責任とってもらいたい絵本「ろくべえまってろよ」 | 絵本読み聞かせ講師・上甲知子「絵本で子育て講座」出前します【小田原 湘南 横浜 静岡】

絵本読み聞かせ講師・上甲知子「絵本で子育て講座」出前します【小田原 湘南 横浜 静岡】

絵本の読み聞かせを味方につけると子育てはもっと楽しくなります
「読み聞かせなんてめんどくさい」という方も、簡単に楽しくできるときだけ続けられる「絵本で子育て」をお伝えします

 

 

 

 

 

2023年初の

オンライン絵本朝活で

許諾をいただき

読んだのは

こちらの絵本です。

 

 

ろくべえまってろよ 
ぽっぽライブラリ 
みるみる絵本
1975/
灰谷 健次郎 作
長 新太 絵
文研出版

 

 

 

 

この絵本は

わたしにとって「特別な絵本」です。

 

 

わたしを

 

「人前で絵本を読むことの虜にさせた絵本」

 

なのです。

 

 

 

 

我が子に絵本を読み始めて20年

我が子以外の子どもたちに絵本を読み始めて17年になります。

 

 

 

 

読み聞かせボランティアを始めて

ほんの初期の頃

小学1年生のクラスに

この「ろくべえまってろよ」を読んだのです。

 

 

 

そうしたら、

クラス全員が

ぐぐぐぐぐううううううううううううっと

この絵本の世界に入り込んできたのが

わかったのです。

 

一人残らず。

 

そうわたしは感じたんです。

 

鳥肌が立ちました。

 

 

 

読み終わっても

しばらく

こっちに帰って来られなくて

 

 

 

 

誰かが

 

「はああああ〜〜〜」

 

って

ため息をついて

 

それでみんな

我に返る

 

っていう。

 

 

 

 

 

我が子に読むのとは

まったく違う

絵本読みの体験がここにある

体で感じた時間でした。

 

 

 

 

 

 

調子に乗ったわたしは

次の読み聞かせのとき、

隣のクラスで

同じように

「ろくべえまってろよ」を読みました。

 

 

 

 

でも、

もう

同じことは起きなかった。

 

 

 

あのとき

1回きりです。

 

 

 

 

でも、


あのたった1回の体験が

わたしを

やめられなくした

絵本読みの虜にした、

責任をとってもらいましょう


ってな感じの絵本なんです(笑)

 

 

 

 





 

で。

 

 

 

どうしてあのようなことが起きたのかなあと

考え続けているのですが

 

 

やはり

一つに

 

灰谷イズム

 

ともいうべき

何か。

 

 

 

人の

大人の

弱いところも

情けないところも

みっともないところも

ずるいところも

カッコつけずに見せてくるところ

 

 

そして

子どもは

本来

良い方へ

良い方へ

良い方へ

向かおうとしているだ

という全肯定のあたたかさ

 

 

それが

言葉の選び方一つ一つに

にじみ出ているところ。

 

 

 

 

わたしの予想では

ろくべえは

野良犬というか

地域犬ともいうべき、

飼い犬ではなくて

その地域に住み着いて

子どもたちと遊んだり

かまわれたりしている

仲間なんだろう、と。

 

 

 

深い穴に落ちて

姿は見えないのに

「きょゆーん わんわん」

という鳴き声だけで

「ろくべえ」だとわかってもらえるくらいの

関係性が近所の子どもたちと築かれている存在で。

 

 

 

穴に落ちているろくべえを

声かけたり

シャボン玉ふいたり

歌ったりして

元気づけて。

 

 

そして

自分たちでできないことは

ちゃんと大人を頼ることができて。

 

 

 

でも。

 

大人は忙しくて

自分勝手で

適度にテキトーで

子どもの頼みに親身にならず。

 

 

 

もうちょっと

頼りになる大人が登場しても良い気もするけど

 

そして

きっと今だったら

もっと手を出し口を出す大人がいるかもしれないけど

 

 

この絵本に登場する大人は

まったく頼りにならなくて。

 

 

 

 

大人はあてにできない、と見切りをつけて

自分たちでなんとかしなくちゃいけないと

1年生なりに考えて。

 

 

 

 

その方法は、本当に未熟で

危うくて

一歩間違えば

もっと事態は悪化する可能性もありそうで

 

 

こちらは

ドキドキハラハラさせられて。

 

 

 

カゴにロープを1箇所結び!

 

せめて2箇所結ばないと!

 

傾いたらどうするの?

 

いや、何か食べ物を入れておろす、とかさ!

 

 

 

 

心の中でツッコミを入れつつ。

 

 

 

 

でも、大人が頼りにならないからこそ

自分たちで考えて

自分たちで行動して

自分たちで成功した。

 

 

 

 

その満足げな顔。

 

 

 

これな〜。

 

 

これを読んでもらうと一緒に体験できるのかも。

 

 

 

 

そして

長新太さんの絵がまた良いのですよ。

 

 

 

ほら、文を書いたのは

灰谷さんだから

長さんもそんなに

ショッピングピンクの穴に

ショッピングピンクの犬

とか描かないの。

ちゃんとしてるの(笑)

いい色なの。

 

 

 

 

そして

子どもたちの表情とか

仕草とか

大人たちの表情も

人間味があるの。

リアルなの。

 

 

 

そして

絵の向きが

縦になったり

横になったりして

 

 

「穴、意外に深いね!」って

さらにドキドキさせられて。

 

 

 

 

 

今、改めて読んでみると

 

「おとこでなくちゃ」

 

とか

 

「おとこらしく」

 

とか

ちょっと引っかかる表現がある。

 

 

 

子どもたちはどうだろう。

 

引っかかるんじゃないかな。

 

 

 

でも

 

「絵本は時代のドキュメント」

 

って考えると

昭和のこの時代は、

「男らしく」「女らしく」みたいなことを

当たり前に使っていた時代。

 

 

 

引っかかるくらいで

いいんだろうと

わたしは思います。

 

 

 

これから出版する絵本だったら

そういう表現は

もっと気をつかうと思うけど。

 

 

 

 

関西弁の絵本なので

関西の人の前で読むのは

ちょっとだけ

緊張するけれど

でもまあ

読んじゃいます。

 

 

 

朝活に参加してくれた

朱美ちゃんから

カバーの言葉を教えてもらいました。

 

わたしは絵本を買うとカバーを外してしまうので

この言葉を知りませんでした。

 

 

 

ご紹介させてください。 

 

 

 

 

作者のことば

 

 ぼくはむかし、こじきのオッサンに、たすけてもらったことがあります。


15さいのとき、なんきんまめやを おいだされ、ねるところも、たべるものもなくて ないていました。


こじきのオッサンは、ぼくに ムシロをかしてくれました。


あたたかいさとうゆを、つくってくれました。


うちにかえるでんしゃちんまでくれました。


そんなことがあるので、ぼくには ろくべえのうれしいきもちが よくわかります。


ろくべえ よかったなぁ。

 

 

 

 

画家のことば

 

 ろくべえのおちたあなのなかは、くらくてよるのようです。


いちばんおわりの、みんなにたすけだされるところは、きゅうに、あさになったようなきがします。


あさひが、みんなにあたっているようです。


ろくべえは、まぶしかったでしょう。


 「よるから、あさへ」わたしは、えをかいていて、そんなかんじがしました。

 

 

 

 

 

すいせんのことば

今江祥智 童話作家

 

優しさの絵本

 教師と子どもを、人間同志のふれあいのなかで、まことに生き生きと描いた長編処女作『兎の眼』で、一躍注目された灰谷さんが初めて絵本と取り組んだ。


 穴に落ちたろくべえに、待ってろよと呼びかける子どもたちの優しさは、そのまま『兎の眼』にあふれていた優しさだし、作者自身の人間をみる目の優しさだ。

 長さんの絵かまたすこぶるみごとに作者の意図した世界を捉えていて、暗い冷たい穴ばかり描きながら、読み手の心をほかほかさせてくれる。


 初めての絵本でこんな一冊をつくれた灰谷さんに嫉妬し、長さんに敬礼し、子どもたちのために、拍手したい。

 

 

 

 

 

は〜〜〜。

 

良い。

 

やっぱり

あたたかい。

 

 

 

 

ろくべえのうれしい気持ちがわかるという灰谷さん。

 

 

穴から出てきた

ろくべえが

まぶしかったでしょうという長さんの

なんと優しいことよ。

 

 

 

「兎の目」(理論社)

 

 

とか

「太陽の子」(理論社)

 

 

とか。

 

 

 






 

灰谷さんの作品は、

身を削るように

血だらけになりながら

表現されているように感じて

読むとしんどいけど

大袈裟な言い方を許されるのなら

全人類が出会うべき作品

と思っています。

(とか言いつつ、わたしもまだ読んでない灰谷作品あるのだけど)

 

 

 

1等の宝くじに当たったくらい幸運だと思う

 

 

 

 

 

読むのは、正直、ちょっとしんどい。

 

内容的にも

分量的にも。

 

 

だからまず、灰谷イズムに出会うなら

絵本「ろくべえまってろよ」かなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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