新疆ウイグル自治区出身のジン・イー監督の初長編作品。新疆ウイグル自治区の小さな村の夏の日々。植物を愛する少年・アルシンと漢族の少女・メイユーの日々が、ドラマというより、これは夢だ(誰の?私の?)というように詩的に連なっていく、いわば自分が、その地に居て目撃しているように事象が続いていく、斬新な作品だ。
2025年ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門にて国際審査員グランプリを受賞している。何度も書くけれど、ジェネレーション部門は子ども映画ではない。むしろ表現的に先進的な作品が多い。
本作の内容を言葉で説明するのは難しい。しかし、自分が夢を見ている感覚で理解していくと妙な体験感がある。(夢なのにね)
カザフ族では長男は祖父祖母の養子となり、アルシンにとって兄は叔父と呼ばなければならないとか。実際の叔母には失踪した叔父が居て、彼女は寂しくて山に懐中電灯の光をあてるとか。好きなメイユーを待つときは、目を閉じて数秒数えれば良いとか。困った時は馬が何かを教えてくれるとか。我々の日常の価値観なんて消えてしまえと言いたくなる。
ね!分からないでしょ。だからストーリーは書かない。
ここでキャストの紹介なのだが、全く無名なのでそれも省略。監督のジン・イーは、自分の故郷の記憶と精神的風景をもとに制作したという。彼は、やはり北京電影学院出身である。たぶん学校で多くの映画と出会い詩的な映画原語を学んだのだろう。ビー・ガンとの出会いも大きいと思われる。
彼は「『凱里ブルース』を初めて観たとき、映画の時間が物語の外側へ広がっていく感覚を受けました。夢と現実が分かれていないというより、時間が層になって存在しているように感じたんです。あの映画は、映画が持つ可能性の輪郭を大きく広げてくれました」公式HPで語っている。
なるほどという感じだが、ビー・ガンとの違いは、登場人物の価値観が違う。ビー・ガン作品の人物は現在のやや底辺に居て、欲と色を隠し持っているが、本作の人物たちはそういった部分は淡白だし遥かに美しい。だって馬だって詩を読んでくれる。
撮影監督リー・ヴァノンによるカメラワークも絶品だ。どうです?観たくなったでしょ。
映画という夢を観ながら、観客自身が心の世界を創作できる映画かな?
2026年5月公開。





