「生きる事はくだらない・・」
木村はよく私にそんな言葉を呟いていた。
なんとか言う作家がよく使う言葉らしい。
生きる事はくだらない・・・
そんな言葉を聞く度に私はこいつはきっと幸せな人生を送って来たのだと感じた。
俺は心が病んでいる・・・
私が居た世界のようにまだ、心の病なんて病気がまだ、認知されていない時代・・
でも、私は何時も思っていた。
満たされない心・・・
無気力・・
うつ病・・
そんな言葉を聞く度に・・・・
なんてそんな言葉を発する奴らは幸せな環境に居るのかと・・
そんな無気力になっても生きていける。
仕事をしなくても生きて行ける・・・
それは幸せな事ではないのだろうか???
私の母親が死ぬ時に母親は私の手をしっかり握って言った・・
「働かない事は罪である・・」と
人間は様々な悩みを抱えながら生きてる。
それは病に犯されている人間もそうで無い人間も同じなのだ。
ただ、違うのは自分が弱いか強いかだけのような気がする。
それはあなたが心の病でないからだ!
きっと、病に犯された人間は言うだろう・・・
しかし、それは違う・・
私もきっと、彼らと同じ位の心の重荷を背負って生きて来たのだ。
仕事が辛い・・
人間関係のストレス・・・
自分が生きてる意味・・・
何度も眠れない夜を過ごした事がわからない・・
泣きながら自分に問う・・
俺は何で生きている?と・・
ただ、私が心の病にならなかったのは・・
そんな母親の言葉を何時も心に止めて置いたからかもしれない。
「働かない事は・・罪である」と
正直、今でもその言葉の意味はわからない。
ただ、きっと、そんな私に母は笑いながら言うだろう・・
それだけあんたが恵まれた環境に居るからだと・・
「生きる事はくだらない・・」
なんとも嫌な言葉であった。
私は正直、迷っていた。この世界でも自分が進む道を・・・
現実を受け入れるのか??
それとも夢を追うのか??
そんなある日、学食で食事をしていると私はある女子生徒に声をかけられる・・
「坂本君・・ちょっと時間・・ありますか??」
振り返るとそこには佐々木美香と言う女が神妙な顔をして立ってた。
佐々木美香・・・
私はリセットする前の世界でこの女をよく知っていた。
なぜなら、この女は木村の妻であったからだ。
木村は大学を卒業と同時に今日子と別れた。
それはこの女と出会ったからだ。
美香はマン研の部員であった。
特に美人でもブスでもない・・
特に痩せてもいないし・・デブでも無い・・
普通の女・・
しかし、アニメに対しての思いは熱い・・・
いや・・人並み異常の才能を持っていた。
しかし、絵描きと文字書きは違う。
人を感動させる絵は描けても・・・
人を感動させる言葉を生み出す事が美香は苦手だったのだ。
彼女は大学を卒業して直ぐにデビューした。
そしてデビュー作が大ヒットして一流の漫画家と呼ばれるようになった。
世間では原案と原作を彼女1人でやっていると思われていたが・・
実は原案は木村が書いていた。
それは私だけ知っている秘密であった。
この美香との出会いが私に新たなる苦しみをもたらそうとはその時の私には想像も出来なかった。
人生は辛すぎて私の手には負えない。