なんと長いタイトルだろう。原題もRabiye Kurnaz gegen George W. Bush。同じだ。ドイツ版の「肝っ玉母さん」という感じだが、この調子のいいコメディは、何と実話の映画化だという。
アメリカ同時多発テロ(2001.9.11)の一か月後。ドイツに暮らすトルコ移民の一家の長男、クルナスが、旅先のパキスタンで「タリバン」の嫌疑をかけられ、悪名高きキューバのグアンタナモにある米軍基地の収容所に収監されてしまう。なんで、パキスタン、からキューバなの。しかも裁判もなく収監された訳だが、本作は、そこから息子を救い出そうとする1786日の戦いだ。
同時多発テロ後、ブッシュ大統領は直ちにビン・ラーディンらアルカイダの犯行と断定したが、その引き渡しをアフガニスタンのタリバン政権が拒否。それを理由にアメリカ・イギリス軍(有志連合)はアフガニスタンへの空爆を開始したことは記憶している。
その最中の出来事が、本作が生れるきっかけだ。イスラム教徒への差別や偏見が多く生まれたのもこの時期だ。
本作のミセス・クルナスはトルコからドイツにやってきた移民家族の母。日々の生活とベンツにしか興味はなく、遠く離れたドイツに暮らしていて、全く政治には無関心なままに生きてきた。そんな彼女が息子を取り戻す戦いをはじめなくてはならない。協力者は電話帳で見つけた人権派の弁護士ベルンハルト。二人は最後にはアメリカ合衆国最高裁判所でブッシュ大統領を相手に訴訟を起こすことになるというもの。
2022年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)と銀熊賞(脚本賞)を受賞しているが、うーん、ベルリン国際映画祭はなんで?という印象。良い意味でも悪い意味でも、まるでテレビドラマのように説明的で、アップテンポで観客を飽きささない作りになっている。要は、説明があって行動して、トラブルがあって・・・の連続。いわゆる古典的なエンタメのセオリー。
脚本はライラ・シュティーラー。監督はアンドレアス・ドレーゼン。主演のミセス・クルナスにメルテン・カプタン。ベルンハルトにアレクサンダー・シェアー。
まあ、見やすい作品だ。ちなみに、ウインドウズに登場したCopilotで「グアンタナモ収容所」について質問してみると「この施設は法の適正プロセスを規定したアメリカ合衆国憲法修正第5条や修正第14条に違反すると批判されており、キューバ政府は基地の返還を求めています。収容されている人々は、しばしば裁判にかけられることなく長期間拘留されることが問題視されてきました。バラク・オバマ大統領は、2009年に収容所の閉鎖を命令しましたが、議会の反対により完全な閉鎖には至っていません。ジョー・バイデン大統領も任期中の閉鎖を公言していますが、現在も完全な閉鎖には至っていない状況です」とのこと。
楽しくコメディタッチで見せたいという思いはわかるけれど・・・どうなのかなあ。でもね、良くも悪くも、ある種の正義が貫かれる感動はある。エンタメとプロパガンダの関係を考えるのも良いかも知れない。
2024年5月公開。