からの、続きです。
さる3月15日、文化審議会は同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、6件の美術工芸品を国宝に指定することについて、文部科学大臣に答申しました
。
この後、官報告示をもって正式に"国宝"になります。
その6件のうちの1件が、
・国宝(未) 雲紙本 和漢朗詠集
です。
では、レポートします。
・国宝(予定) 雲紙本 和漢朗詠集より
巻上
三の丸尚蔵館所有の国宝。平安時代(11世紀)の作。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240404/20/osapon-ok/89/81/j/o1080106615421491882.jpg?caw=800)
上下巻の2巻あるうち、上巻を展示しています。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240404/20/osapon-ok/9e/72/j/o1080081015421497788.jpg?caw=800)
↑"雲紙本"の名が付いているのは、その名の通り、青い雲☁状の料紙装飾に由来します。
和漢朗詠集の構成は、まず大きく「春」「夏」「秋」「冬」「雑」のカテゴリーがあります。
そのカテゴリーの中に、"テーマ(お題)"があって、
その"テーマ(お題)"にちなんだ漢詩・和歌を並べるというもの。
一例を見てみると、「春」のカテゴリーの中に、
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240407/20/osapon-ok/16/af/j/o1080090815422827828.jpg?caw=800)
↑「早春」のテーマがあって、それに因んだ漢詩が書かれ、同じく和歌が続きます。
このように、テーマごとに漢詩→和歌、次のテーマで漢詩→和歌、を繰り返していくのです(^_^)
この国宝 和漢朗詠集の楽しみ方としては、知ってる歌の作者を見つけてみることから始めてみましょう(^o^)
↑柿本人麻呂
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240407/23/osapon-ok/d3/d0/j/o0282025315422923368.jpg?caw=800)
↑山部赤人
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240407/23/osapon-ok/bb/b1/j/o0314026615422923371.jpg?caw=800)
↑紀貫之
知ってる、歌人を見つけたら、その歌を読んでみましょう。
「若菜」のテーマを、詳しく見てみますね。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240407/21/osapon-ok/4d/e3/j/o0896108015422847575.jpg?caw=800)
漢詩が一首、続いて、和歌が三首書かれています。
(野の中で若菜を選び摘む女性のことを、世間では美しい心を持つものと推し、また、囲炉裏で若菜の吸い物を作ることは、世の人は女性の柔らかな指に任せる)
何か、若干エロスを感じる……
「あすからは わかなつまむと かたをかの あしたのはらは けふぞやくめる」
(明日からは若菜摘み、片岡の朝(あした)の原は、今日は野焼きをしているようだ)
春の"野焼き"の風景が目に浮かぶようですね。
「あすからは わかなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ」
(明日から若菜摘みをしようと思って、野にしるしを付けておいたのに、昨日も今日も雪❄が降り続いているよ……)
せっかく"若菜摘み"を楽しみにしてたのに、チョット残念そう(^_^;)
「ゆきてみぬ ひともしのべと はるののの かたみにつめる わかなゝりけり」
(もう見かけなくなった女性を偲ぼうと、春の野に出かけてみた。形見として摘んだ"若菜"であることよ)
これ、階層の深い歌なんですよね〜
表層は、若菜摘みに出かけた男が「そういえばあの子、若かったなぁ〜」って思い出した歌。
かたみ→硬み→若菜→若い女の子って意味。
深層では、この女の子は昔のボーイフレンドが忘れられずにいるってことなんです。かたみ→形見→未だ残るボーイフレンドへの想い、なんです。
ようは、"訳ありの若い女の子と、ヤッた想い出"を歌った男の歌なんです!
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240407/22/osapon-ok/a1/24/j/o1080081015422913731.jpg?caw=800)
国宝の和漢朗詠集としては、
は、いずれも、完本では無いんですね。
上下巻ともに揃っていて、かつ全巻欠損が無いってことで、今回の答申となったんですねー
5/12(日)までの展示です。
さて、次回は……