木村と純子は結局、2次審査を通過する事は出来なかった。
しかし、木村にとって一次審査を通過したという事は大いなる自信に繋がったようであった。
そして・・破れた私には大きな劣等感だけが残った。
次の年、私は「扉」に小説を応募する事をしなかった。
「来年、自分の全てをかけた小説を応募するから・・」
そう仲間には言ったが本当は怖かったのだ・・・
また、敗北と言う物を味わうかもしれないと言う事が怖かった・・・
今日子とは何の進展もなく普通の付き合いであった。
時期を待つ。
そんな言葉が今日子に想いを告白すると言う行為に歯止めをかけていた。
私達は4年生になっていた。
昨年の「扉」では木村も純子も結局は一次審査を通過する事は出来なかった。
私はなんとなく、落ち込む木村を見ながらホッとした。
「お前・・どうするの??」
4年になるとそんな会話が仲間同士の間で頻繁に繰り返されるようになる。
お前・・どうするの??
就職するの??それとも・・夢を追うの??
毎晩のように居酒屋でそんな論議か繰り返される・・・
「お・・俺は!夢を追うぜ!絶対に・・」
仲間内で一番に宣言したのは木村であった。
3年の終わりに驚いた事に木村と友美は同棲を始めた。
それは私にとって考えても居ない事態であった。
数回、私は彼らの新居に招待をされた。
エプロン姿で私の為に料理を作ってる友美を見て私はなぜが苛立ちを覚えた。
きっと、新婚当時を少しだけ思い出したのかもしれいない・・
男とはなんとも身勝手な生き物である。
「友美がさ~夢、捨てないで!って言うんだよ!」
飲み会の帰りに木村が私にそう呟いた・・・
「夢を捨てないで・・そうあいつが言ったのか??」
私は驚いたように木村に聞き返した・・
「ああ・・私が働くからあなたは夢を捨てないでって・・」
そんな事を・・あいつが・・・
「何を夢見たいな事を言っているの??
小説家になんかなれる訳がないでいしょ!
もっと・・現実をみなさいよ!子供なんだから・・」
私は当時、友美にそう言われた・・・
就職するか夢を追うか迷っていた時期の事である。
友美は確かに私に言ったのだ・・
「就職しろ!」と
木村には夢を追えと・・・
そして私には夢を諦めろと・・
俺には木村のような才能が無いとお前は言いたかったのか??
えっ!お前は俺の何を知って居たんだ!俺の・・何を・・・
「そうか・・友美がね~
お前ら・・将来どうするの???」
「ああ・・当面は扉で優秀賞を取る事が目標だ!
もしも、取れたら結婚をしょうと思っているんだ!
その時は、お前も式に来てくれよな!
友人代表としてさ!」
そう照れて苦笑いをしている木村に少しだけイラツク・・・
こんなヤツに俺は負けたくない・・
絶対に・・絶対に俺は・・この男に負けたくない・・
木村が将来、小説家として成功する事を知っているだけに・・
私の中に表現しきれない程の憎悪が生まれた。
「それで、誠はどうするんだ??
なんか、内定の話・・有るんだろ??
山田貿易だってな!一流じゃないか!
何も自ら進んで苦しみを選ぶ事は無いんじゃないのか??」
それはきっと木村の優しさの言葉であったと思う。
私が苦労しないように心配をしてくれて彼はそう言ったに違いない・・
しかし、その時の私には木村のそんな優しさを感じてあげる余裕が無かった・・
「何だ!お前!俺に才能が無いって言いたいのか!」
私はそう怒鳴っていた・・
もの凄い、憎しみに満ちた目つきで木村を睨みつけながら・・・
「えっ・・い・・いや・・違うよ!勘違いするな!」
少しだけ木村は動揺した。
なんともバツが悪そうに頭を下げる・・
「すまない・・お前のプライドを傷つけてしまったようで・・」と
私は何も言わずに歩き出した・・・
お前になんか負けない!絶対に・・絶対に負けない・・
そう何度も、何度も・・呟きながら・・
そんな私を見つめながら木村が一言・・呟いた。
「お前・・変わったな!」と・・
そして・・
「でも、俺たち、一生・・親友だからな!」と・・
私は・・無意識に泣いていた・・
そんな木村の声が聞こえない振りをしながら・・
俺・・変わったのかな??
なら・・本当の昔の俺は・・どんなヤツだったんだよ!
そんな言葉を呟きながら・・
人生は辛すぎて私の手には負えない。