どうも、はちごろうです。

 

 

 

いやー、今日は本気で寒かったですね。

実は昨日散髪してきたんですけど、後頭部が寒くて寒くて。

まさか仕事場でニット帽をかぶるわけにも行かず、

何かいいものがないか急遽検索しております。

どちら様も、こんなご時世ということもありますが、

くれぐれもお身体ご自愛下さい。

では、映画の話。

 

 

 

「ホモ・サピエンスの涙」

 

 

 



昨年のベネチア国際映画祭で監督賞を受賞。
スウェーデンの奇才ロイ・アンダーソン監督の新作。
神を信じられなくなって酒浸りになる牧師、
偶然であった知人に無視された男など、
時代や年齢、性別も異なる人々の姿を独特の映像美で描く。

あらすじ

町の坂道をキリストのように十字架を背負い、
人々から罵倒され、暴力を振るわれながら歩く悪夢を見るようになった牧師。
彼はカウンセラーに「神を信じられなくなった」と告白する。
それ以来、牧師は酒浸りになりながら勤めをするようになる。
一方、レストランでは客のグラスのワインを注いでいたウェイターが、
考え事をしていたために注ぎすぎて大量にワインをこぼしていた。
また、ある男は街中で学生時代のクラスメート、スヴァルケルと出くわすも、
何度も無視されたことで初めて過去に遺恨があったことに気付き、
ある青年は本屋の店先で、隣の美容室の女店員が
枯れかけた植木に霧を吹きかけるのを目撃していた。

 

 

 

アンダーソン作品展「日常の変化、その先」



スウェーデンの奇才、ロイ・アンダーソン監督の新作なんですが、
監督デビューは70年代なんですが、実はかなりの寡作で。

というか、監督2作目が大コケしたことをきっかけに

四半世紀ほど映画を撮ってなかったようなんですね。

CMディレクターに転身して、結局それでも賞を何本も獲ってるんですが。
だから私も前作「さよなら、人類」で初めて出会ったクチで。
で、この監督、非常に独特な作風の人なんですよ。
基本的にワンシーンワンカット、しかもカメラは固定され、
移動撮影どころかクローズアップすら行われない。
同じ画角で同じ場面が延々と映されてる。
オールスタジオ撮影で、全てが完全に作り込まれた世界。
簡単に言うと「動く絵画」みたいな作品なんですよ。
しかも内容自体も、話があるようでないような、
繋がっているようで繋がっていないような場面の羅列でね。


で、本作もやっぱり物語らしい物語はないんですよ。
一応メインというか、話らしい話は信仰を失った牧師の話があって。
でもそれ以外はあまり関連性がないカットが続くだけというね。
ただ、一応の共通点というか、作中に登場するシーンの大半が

 「日常の変化、その先」

を描いているのかな?と。
まず本作では戦争をテーマにしたシーンが複数出てくるんですね。
例えば冒頭で宙に浮いている抱き合う男女。
彼らは広大な廃墟の上を飛んでいるんですね。
また「戦死した息子の墓参に来る両親」とか、
「路上で楽器を演奏する両足のない男」、
「収容所に向かう敗残兵」や「地下壕で敗色濃厚のナチス兵」
なんてのも出てくるんですね。
また日常の何気ないシーンの中でも
「マーケットで妻の浮気に激怒し頬を叩く夫と、止める客」とか
「駅に着いた列車から降りたものの誰も迎えに来ず、ベンチで列車を見送る女性」
なんていうシーンも出てくるんです。
それまでの日常や常識的な風景が何かのきっかけで変化し、
その後、人々がどうするか?というところで共通してるのかな?と。


ただ、今回は比較的ナレーションが多く付けられていて、
前作に比べるとわかりやすいのは確かなんですけど、
この監督さんの作品ってそういう「わかりやすさ」ではなく、
難解な光景から観客が何を想像するかが醍醐味なので
今回はこれでもかなり説明しすぎてるのかな?と。
もう少し観客側に創造力の余地を残しておいて欲しかったなと思います。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2020年11月29日 新宿武蔵野館 3番スクリーン]

 

 

 

 

 

※とりあえずアンダーソン監督の過去作を