次の日、パートを休ませてもらい中田の実家がある市の市役所に行った。

すでにサイン済みの離婚届けを提出した。

私は実家に本籍と住所を戻した。私と珠里は私の旧姓になった。

実に簡単な手続きだったが住んでいた市と中田の本籍地の市と私の実家の市は全部違うので市役所のハシゴだった。

晴れて(?)旧姓に戻った私はパートも休んだし、引っ越しの準備を進めた。


珠里を保育園に迎えに行こうとした時、昨日来た男二人がまた訪ねて来た。


「何度携帯電話に電話しても中田さんと連絡がとれないのですが、今日、何時ごろに戻られますか?」と聞いて来た。

「こちらにはもう戻りません。私も携帯電話しか手掛かりは知らないのです」と答えた。

「奥さんですよね?」

「離婚したので今は中田の妻ではありません」

「え?そうでしたか。実は私どもで中田さんに融資をさせていただいておりますが、ご返済が遅れてますのでお願いに来た次第なのです」

「私は何も聞いておりませんのでわかりません。本人と話をしていただくしか…。本当に居どころも知りませんし…」


私から色々聞き出そうとしているが、実際、私は答えようがなかった。
やはり中田は借金をしていた。それも銀行とかではない金融会社のようだ。

嫌だ、嫌だ。関わりたくない。

男二人は、「調べればわかる事ですから、またお伺いするかも知れません。中田さんから連絡があったら私どもが来た事を伝えて下さいね」と言い、名刺を私にくれた。


珠里を迎えに行き、そのまま実家に向った。


スーツ姿の男性二人。

「中田さんはご在宅でしょうか?」と聞かれた。

「いいえ、おりません」

「引っ越しされるのですか?」

積み上げてある段ボール箱を見てそう思ったのだろう。

「はい」

「どちらへ?」

「あの…ご用件は何でしょうか?」

「ご主人に直接会って話をしたいのですが、今日は何時ごろ戻られますか?」

「帰って来ません」

「困りましたね。大事な話なんでね」


嫌な予感がした。


「携帯電話に掛けて連絡をとっていただけませんか」と言うと携帯電話の番号を控えて帰って行った。


私はすぐに実家に電話をして母に話をした。

母は、変な事に巻き込まれたくないから次の日の朝一番に離婚届けを出そうと言った。

私は急に怖くなった。母がこっちに来て泊まれば?と言ってくれたのを片付けがあるからと断った。
でも、珠里がいる。怖がっていてはダメだと自分に言い聞かせた。

案の定、その二人は次の日もやってきた。
まず中田の両親が先に私の実家に来た。中田は遅刻。
中田が来るまで私の両親は私から聞いた話を中田の両親に話した。
黙ってうなだれる中田の両親。
いつの間にか私の両親は手を尽くして中田の浮気の相手の事を調べていた。

中田がようやく現れた。
「遅くなってすみません」の言葉もなかった。

中田の言葉はほとんど「はい」「いいえ」ばかりだったが、自分のやっている事は認めた。
離婚にも同意した。
珠里の親権も私にと簡単に言った。

誰のせいでこんな話し合いが行われているのかわからないはずもない中田だったが「用意があるので失礼します」と自分の両親と話もせずにさっさと帰って行った。


私の両親は呆れていた。


離婚に向けての話し合いなのにただ淡々と認めて、謝罪もなく、悪びれた様子もなく先に帰ってしまう中田の事を「あの男は将来がない。何か危ない気がする。早く離婚届けを出そう」と両親は私に言った。


そして、「珠里ちゃんと早くここに戻って来なさい。お前達の面倒くらい自分がみてあげるから」と父は言った。
「ありがとう。そうさせてもらいます」私は涙が出た。


私はパートを続けながら引っ越しの準備をしていた。
中田が持って行かなかった中田の物は父が中田の実家に持って行ってくれた。

いよいよ引っ越しが3日後になったある日、誰かが訪ねて来た。