相変わらず中田は住んでいる所を言わなかった。
付き合っている女性とマンションを借りたようだと言う人はいた。それで間違いないだろう。

結婚するときに中田が持ってきた物は身の回りの物とオーディオだけだった。後は私の両親が用意してくれた家財道具。中田の引っ越しなんて簡単なもの。数回自分の車で運べば終る。


中田の母親から電話があった。私に離婚するのか聞いて来た。
「珠里ちゃんがいるのに離婚なんて」と言う。
「自分のしたい事だけして家族と過ごそうともしない人が、珠里のことを考えているなんて思えません」と答えた。
そしたら「離婚なんて片方だけが悪い訳じゃないはず」と言う。
「私は努力も我慢もしてきました。でも次から次に女をつくったり家に帰って来なかったり、外車を相談なく買ったり、今だって生活費もくれません。珠里の事も可愛くないんでしょ?私が知らないだけで外で何をしてるか全くわかったもんじゃないですよ」と答えた。
中田の母親も初めて聞く息子の姿に言葉を失いそれ以上何も言わなかった。


そして、約束の両家の話し合いの日が来た。

私は実家の両親に何も言ってなかった。言えなかった。珠里を連れて行っても本当の事を話せないでいた。
でも、いつまでも隠す事は出来ない。


実家に行った。


中田と別居している事、中田には付き合っている女性が私の知る限りでも二人はいる、家庭をかえりみず好きな事をしてお金を使い、もしかしたら知らない借金もあるかもしれない、別居してから生活費もくれないし、連絡もない。珠里を保育園にあずけてパートを始めた。離婚してしまいたい。


私の話を聞いて、両親は激怒した。

そして、中田と中田の実家に電話をし、話があるから出てくるようにと言った。

私は両親に話をした事で少し気持ちが楽になった。

両家の話し合いの数日前に中田が家に来た。
荷物を取りに来たようだった。
中田は私に言った。

「結婚してからさぁに何一ついい思いをさせてあげれなかった事はすまないと思っている」

別居していたが中田からは全く連絡がなかった。

話し合いも出来ない。

中田が自分の実家にいるはずもなく、所在は不明だった。

ある日、中田の携帯電話にかけてみた。

「どこに住んでいるの?」

「友達の所だよ」

「友達って誰?」

「さぁの知らない人だよ」

「いつまでもこのままじゃダメだし、はっきりさせたいんだけど」

「うん、わかってる」

「じゃあ、日を決めてよ」

「しばらく忙しいんだ」

「別に仕事が終った夜でもいいし」

「都合のいい日を連絡するよ」

「早くしてね。私だって珠里ちゃんの事も考えなくちゃならないし」

「わかったよ。連絡するから」


何とも噛み合わない会話だった。
私は特に中田を責めたりはしなかった。


別居してからどんどん日が過ぎて行ったが、中田は私と珠里に全く生活費をくれなかった。


私は、珠里をあずかってもらう保育園をさがした。

何とか、美和子の娘の千恵ちゃんが通っている保育園に入れてもらえたので、仕事を探す事にした。

知り合いの紹介でパートで採用してもらえる事になり早速働き始めた。