ・・お・・おい!何だよ!」


焦った顔をした私を見て純子は笑いながら言った・・


「純なのね!誠・・可愛いわ・・本当に・・本当に可愛いわ・・」と


私はその時に思った・・


時期が来るまで俺に告白をさせない気なんだ・・


俺をこの世界に招いた悪魔は・・・


もしかしたら・・


私は人生をリセットしたのは無いのかも知れない・・


ただ・・得体のしれない悪魔のゲームの駒として送り込まれただけなのかも??


私はその時期が来るまで今日子に自分の想いを告げる事を止める事にした。


たぶん・・今日子の答えが、このゲームのゲームオーバーを告げる合図なのだと思ったから・・


もう少し・・私はこの世界に居たい・・もう少し・・


私は純子と夜の暗闇に消えて行くのであった。


人生は辛すぎ私の手には負えない・・


そんな言葉を呟きながら・・


誰かの声が聞こえた・・


「この女の正体を探ってはいけない・・

この女の正体を知った時に・・

お前は消えてしまうのだよ・・」と

「オタク・・誰よ??」


島田はそう呟くと私を睨み付けた。


「少し、話があるんだけど・・時間、あるか??」


私のそんな言葉に・・・


「別にかまわないけど・・

でも、そんなに長くは無理だぜ!

これから、池袋のアニメショップに皆で行くから・・

今日は声優のみぃ~なちゃんのサイン会がるんだ!

早く行かないとミニコンサートで前列を逃してしまうからな!」


はっ??


私は一瞬、呆れた顔をした・・


こんな男が今日子の彼氏なのか??こんな・・


「ああ・・時間は取らせないよ!」


島田は無言で仲間達に目配せをした。


それを合図に数人の仲間はまた、バカ話をしながら歩き出す。


私と島田は後校舎の裏側に移動をした。


「それでオイラに用事って何よ??

それにオタク・・誰??」


「ああ・・坂本誠と言う者だ!

今日子と同じ文芸同好会の・・・」


そう私が自己紹介をすると島田の顔が一瞬、安心したような顔になる。


「おお・・君が誠君か!今日子から話は聞いているよ!」


今日子・・・


私は自分以外の男が今日子を呼び捨てにする事に異常に苛立ちを覚えた。


「君と今日子が付き合ってると言うのは本当なのかい??」


島田はそんな私の言葉に一瞬、考え込んだ・・・


そして、敗者を見る勝者のような眼差しで私を見下ろすように見つめて言った・・


「ああ・・そうだよ!」と


私は島田を睨みつけながら言った・・


「別れてくれよ!」と


「えっ??オタク・・何を言い出すのよ??

オタクには関係ないでしょ!

オイラと今日子がどんな関係になろうと・・・」


そんな口ぶりと私を哀れむような目つき・・・


「別れろって言ってんだよ!」


そう叫びながら・・私は島田の腹に拳をめり込ませていた・・・


「うっ・・・や・・やめろよ!」


島田は顔を引きつらせながらそう叫んだ!


「止めてください!だろ!お前・・大学生にもなって言葉知らないのか??」


そう叫びながらもう一度・・私の拳がなんとも鈍い音を立てながら腹にめり込んだ・・


「や・・やめてください・・お願いします・・」


島田の目から涙がこぼれる・・


そして体は恐怖で震えていた・・・


「何であいつと付き合うことになったんだ!」


私は島田にそう怒鳴りながら言った・・・


お・・俺は何をしてる??何を??


私はそう呟きながら・・地面にうずくまる島田を見つめそう思っていた・・


俺は何でこいつを殴っている???


俺は・・平和主義の人間では無かったのか??


昔から私は争いごとが嫌いであった。


争いや暴力からは何も答えは生まれない。


結局、どんなに論じたり相手を殴っても答えは「YES」か「NO」しかないのだ


まして暴力で相手を服従させる事など無意味である。


私はそんな考えの人間では無かったのか???


私は初めて人を殴った・・・


それも・・何のためらいも無く・・どうしてしまったのだ??私は・・


私は・・そんな人間では無いはずなのに・・・


「今日子は・・・」


そう島田が言いかけて私は・・・


「今日子さんだろ!」と島田の横腹に蹴りをいれていた・・


ウッ・・・一瞬、島田は胃液を口から噴出した・・・


そして・・


「き・・今日子さんはコスプレが趣味なんです!

何度かコミケと言う集まりに僕達と参加しています。

そんな中、僕と今日子さんは仲良くなりました。

でも、告白をして来たのは彼女の方からなんです!

許してください!ごめんなさい!

もう別れますから・・これ以上、殴らないでください!

この事は誰にも言いません!だから・・だから・・」


島田はそう泣きながら何度も・・何度も・・私に頭を下げた・・


そんな島田を見ながら・・・


私は今まで感じた事が無い感覚に包まれた・・・・


優越感・・・そんな感覚に・・


「なら、もう今日子に近寄るんじゃね~ぞ!解ったか!」


私はそう呟くとその場を後にした。


今日子がコスプレ??


過去のどんな記憶を探り寄せてもそんな記憶は私の記憶の中に存在しなかった。


何で??あいつがコスプレなんだ??何で??


未来が・・大きな音を立てながら崩れ始めた・・・


木村と友美が付き合うことをきっかけに・・


それから、数日後、今日子が島田と別れたという噂を聞いた・・


落ち込む今日子に私は笑顔で呟いた・・


「今夜・・飲みにでも行こうよ!皆で・・

落ち込むなよ!お前には俺達が居るじゃないか・・」と


人生は辛すぎて私の手には負えない。


「俺たち!付き合うことになりました!」


マジ~~~~~~~~~~~~イ!!


私が追加のお酒を買って戻ってくると散らばっていた参加者達がキャンプファイヤーの周りに集まっていた。



スゲ~~ジャン!良いな~友美・・美人だもんな!羨ましい・・・


木村と友美の周りにいた皆がそんな言葉を口々に繰りかえる。


「木村!幸せにね!」


最後に今日子が笑顔でそう言った・・・


えっ・・・もう予定ではお開きになっているんじゃ???えっ・・


「よし!追加も来た事だし!飲み直しだ!

坂本!皆に酒を配れよ!乾杯しょうぜ!」


部長の押田が少し興奮気味にそう叫んだ!


私と純子はスーパーの袋から今、買って来たお酒を皆に配り始める。


一瞬、純子と目が合った・・


あいつはなんとも不気味な笑顔を一瞬・・私に向けた・・


お・・お前・・知って居たのか?こうなる事を・・・


後で木村が私に言った・・


「純子がさ~友美に言ったらしんだ!

もしも、木村君がOKしてくれたら今夜、皆にお披露目した方が良いって・・

なんか、照れちゃうよな!こんなの・・」


木村はそうは言うものの実に嬉しそうな笑顔であった。


輪の中心で幸せそうに微笑んでいる2人と対照的に・・


なんとなく、寂しそうな今日子の顔が私を少しだけ落ち込ませた。


そして、宴会は夜中の2時まで続き・・結局、私は今日子に告白する機会を無くしてしまったのだ。


サマーキャンプから帰ってきて何度か私は今日子に告白をする機会を伺っていた。


しかし、その度に純子が現れ邪魔をする。


それは露骨にではなく・・さりげなく・・本当に自然に・・・


まるで私の心を全て見透かしているかのように絶妙なタイミングで・・・


私達が3年になると木村と友美は同棲を始めた。


これは私の記憶に無い出来事であった。


そして私の未来が確実に変わって来てる証でもあったのだ。


そんなある日、私は部活で驚くような噂を耳にした。


「おい!坂本!今日子さ~彼氏が出来たらしいぜ!」


私はその言葉に一瞬・・凍りついた。


「だ・・誰だよ!その相手って???」


そんな私の動揺した顔を楽しむように彼は言った・・


「島田って・・知ってる??」と


し・・島田??島田って・・・島田・・・


「ええええ・・・っ!島田ってあのマン研の島田かよ!」


彼は笑いを堪えるの必死のようであった・・・


「俺・・坂本と今日子が付き合うかと思っていたからさ~」と


島田って・・・何で??島田なんだ・・


島田はマン研の部長であった。


体重が100キロは有りそうな巨漢のデブだ!


何時もアニメキャラの紙袋を持って大学に通って来る。


オタクとかそんな言葉がまだ、無かった時代だが・・


アニメファンはやはり当時から色眼鏡で見られていた・・・


何でだよ・・・何で・・


私はいても立ってもいられず部室を飛び出した。


今の時間は、今日子は国文の授業を受けるのに第二教室に居るはずだ・・・


私は勢い良く教室のドアを開いた・・


一瞬、教室内の全ての人間が私に注目した。


私はそんな事は気にせずに今日子を探し出し近寄って行った・・


「あら、誠!どうしたの汗びっしょりよ!あんた・・この講義取っていたっけ??」


「えぅ・・いいや・・それより、今日子・・1つ確認したい事が・・」


「何よ!他人行儀ね!話しなさいよ・・」


今日子の周りの友人達が気を利かせたのかくもの巣を散らすように消えて行った・・


「お前・・マン研の島田と付き合ってるのか??」


そんな私の言葉に今日子はキョトンとした顔をした。


「あら・・速攻ね!よく知ってるわね!

でも、心配しないで、彼に確認はしてるから・・

木村とあなたと遊ぶ事はOKになってるからね!

私達・・仲間だもんね!」


今日子は嬉しそうにそう言った・・・


付き合ってる???過去にそんな話は無かったぞ!


それに、部活の人間と付き合うのなともかく・・


マン研の人間とお前と何で関係があるんだ??


「そうか・・わかった!」


私は苦笑いをしながら教室を後にする。


校庭に出ると丁度、アニメの紙袋を持った集団を見かけた。


先頭を歩いてる巨漢の男・・


長髪のなんとも不潔そうな男と笑いながら話をしている。


「オイ!島田!ちょつと待てよ!」


私は無意識のうちにそう彼に声をかけていた。


「オタク・・・誰??」


島田はなんとも迷惑そうに私を見つめそう呟いた・・・