街ブラしていたら見つけました
素敵なドアノブだ
たぶん鋳物製だ

 

一瞬何か楽器を
演奏しているようにも
見えたが違っていた

 

組んだ腕が空間を作っているので
花とかを飾れる
頭と体のバランスは
エジプトの神々と同じだ

 

帰ってきたら
足を「ムンズッ!」
と掴んでドアを開ける

 

こんなドアノブなら
毎日帰って来るのが楽しみだ


 

***

 

2011/4/16(土) 午後 4:38

引き続き「秋刀魚の味」

 

僕が最初に観たのは
約30年前@名古屋のミリオン座
不思議な違和感に包まれながら
隣接の居酒屋で熱燗を頼み
隣の人に議論を吹っかけ
例によって記憶を無くした

 

ヒョウタンというあだ名で呼ばれる
東野栄治郎演じる教師が
娘が婚期を逃したのは
自分のせいだと酔ってぼやく

 

酔いつぶれたヒョウタンを
タクシーで送っていった家に
いたのが役の上では48歳の
杉村春子演じる娘
その姿を見て笠智衆演じる父が
娘(岩下志摩)を嫁に出す決意をする

 

杉村春子は画面では60歳くらいに見える
うら寂しげなラーメン屋の主人を
誠にみすぼらしく演じている

 

かつて小津監督が自分の映画の
4番バッターは杉村春子だ
と書いていた
確かに「晩春」で原節子に
縁談を勧める叔母さん
「麦秋」では原節子を息子の嫁に
もらうことが決まり狂喜する母
など重要な役が多い

 

笠智衆は小津映画54本中26本に
出演しているが”戦力”としては
期待されていなかったようで
小津監督から
「僕は君の演技よりも
 映画の構図のほうが大事なんだよ」
と言われたと自著で書いていた

 

小津監督の演出論に関するコメント
「一つのドラマを感情で現わすのはやさしい。
泣いたり笑ったり、そうすれば悲しい気分
うれしい気持ちを観客に伝えることができる。
 
しかし、これでは単に説明であって、
いくら感情に訴えてもその人の性格や風格は
現わせないのではないか
劇的なものを全部取り去り、泣かさないで
人生を感じさせる」
 
だからだったんですね

 

前回のバーの盤面のセリフや小津監督の
コメントは「小津安二郎を読む」フィルム
アート社刊からの引用です
この本は実にきめ細かく小津作品を分析
しています。
あと笠智衆著「大船日記 小津安二郎の
思い出」扶桑社刊
上の写真も中からのピックアップ

 

Youtubeをザッピングしていたら
「秋刀魚の味」の予告編を見つけた
ここでもカラーの小津映像が見られる


 

***

 

 

NHK-BSで山田洋次監督が選んだ日本の
名作100本を連続放映するにあたり
組まれた座談会を観た

 

デジタルリマスターされた「東京物語」を皮切
りに1年かけて山田洋次セレクションを観る
ことが出来る

 

セッションの中でゲストのピーター・バラカン
が小津安二郎監督の「秋刀魚の味」を
お勧め映画に挙げていた
とにかく新鮮、頑なにキャメラを動かさない
撮り方、坦坦としている演出、役者の
一人ひとりが生き生きとしている等
外国人目線からベタ褒めしていた

 

何か自分のことを褒められたように嬉しく
思った
僕も「秋刀魚の味」は大好きなうちの1本だ
山田洋次は、小津監督の遺作であるにも
かかわらずの質の高さをコメントしていた

 

ビリー・ワイルダー等みな全盛期と比べると、
遺作はチト寂しいものばかりだが「秋刀魚の味」は
ピーク三部作「晩春」「東京物語」「麦秋」
と比べても何等遜色無い

 

番組内で小野アナが秋刀魚が出てくるわけでも
ないのに何故タイトルが「秋刀魚の味」なのか
と質問し、山田洋次もセリフでも出てこない
と同感していたが
司会の山本晋也が私見として「はらわたを
捨てて秋刀魚に見限られる」という
古今亭志ん生の落語から娘の幸せを願いながら
手放したくない父親のジレンマを
苦いはらわたとおいしい身を一緒に食べてこそ
秋刀魚ってことではと言っていた
出演者一同頷いていた

 

戦時下で書いた「お茶漬の味」の脚本が
検閲当局から召集令状を受け取った夫を
送り出す最後の夜にお茶漬けさらさらとは
何事だと却下されたことと関係があるのかと
ずーと思っていたので
僕も永年の懸案が氷解した

 

忘れられないシーン
娘の結婚式後に寄ったバーのマダムが
モーニング姿をみて

 

「今日はどちらのお帰り お葬式ですか」

 

寂しさを紛らわすために立ち寄ったところに
グサッと突き刺さるようなセリフ

 

「うーむ、ま、そんなもんだよ」

 

言葉で肯定しながら自身も
ああそうだ、葬式だと自覚する残酷な瞬間

 

今秋放映予定の「秋刀魚の味」との再会が楽しみだ

 

IMDBで見つけた秋日和の予告編
小津監督の動くカラー映像をはじめてみることが出来た


 

記念すべき100本目が大好きな小津安二郎監督の話で幸せだ

 

***

 

2011/4/14(木) 午前 8:44