引き続き「秋刀魚の味」

 

僕が最初に観たのは
約30年前@名古屋のミリオン座
不思議な違和感に包まれながら
隣接の居酒屋で熱燗を頼み
隣の人に議論を吹っかけ
例によって記憶を無くした

 

ヒョウタンというあだ名で呼ばれる
東野栄治郎演じる教師が
娘が婚期を逃したのは
自分のせいだと酔ってぼやく

 

酔いつぶれたヒョウタンを
タクシーで送っていった家に
いたのが役の上では48歳の
杉村春子演じる娘
その姿を見て笠智衆演じる父が
娘(岩下志摩)を嫁に出す決意をする

 

杉村春子は画面では60歳くらいに見える
うら寂しげなラーメン屋の主人を
誠にみすぼらしく演じている

 

かつて小津監督が自分の映画の
4番バッターは杉村春子だ
と書いていた
確かに「晩春」で原節子に
縁談を勧める叔母さん
「麦秋」では原節子を息子の嫁に
もらうことが決まり狂喜する母
など重要な役が多い

 

笠智衆は小津映画54本中26本に
出演しているが”戦力”としては
期待されていなかったようで
小津監督から
「僕は君の演技よりも
 映画の構図のほうが大事なんだよ」
と言われたと自著で書いていた

 

小津監督の演出論に関するコメント
「一つのドラマを感情で現わすのはやさしい。
泣いたり笑ったり、そうすれば悲しい気分
うれしい気持ちを観客に伝えることができる。
 
しかし、これでは単に説明であって、
いくら感情に訴えてもその人の性格や風格は
現わせないのではないか
劇的なものを全部取り去り、泣かさないで
人生を感じさせる」
 
だからだったんですね

 

前回のバーの盤面のセリフや小津監督の
コメントは「小津安二郎を読む」フィルム
アート社刊からの引用です
この本は実にきめ細かく小津作品を分析
しています。
あと笠智衆著「大船日記 小津安二郎の
思い出」扶桑社刊
上の写真も中からのピックアップ

 

Youtubeをザッピングしていたら
「秋刀魚の味」の予告編を見つけた
ここでもカラーの小津映像が見られる


 

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