奈良国立博物館で開催中の、特別展「空海 KUKAI - 密教のルーツとマンダラ世界
」のレポートの続きです。
第一章のレポートはこちら
第二章のレポートはこちら
さぁ、今回は第三章のレポートとなります。
第三章は、展示国宝の数も多いので、2回に分けてお送りします(^_^)/
第三章 空海入唐―恵果との出会いと胎蔵界・金剛界の融合
さぁ、空海が入唐求法の旅に出立し、そこで師である"恵果(けいか)"と出会い。密教を伝授され、日本に戻るまでがテーマです(^_^)
今回レポートする国宝は、
・国宝 聾瞽指帰 上下巻のうち
・国宝 絹本著色真言七祖像より
の、5件です。
残りの3件は、次回レポートしますね。
・国宝 聾瞽指帰 上下巻のうち
金剛峯寺所有の国宝。平安時代(8〜9世紀)の作。
"ろうこしいき"と読みます。
金銀箔の野毛・砂子を散らした、豪華な装丁の巻子です。
巻末から5mほどを展示してきました。
私、上巻も見ていますが、上巻よりも保存状態は良いですよ。
実はこの下巻、巻末に夢窓疎石の跋文("あとがき"みたいなもん)が、付いているのが、見どころの1つなんですが、そこの展示はありませんでした(^_^;)ザンネン
空海の尾題「聾瞽指帰一巻」で終わっています。
"簾目(すだれめ)"と呼ばれる、透かしのような線が縦に入っていて、界線の代わりになっています。
この、"簾目"も、ハッキリと見えるので、ここも見どころかな?
"簾目"4本分を1行として、大きめの行書で1文字ずつをしっかりと書いています。
空海が、仏門の道を極めることを、親族に認めさせるために書いた、空海自筆の物語です。
◇
空海、当時24歳。非常に頭が良く、将来高級官僚になることはほぼ確実と、両親はじめ親族は考えていたようです。
ところが、親の意に反し、空海は仏教の魅力に取り憑かれ、仏門の道を目指したいと考え始めました。
空海は、そんな両親たちに対し、いかに仏教が素晴らしいものかを解き、納得してもらう必要がありました。
そのために、書いたのが、この物語「聾瞽指帰」です。内容はこんな感じ……
◇
あるところに、不真面目な甥(蛭牙公子)を更生させようとする男 🐰兎角公がおりました。
🐰兎角公は、まず儒教の🐢亀毛先生に、蛭牙公子の説得を頼みます。
🐢亀毛先生は、蛭牙公子に言います。「儒教を学べば、立派な人物になり、出世できるぞよ」
それを聞いていた、道教の虚亡隠士が割り込みます。
虚亡隠士は、言います。「道教の方が優れておるな。道教を学べば、長生きしたり、超人的なパワーを得ることができるのじゃからな」
そこに、仮名乞児という、仏教を修行中の若い僧侶が現れます。
仮名乞児は、言います。「この世は儚く、死は無惨です。これを救うのが仏様でございます🙏うんたらかんたら……」
そこにいる者たちは皆、仏教の素晴らしさに感服するのでした。
◇
まぁ、こんな話しです。若き日の空海が、3人の人物を借りて、儒教・道教・密教の中で、仏教がいかに素晴らしいかを、物語り形式で語ったものです。
さすが空海、なかなかやりますね〜
その気持ちからでしょうか?
実は、上巻はほぼ均一な"字つぶ"なのですが、この下巻は文字の大きさや、力強さを変えながら書いています!
強調したいところなんかを、力強く太く書いたりしてるんじゃないかなぁ?
このリズムの違いは下巻で良くわかります。画像の上が上巻、下が下巻です。比べてみて(^o^)
そして、空海の、勢いがありしっかりした字が、巻末に行くにしたがって、より力強くなっていきます。
上巻に比べて、下巻はより空海の気持ちが込められているように感じます。
空海、書いてるうちにノッてきた☺んでしょう!この辺も、みどころですね~
今回は下巻だけの展示ですが、下巻には下巻の良さがありますよ~
唐に渡る前の、いわば、空海の書の源泉です。
・国宝 絹本著色真言七祖像より
教王護国寺(東寺)所有の国宝。中国は唐時代 永貞元年(805年)の作。
空海が唐から持ち帰った、真言七祖師像5幅のうちの1幅です。(残りの2幅は、空海が日本に帰ってから描かせた)
1.5×2mほどの大きな絵です。
残念なことに、不空のお顔の部分を中心に絵の具の剥落が激しく、その尊顔を拝見するのは難しいです。
「不空」の名や、周りの字は空海のものだそうですよ。
金剛峯寺所有の国宝。唐時代(8世紀)の作。
遣唐使として唐に渡った空海が、持ち帰って念持仏とされていた、と伝わります。
↑国宝 弘法大師請来目録にも記載されています。
(すぐそばに展示されてるので、要チェックです!)
"仏龕(ぶつがん)"とは、ポータブルな仏壇の事で、"枕本尊"とも呼ばれています。
いつでもどこでも仏様を拝めるようにと、作られた携帯型仏壇で、香木である白檀で作られています。
↑20cm程の八角柱で頭頂部は丸みを帯びています。
↑この八角柱は3つのパーツで構成されていて、展開した状態で、中央の大きめのパーツには釈迦如来、左右の小さいパーツには両脇侍が木材の中をえぐり削る形で彫られています。
三面鏡のように展開した状態で、仏像を拝む事ができるようになっています。
↑各パーツの内ぐりに、非常に細かい彫刻で、たくさんの仏像や動物などが彫られています。
これを三面鏡を閉じるようにたたむと、八角柱になり、持ち運びができるようになるわけです。
ちなみに蝶番で閉じるようになっていて、最後に金属製の真っ直ぐな針金を、蝶番に通してロックします。
閉じた状態でも仏像ぶつかり合ったりして干渉しないように作り込まれています。
内部の諸仏が実に繊細に細密に彫像されているのが見事です。
単眼鏡で、じっくり見ていただくことをおすすめします(^_^)
教王護国寺(東寺)が所有する国宝。中国 唐時代(9世紀)の作です。
こちらも、空海が唐から持ち帰ったものだと考えられています。
五鈷杵・五鈷鈴と、それらを乗せる金銅盤のセットです。
五鈷杵は、それぞれ両端に5つの爪が付いたもので、元はインドの武器だったといわれています。
持ち手の中心部分に、舎利(釈迦の遺骨)が埋め込まれている……とキャプションに書かれていましたが、よくわかりませんでした(?_?)
五鈷鈴は5つの爪が付いたチ、リリーンと鳴る鈴です。
金銅盤は、細〜い足が3本。折れそう……(^_^;)
表面にキレイな文様が線刻されているのですが、上に五鈷鈴・五鈷杵が置かれているので、文様はほぼ見えません……
密教の修法の際に用いられ、空間を清浄にし、魔を祓うための仏具ですね。
独立展示ケースでの展示ですので、360°から見ることができます。
善通寺所有の国宝。中国は唐時代(8世紀)の作。
空海が、唐で師の"恵果"から授かったもの、とされています。
錫杖(しゃくじょう)の先っぽです。
"錫杖"とは、お坊さんが持ってる"杖"です。輪っかがたくさん付いていて、突くとシャンシャン音がします。
鬼滅の刃 で、上弦の肆 半天狗が分裂した"
積怒 "が持ってる、イカヅチ⚡を出すヤツです。
本物はイカヅチ⚡は出ませんが、山道を歩く際に、獣や蛇を避けたり、邪気を祓う効果はあるそうです。
これ、工芸品として実に良く出来ていて、全部で10体の仏像が鋳造されています。中央に阿弥陀三尊と、左右に四天王を表裏2尊づつ配置して、片面5尊✕表裏=10尊の仏像が鋳出されています。
独立展示ケースに入っていて、360°どこからでも見られます。
次回は、第三章の続きです(^_^)/~~