「オタク・・誰よ??」
島田はそう呟くと私を睨み付けた。
「少し、話があるんだけど・・時間、あるか??」
私のそんな言葉に・・・
「別にかまわないけど・・
でも、そんなに長くは無理だぜ!
これから、池袋のアニメショップに皆で行くから・・
今日は声優のみぃ~なちゃんのサイン会がるんだ!
早く行かないとミニコンサートで前列を逃してしまうからな!」
はっ??
私は一瞬、呆れた顔をした・・
こんな男が今日子の彼氏なのか??こんな・・
「ああ・・時間は取らせないよ!」
島田は無言で仲間達に目配せをした。
それを合図に数人の仲間はまた、バカ話をしながら歩き出す。
私と島田は後校舎の裏側に移動をした。
「それでオイラに用事って何よ??
それにオタク・・誰??」
「ああ・・坂本誠と言う者だ!
今日子と同じ文芸同好会の・・・」
そう私が自己紹介をすると島田の顔が一瞬、安心したような顔になる。
「おお・・君が誠君か!今日子から話は聞いているよ!」
今日子・・・
私は自分以外の男が今日子を呼び捨てにする事に異常に苛立ちを覚えた。
「君と今日子が付き合ってると言うのは本当なのかい??」
島田はそんな私の言葉に一瞬、考え込んだ・・・
そして、敗者を見る勝者のような眼差しで私を見下ろすように見つめて言った・・
「ああ・・そうだよ!」と
私は島田を睨みつけながら言った・・
「別れてくれよ!」と
「えっ??オタク・・何を言い出すのよ??
オタクには関係ないでしょ!
オイラと今日子がどんな関係になろうと・・・」
そんな口ぶりと私を哀れむような目つき・・・
「別れろって言ってんだよ!」
そう叫びながら・・私は島田の腹に拳をめり込ませていた・・・
「うっ・・・や・・やめろよ!」
島田は顔を引きつらせながらそう叫んだ!
「止めてください!だろ!お前・・大学生にもなって言葉知らないのか??」
そう叫びながらもう一度・・私の拳がなんとも鈍い音を立てながら腹にめり込んだ・・
「や・・やめてください・・お願いします・・」
島田の目から涙がこぼれる・・
そして体は恐怖で震えていた・・・
「何であいつと付き合うことになったんだ!」
私は島田にそう怒鳴りながら言った・・・
お・・俺は何をしてる??何を??
私はそう呟きながら・・地面にうずくまる島田を見つめそう思っていた・・
俺は何でこいつを殴っている???
俺は・・平和主義の人間では無かったのか??
昔から私は争いごとが嫌いであった。
争いや暴力からは何も答えは生まれない。
結局、どんなに論じたり相手を殴っても答えは「YES」か「NO」しかないのだ
まして暴力で相手を服従させる事など無意味である。
私はそんな考えの人間では無かったのか???
私は初めて人を殴った・・・
それも・・何のためらいも無く・・どうしてしまったのだ??私は・・
私は・・そんな人間では無いはずなのに・・・
「今日子は・・・」
そう島田が言いかけて私は・・・
「今日子さんだろ!」と島田の横腹に蹴りをいれていた・・
ウッ・・・一瞬、島田は胃液を口から噴出した・・・
そして・・
「き・・今日子さんはコスプレが趣味なんです!
何度かコミケと言う集まりに僕達と参加しています。
そんな中、僕と今日子さんは仲良くなりました。
でも、告白をして来たのは彼女の方からなんです!
許してください!ごめんなさい!
もう別れますから・・これ以上、殴らないでください!
この事は誰にも言いません!だから・・だから・・」
島田はそう泣きながら何度も・・何度も・・私に頭を下げた・・
そんな島田を見ながら・・・
私は今まで感じた事が無い感覚に包まれた・・・・
優越感・・・そんな感覚に・・
「なら、もう今日子に近寄るんじゃね~ぞ!解ったか!」
私はそう呟くとその場を後にした。
今日子がコスプレ??
過去のどんな記憶を探り寄せてもそんな記憶は私の記憶の中に存在しなかった。
何で??あいつがコスプレなんだ??何で??
未来が・・大きな音を立てながら崩れ始めた・・・
木村と友美が付き合うことをきっかけに・・
それから、数日後、今日子が島田と別れたという噂を聞いた・・
落ち込む今日子に私は笑顔で呟いた・・
「今夜・・飲みにでも行こうよ!皆で・・
落ち込むなよ!お前には俺達が居るじゃないか・・」と
人生は辛すぎて私の手には負えない。