どうも、はちごろうです。

 

 

もう今年も20日程度となりまして。

とはいえ、もう気ぜわしさを感じる年でもなく、

元々曜日ごとにやることが決まっている生活なので

あんまり焦りがない。年々焦りが減ってる感じですね。

それに今年はこんなご時世なので慢性的に暇で、

それがさらに気ぜわしさが盛り上がらない原因かも。

では、映画の話。

 

 

 

「ウルフウォーカー」
 

 

 

 

 


アイルランドのアニメスタジオ「カートゥーン・サルーン」の新作。
中世アイルランドの小さな村を舞台に、
森の中で狼を束ね、夜になると狼に変身する少女と、
狼狩りの父親に憧れるイギリス人少女との友情を描く。

あらすじ

1650年。アイルランドの小さな県キルケニー。
県の外れには狼の群が棲む森があり、
農地開拓を目指すイングランドの護国卿が陣頭指揮を執り、
狼たちの駆除のため、イギリスから多くの兵がやってきていた。
そんな兵士の一人、ビル・グッドフェローの娘ロビンは、
父親のように狼の討伐を願い、ボーガンの稽古に余念がなかったが、
早くに妻を亡くしたビルは娘を失う恐怖からそれを許さず、
護国卿の住む城でメイドとして働くことを望んでいた。
ある日、狼狩りに向かう父を追って門を突破し、
森の中に入っていったロビンは狼の群に遭遇。
パニックになった彼女は誤って相棒の鳥マービンを誤射してしまう。
その直後、森の中から少女が現れ矢の刺さったマービンを連れて行ってしまう。
後を追ったロビンは、森の中で狼の群が棲む洞穴の中で
先ほどの少女と、その母親とおぼしき眠る女性を見つけるのだった。



怒りを語り継ぐ、ということ



アイルランドの人気アニメ会社カートゥーン・サルーンの長編3作目。
本作は過去2作、「ブレンダンとケルズの秘密」
「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」とともに
「北欧3部作」と銘打たれているんだとか。
で、欧米の作品としては珍しく、日本と同じリミテッド・スタイルのアニメが特徴。
いわゆる手描きの線画で人や物の動きを描くやつですね。
ちなみにアメリカのアニメだとピクサーに代表される3DCGが多くて、
ヨーロッパのアニメは意外と有機物をそのまま動かす作品が多いですね。
いわゆる「ウォレスとグルミット」シリーズのアードマン・スタジオや
先日取り上げた「ミッシング・リンク」のライカ・アニメーションみたいな、
粘土アニメなんかが多かったりしますけど。
そんなヨーロッパのアニメの中でも日本と同じスタイルで、
しかもファンタジー要素の強いオリジナル作品を手がけているので
どうしてもスタジオジブリと比較されてしまう傾向が強いように感じます。
そんなカートゥーン・サルーンの最新作は
まさに自分たちの地元キルケニーを舞台にした物語で。


さて、実は私、洋邦問わず歴史の知識が全然なくて。
だからこれ、観終わってからちょっと調べてみたんですが、
本作の舞台となる1650年のアイルランドは、
いわゆる「清教徒革命」でイングランド議会軍に再占領された時期。
イングランドの英国国教会による地元カトリック教徒への迫害も強かったとか。
現在でも続くIRAのテロ活動ってのも、
元はといえばこの出来事の遺恨が原因のようで。
まさに作中に出てくる護国卿が、神の名の下に法と秩序を振りかざし、
地元の人々や土地の自然を厳しく管理していった様子と重なるわけです。
だから主人公ロビンの父親のような、
アイルランドに狼退治にやって来たイギリス兵に対し、
地元キルケニーの人々は内心快く思ってないんですね。
狼が畑の作物を荒らし、人々に危害を加える存在にもかかわらず、です。

この作中に登場する「英国的なもの=悪」と「アイルランド的なもの=善」、
この対比がかなりわかりやすいので、
アイルランドの歴史とか知らなくても観てて理解しやすいんですね。
キリスト教的な価値観で法と秩序、そして家父長制を掲げるイギリス側と、
自然を畏怖しながら愛し、共存共栄する地元アイルランドの民、
そしてその間で悩む主人公というね。
しかも日本人の場合は、この物語からは「もののけ姫」を連想しやすい。
森の木を切り、タタラ場を大きくして国造りを望むエボシ御前や、
彼女を焚きつけてもののけ退治を目論む幕府とその代理人のジコ坊と、
方や山犬モロと彼女に育てられた少女サンを中心としたもののけ達、
そしてその間で共存の道を模索するアシタカ、という構図でね。
ただ、確かにアニメ作品なのでジブリっぽく感じるのもわかるけど、

 「未開の地だと思っていた種族達の高度な文明に触れ、
  その地を開拓から守るために寝返る開拓者側の主人公」

という設定はそれこそジェームズ・キャメロンの「アバター」もそうだし、
個人的にはケビン・コスナー監督・主演のオスカー受賞作
「ダンス・ウィズ・ウルヴス」を思い出しました。


この秋はやたらアニメ映画が元気で。
特に最近は海外のアニメの秀作が立て続けに公開されてるんだけど、
前にも書いたと思うんですが、これだけ国内でアニメが飽和状態の中、
敢えて海外のアニメを観るのってやっぱりそこに日本のアニメにない、
その国独自のものが観たいからなんですよ。私の場合は。
だから「羅小黒戦記」みたいに、良く出来てはいるけれど、
どこまでも日本のアニメっぽい作品ってちょっとガッカリしちゃうんですね。
演出方法やテーマが似通うことは仕方がないとしても、
影響を受けたことをどれだけ隠すかにオリジナリティって生まれるもんだから。
そういった点から考えると、本作は明らかにジブリの影響を受けてるけど、
きちんと自分たちのルーツに根付いた題材を用いて、
自分たちの表現に昇華してるところが素晴らしいなと感じました。

ただ、昇華した上で表現してるのがまさかのイギリスdisというね。
400年も前からの怒りを未だに忘れず、
しかも娯楽作品として描いてるのがすごい。
アイルランド、恐ろしい子!って感じでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2020年12月6日 YEBISU GARDEN CINEMA 1番スクリーン]

 

 

 

 

 

※とりあえずカートゥーン・サルーンの過去作を

 

 

 

それと文中で引用した作品も