【祝】国宝(予定) 雲紙本 和漢朗詠集@三の丸尚蔵館 | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

前回


からの、続きです。


さる3月15日、文化審議会は同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、6件の美術工芸品を国宝に指定することについて、文部科学大臣に答申しました


この後、官報告示をもって正式に"国宝"になります。


その6件のうちの1件が、


・国宝(未) 雲紙本 和漢朗詠集


です。

では、レポートします。





・国宝(予定) 雲紙本 和漢朗詠集より

  巻上

三の丸尚蔵館所有の国宝。平安時代(11世紀)の作。
上下巻の2巻あるうち、上巻を展示しています。


↑"雲紙本"の名が付いているのは、その名の通り、青い雲☁状の料紙装飾に由来します。

和漢朗詠集の構成は、まず大きく「春」「夏」「秋」「冬」「雑」のカテゴリーがあります。
そのカテゴリーの中に、"テーマ(お題)"があって、
その"テーマ(お題)"にちなんだ漢詩・和歌を並べるというもの。
一例を見てみると、「春」のカテゴリーの中に、
↑「早春」のテーマがあって、それに因んだ漢詩が書かれ、同じく和歌が続きます。
このように、テーマごとに漢詩→和歌、次のテーマで漢詩→和歌、を繰り返していくのです(^_^)


この国宝 和漢朗詠集の楽しみ方としては、知ってる歌の作者を見つけてみることから始めてみましょう(^o^)

↑柿本人麻呂
↑山部赤人
↑紀貫之

知ってる、歌人を見つけたら、その歌を読んでみましょう。


それを踏まえて……

若菜」のテーマを、詳しく見てみますね。
漢詩が一首、続いて、和歌が三首書かれています。
↑漢詩は「野中芼菜 世事推之蕙心 爐下和羹 俗人屬之荑指」。
(野の中で若菜を選び摘む女性のことを、世間では美しい心を持つものと推し、また、囲炉裏で若菜の吸い物を作ることは、世の人は女性の柔らかな指に任せる)
何か、若干エロスを感じる……
↑①和歌は、まずはレジェンド柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)が詠んだ歌
「あすからは わかなつまむと かたをかの あしたのはらは けふぞやくめる」
(明日からは若菜摘み、片岡の朝(あした)の原は、今日は野焼きをしているようだ)
春の"野焼き"の風景が目に浮かぶようですね。
↑②山部赤人(やまべのあかひと)が詠んだ歌。
「あすからは わかなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ」
(明日から若菜摘みをしようと思って、野にしるしを付けておいたのに、昨日も今日も雪❄が降り続いているよ……)
せっかく"若菜摘み"を楽しみにしてたのに、チョット残念そう(^_^;)
↑③紀貫之(きのつらゆき)の詠んだ歌。
「ゆきてみぬ ひともしのべと はるののの かたみにつめる わかなゝりけり」
(もう見かけなくなった女性を偲ぼうと、春の野に出かけてみた。形見として摘んだ"若菜"であることよ)
これ、階層の深い歌なんですよね〜
表層は、若菜摘みに出かけた男が「そういえばあの子、若かったなぁ〜」って思い出した歌。
かたみ→硬み→若菜→若い女の子って意味。
深層では、この女の子は昔のボーイフレンドが忘れられずにいるってことなんです。かたみ→形見→未だ残るボーイフレンドへの想い、なんです。
ようは、"訳ありの若い女の子と、ヤッた想い出"を歌った男の歌なんです!

国宝の和漢朗詠集としては、
は、いずれも、完本では無いんですね。
上下巻ともに揃っていて、かつ全巻欠損が無いってことで、今回の答申となったんですねー

5/12(日)までの展示です。

さて、次回は……

↑ヒントです。