私にママ友が出来た。

美和子には珠里と同じ年齢の千恵ちゃんという娘がいた。


私は後にこの美和子に最悪な裏切りを受けることになる。


美和子の旦那さんは、中田とは違ってマイホームパパで、仕事が終わったら真っ直ぐ帰宅(お昼休み時間も帰宅)し食事の準備以外の全ての家事をしていた。
子供をお風呂に入れるのも寝かしつけるのも。
美和子は専業主婦なのに、掃除も洗濯もしない。気が向かない時は料理もしない。「子供のお世話が大変で出来ない。旦那の子供なんだから旦那が手伝って当たり前」と言う。

旦那さんは「俺もやりたくない、疲れてるし、でも美和子がしないから自分がするだけ」と言った。


なるほど…こんな夫婦もいるのか…と、いい風には思わなかったが、それでバランスが取れているならと納得した。

お互いの家を行き来するうちに「旦那さん、いつもいなくていいね」と美和子が言った。

「え?いないのって異常でしょ?」と聞くと「うちの旦那って仕事に行ってもお昼休みに帰って来るし終わったら真っ直ぐ帰って来るし本当にいつもいるみたい、何だかうっとうしくて」と答えた。

これは無い物ねだりだよなぁって感じた。

「旦那さん、家の事やってくれるし子供のお世話もしてくれるし、うちなんて何もしてもらえないよ。感謝しないとダメだよ」と私は言った。


「でも珠里ちゃんのパパってかっこいいよね。うちのは頭はハゲて来てるし格好悪いし」

「外見だけ、中身は千恵ちゃんパパの勝ち」

等と千恵ちゃんと珠里を一緒に遊ばせながら話をしたり、買い物に行ったり、時には旦那さんのファミリーカーに乗せてもらい遠出したりと、中田だけいない家族ぐるみの付き合いを何年も続けた。


美和子は、あけっぴろげで明るく、話し好きだった。
私は中田に電話をした。

「離婚した方が良さそうだね、一度きちんと話をしない?」

しばらく沈黙する中田。

「今はどこに住んでいるの?」

「ある人のマンション」

「ある人?誰?」

「さぁは知らない人」

「どこにいてもいいけど、こんな状態じゃ夫婦でいる意味もないし、それに、色んな噂が入って来るよ。珠里ちゃんの事も可愛くないの?」

「可愛いよ」

「可愛いのに顔も見たくないの?気にならないの?自分がしたい事だけしてるの?」

「ごめん」

「とにかく離婚の話し合いをしたいから帰ってきてくれない?」

「今日は約束があるからダメだ。連絡するから」

「どんな約束かは知らないけどこれより大事な用事はないでしょ」

「とにかく今日はダメだから…」

「じゃあ、私は珠里ちゃんを連れて実家に帰らせてもらいます。実家で両親と一緒に話を聞きますから、そちらの両親も連れてきて下さい」

「出ていくのはもう少し待ってもらえないか?」

「どうして?」

「考える時間がほしい」

「あなた自身の行動に答えが出てるでしょ?」

「とにかく一週間でいいから待ってくれ」

「わかりました。連絡を待ってますから」


弱々しい声で話す中田だった。

情けなかった。
自分自身も中田も。

やはり私の結婚は続かなかった。


それでも私は中田が何時に帰ってきても食事が出来るように準備だけはしておいた。
お風呂も準備しておいた。
ほとんど無駄になったが。
以前なら朝帰りしてシャワーをして着替えを数枚持って出掛けて行ったのに。

かなりの着替えを車に積んでいたと思われる。


中田が自分の実家に行っているはずもなく、どこに泊まってるのかと思っていた。


中田と知り合うきっかけになったスナックのママから電話があった。


「中田さんの噂知ってるの?」


「噂?」


「○○ってスナック知ってるでしょ?そこのママの妹と付き合っているって」


「へぇ~、もう次の女がいたんだ」


「え?前にも女いたの?」


「うん、デパートに勤めてた人だったみたい」


「でさ、その妹もお店出すらしくて、そのスポンサーが中田さんって噂なの」


「まさか、あの人がそんなお金持っている訳ないでしょ?」


「でもわかんないわよ、どこかで借りるとか保証人になるとか…」


「あ、そうだね」


「そうだねって、本当だったらどうするの?マスターも中田さんに対して腹をたててしまってて、さぁに悪い事したなって言うの」


「あの人との結婚はかなり前からもう破綻してしまってるの。でも結婚をしたのは私で、誰の責任でもなく私の責任だよ。今はほとんど別居してる感じ。珠里が可愛くないのかな?」


「私達、昼間は自宅にいるから近いうちに珠里ちゃん連れて来てよ」


「ありがとう。じゃあ伺います」


特には驚かなかった。
ただ、気になるのはお金。中田が大金を持っているはずがない。