「えっ?いつ?どこへ?」


思わず出た言葉。


中田が行方をくらましたという情報だった。
一人ではなく一緒に暮らしていた女性と共に…


以前、デパートに勤めている女性と付き合った後、スナックを中田の援助で地元に開店したと噂された女性がいたがどちらでもなく、県内一の繁華街でスナックをしている女性とのこと。

その女性は中田の奥さんを名乗り二人で色んな所に現れていたよう。


いくつかの金融業者からお金を借りまくり(自分の実家も担保にして)、返済もしないまま行方不明になったらしい。


唖然とした。


でも、離婚していて良かったとも思った。


そして、遠くに行ってくれて、二度とここには戻ってもらいたくないと。


私と珠里をないがしろにして、自分の好きな事をして暮らし、挙げ句に自分の親をも捨て、借金まみれになり女性と行方不明…逃亡?

どっちにしろ、今後はまともな人生を送れないであろう。


私と珠里はすでに新しい道を歩み始めている。珠里の父親だと名乗ってほしくもない。


中田が逃亡したという噂が広がり、私を心配する人達から連絡があった。


私が、借金騒動には関わっていないのを聞いて皆、安堵してくれた。


「落ち着いたら出ておいでよ」
「またゴルフしようね」
「大変だろうけど頑張ってね」


色々言葉をもらった。
引っ越しが終った。


たくさんの家財道具を収納する為、両親は部屋を空けてくれていた。想像以上の荷物の量に私も驚いた。


「珠里ちゃんとママは、おばあちゃんの家に住むから、おばあちゃんの家のお名前に変わるんだよ」と名字が変わる理由にした。


新しい保育園から珠里は新しい名字を名乗った。


実家にいる安心さと、珠里をみてもらえるので、私はパートから正社員にしてもらった。


しばらくは、実家と勤務先を行き来するだけの毎日だったが、母は「友達に会ったり会社の人達と出掛けたりしてもいいのよ。珠里ちゃんは私達がみてるから。」と言ってくれた。

私のお給料も自由にさせてくれた。

休みの日には、美和子ファミリーと出掛けたりもした。


そんなある日、驚く話が飛び込んで来た。


実家の両親に訪ねて来た男二人の事を話し、名刺も見せた。

「やっぱりね」母が言った。
普通の収入では出来ないような生活をしてたから、借金があるだろうと母は予測していた。

私も中田に聞いた事があった。もちろん本当の事を話すはずもないし郵便物も実家に届くようにしていたのか特に疑うような物はなかった。

突然外車を買ったり、着るもの身に付けるものは高級品、休みの日はもちろん仕事を休んでまでゴルフに行き、毎晩のようにゴルフ練習場か飲みに行き、オンナをつくり…余裕のある社長さんじゃないのだから…


「そこ一軒だけじゃないかも知れないわね。まさか保証人とかのサインはしてないでしょうね?」と母は私に言った。

当然、私はサインしたことなどなかった。

「引っ越してこっちに戻ったら、こっちにも訪ねて来るかもしれないね。毅然とした態度でいないと」とも母は言った。


珠里を実家にあずけて、私は引っ越しの為の荷物を全部まとめて再び実家に戻り泊まった。