僕が死ぬ日・・生まれる日 -45ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「あら・・こちらのお客様!随分とお金持ちのようで・・」

栞が嫌みったらしくそう呟く。

美香は栞を睨みながら何も言わない。

重い空気だけが流れた。

しばらくするとボーイが高そうなブランディーを持って現れる。

すると美香は言った。

「それと同じものを彼の名前で入れて!」と

「えっ!お・・おい美香!良いよ!そんなの!50万だぞ!」

「なによ・・そんなはした金・・」

美香はさらりと余裕の表情でそう呟く。

50万・・

そんな酒は要らないから現金で俺にくれ!

思わず私はそう言いそうになってしまった。

栞がグラスに氷を入れよとする。

それを遮るように美香が怒鳴る。

「あんた!ブランディーに氷を入れるつもりなの?

勘弁してよ!」と

一瞬、栞の手が止まり顔が引きつる・・

美香は栞からグラスを奪い取るとブランディーを並々グラスに注いだ。

そして一気にそれを飲み干した。

一瞬、店内から歓声があがる。

「すげ~な!あの女・・」と

「帰るわよ!誠!お勘定を・・」

ブランディーを飲み干すとしらっとした顔で美香が私にそう言った。

少しも酔っている様子も無くしっかりした足取りで美香はレジに向かう

「100万と2千円になります」

そう会計係の男が言うと美香は自分のバックから帯の付いたピン札の束を取り出した。

現金かよ!

思わずそう言いたくなるのを必死に堪える。

店の玄関まで栞を見送りに来る。

「本日はありがとうございました。」

深々と頭を下げる栞に美香は言った。

「使いふるしのオッサンだけどよろしくね!」と

そんな嫌味たっぷりの言葉に栞は少しだけ唇を噛み締めた。

ドアが閉まりエレベーターに乗り外に出た瞬間に美香の顔が真っ青に変わる。

そして美香はその場にうずくまってしまった。

「飲めないくせに!無理しゃがって!」

そんな私の言葉に美香は苦しそうに・・

「ご・・ごめん・・吐きそう・・」と

「お・・おい待て!もう少し!待て!」

私は焦りながら美香を近くのパチンコ屋のトイレに連れて行った。

ふらふらに成りながら美香が現れる。

「歩けるのか?」

そんな私の問いに・・

「なんとか・・」と答える

しかしその足は完全に大地を踏みしめていない。

「ほら!乗れ!」

そう言いながら私は美香に自分の背中を向けた。

「えっ!やだよ!オンブなんて!恥ずかしい・・」

「あのな!お前・・自分の状態を解ってるの?

っつたく!飲めもしないくせに!無理しやがって!」

そう私が諭すように言うと美香は渋々、私の背中に・・

そして私の耳元で呟いた。

「かっこ悪いね・・私・・」と

美香は一滴の酒も飲めない。

そんなこいつがあの行動とは・・

女の意地なのか?

「そんな事は無いよ!かっこ良かった・・見直した・・」

そう私が呟くと私にしがみ付く美香の腕に力が入る。

「優しい言葉を言わないで・・今・・私に・・」

弱々しく美香がそう呟く・・

「泣いて良いんだぞ!今夜は特別だ!

こんな冴えない男の背中で良ければ・・」

そう私が言い終わると同時に私の首筋に数滴のしずくが落ちるのを感じた。

そして唇を必死に食いしばり声を出さないように泣いてる女の気配を・・

私は美香を背負いロータリーのタクシー乗り場に向かい歩き出す。

しばらくするとポツリと美香が呟く・・

「誠・・私ね!言われちゃった・・」

「何て?」

「うん・・あいつに・・枯れた女は抱けないって・・私・・枯れちゃったみたい」

私はそんな美香に一言呟いた。

「そんな事はないよ!お前は今でも綺麗だ・・」と

「それで?どんな女?あいつの女は??」

なんて木村の妻に言われてはいそうですか!と口を割るほど私は馬鹿ではない

正直、適当な事を言ってごまかそうと思っていた。

しかし・・・

「あんた!もしもあいつをかばったら、あんたの奥さんに大げさに言うからね!」と

美香に言われ私は重い口を開く。

友情より家庭・・

その時、私なりに家庭を守りたいと思っていた事を知った・・

いや・・家庭より自分だったのかもしれない。

「蒲田の西口に「シンフォニー」と言う飲み屋がある。

そこで働く女にどうやら入れあげているようだ!」

「それでその女の名前は!」

美香が強い口調で私に問いただす。

まるで警察に捕まって取調べでも受けているようだ。

「えっと~~」

正気、今日子の名前を出すか栞の名前を出すか迷っていた。

「栞と言う女だ!」

私は結果的に今日子を守った。

「シンフォニー・・なんか聞いた事がある名前ね!

明日、そこに連れて行ってよ!」

「えっ??マジかよ!嫌だよ!そんな修羅場・・」

「あんた・・・口答えする気なの?

あなたにそんな権利はないのよ!」

そう美香に強く言われ私は妻に木村と会う事を何気に妻に連絡をしてもらう事で渋々承諾をした。

次の日、私は蒲田の改札の前に立っていた。今まで殆ど蒲田なんか来なかったのに・・

最近は定期を購入した方が安いぐらいに通っている。

そう・・妻の浮気が発覚してから・・

しばらくすると東口の方から一人の女が歩いてくる。

すれ違う男たちが一瞬、振り返る。

そんな美人の女・・・

清楚と言うべきか?いや・・セレブと言うのか?

気品に溢れたその容姿は周りに男達を魅了していた。

その女が美香である事に気が付いたの声をかけられてからであった。

「お待たせ!」

そう言われ驚いた表情で美香を見つめると彼女は笑いなら言った。

「惚れないでよ!これでも旦那持ちだから・・」と

二人で西口に向かう。

時計を見ると7時を少しだけ過ぎた頃であった。

シンフォニーに着き重い防音扉を開くとボーイが笑顔で言った。

「いらっしゃいませ!」と

そして私と美香を見て一瞬、不思議そうな顔をする。

そして私に近づき耳打ちをする。

「坂本さんの奥さんですか?」と

私は苦笑いをして呟く・・

「いや・木村の奥さんだ!」と

彼はより顔をしかめ・・

「面倒は御免ですよ!勘弁してくださいよ!」と呟く。

そう言われてもどうしょうも無い。

現に美香は着てしまっているのだから・・

「栞さんをお願いします。」

私は申し訳なさそうにボーイにそう言った。

目ざとく私を見つけた今日子が栞を指名した事をしり怒り気味で私に近寄る。

しかし、私の隣に鬼のような形相で座っている女を見つけると何も言わずに去って行った。

しばらくすると栞が私達のテーブルに現れる。

「あら、坂本さん!良いの私なんか指名して?

今日子さんに怒られてしまうわ!後で・・」

きっと、もう隣の女が木村の妻である事を知ってる栞は白々しくそう呟く。

「えっ・・まぁ~」

私は弱々しくそう呟く。

「初めまして!栞と申します!」

そう言いながら栞が名刺を美香に差し出す。

「もしかして!坂本さんの奥さん??

駄目よ!こんな所に奥さんを連れて来ては!」

栞の先制パンチなのか?

「この店で一番高いお酒を持って来て!」

栞を睨みながら美香が言う。

応戦なのか??

「い・・一番、高いお酒は50万ほど致しますが?

よろしいのですか?」

ボーイが少し動揺しながら言う。

「随分と安い酒しか置いてないのね!」美香はそう静かに呟いた。

職場に着き自分のデスクに座るといきなり携帯がなった。

表示に「友美」の文字

私はドキドキしながら電話に出る。

「あなた!今、何処に居るの?」

不機嫌そうな妻の声にドキドキは最高潮に変わる。

「えっ!店の居るよ!」

どうする?こいつはどんなつもりで連絡をして来てる。

何も言うな!自分からしゃべるな!相手の出方を見ろ!

「もぉ~あんまり木村さんのお宅に迷惑をかけないでくださいね!

酔いつぶれて寝てしまうなんて!見っとも無い!

木村さんの奥さんから電話をもらって恥ずかしくて何も言えなかったわよ!」

美香・・・美香が友美に電話をしたと言うのか?

なぜに?なぜに美香が知っている?木村にしか連絡をしていないのに・・

いつの間にか私を襲っていたドキドキ感は消えていた。

相手の状態がわかればそれに合わせて話せば良いだけだ。

「ああ・・悪かった!少し飲み過ぎたようで・・俺も年かな?」

そう笑いながら言うと妻は少し怒ったような口調で・・

「控えてくださいよ!友達との付き合いも大事だと思うけど!

体が心配だから・・」

この女は本当に私を裏切っているの居るのだろうか?

ふとそんな疑問が浮かぶ。

本当に・・浮気をしてるのか?と

「ああ・・解ったよ!今夜は早く帰るから・・」

そう言って私は電話切った。

解らなくなっていた。本当に・・

しかし、妻が浮気をしてる事実と相手の男への怒りは今でも存在してる。

嘘かも?そうかも・・違うのか?いや・・嘘かも・・

そんな言葉が何度も私の脳裏を駆け巡っていた。

「店長!今度、その店、連れて行ってくださいよ!」

急にそう部下の一人に言われて現実に戻る。

「その店?何処だよ!その店って・・」

「えっ?店長が最近、はまってる店ですよ!

クラブですか?それともキャバクラ??」

「何でそんな風に思うんだ?」

「えっ・・だってその甘い匂い・・女の香水でしょ?」

最近、よく匂いますよ!その香り・・」

私は少しだけバツが悪そうに部下を見つめる。

「ばれた?悪友がさ!キャバクラにはまっていてさ!

最近、よく付き合わされるんだ!今度、一緒に行こう!

結構、可愛い子がいるんだ!」

そんな私の言葉に彼は疑わしそうに私を見つめる。

基本的に私はそんな飲み屋に行く人間では無い事を彼は知っているのだ。

「本当ですか!お願いします!」

しかし、そこは大人・・彼はそう無難な言葉を残し去って行った。

美香が何で・・

彼が去ると急にそんな疑問が私の脳裏に浮かぶ。

するとまた、携帯が鳴る。

見慣れない番号?誰だ・・

「はい!坂本です!」

そう慎重に出ると・・

「あら・・どうも!お助け美香ちゃんです!」

そう私を馬鹿にするように相手が答えた。

美香・・

「お前!何で俺の番号を知ってるんだ?」

「えっ・・だって毎晩、私、旦那の携帯をチェックしてるから!

それに誠の番号って昔と変わって無いし・・」

携帯をチェック・・だから・・知っていたのか?

いや・・そんな訳は無い!だってあれは秘密の暗号なのだから・・

何で知ってる?俺が家に帰らなかった事を・・何で?

「で?俺に何の用だ?」

「あら。お言葉ね!助けてあげたのに・・」

「お・・お前!何で知ってるんだ?」

「えっ・・何年、旦那の携帯を盗み見てると思ってるのよ!

あんな暗号・・」

ばれている・・秘密の暗号が・・

「それで!報告!よろしく!」

「えっ?報告って何だよ!」

「何だよじゃないわよ!探りに行ってくれたんでしょ!旦那の事・・

あのね~あんた、探偵なんだからね!もっとしっかりしてよね!」

私はいつの間にか探偵にされていた。この美香と言う女の中で・・

「それで?どんな女?あいつの女は??」

世界で一番の名探偵は・・きっと自分の妻に違いない!私はそう思う。