今日、男子シングルス決勝が行われる全仏オープンですが、錦織は準々決勝で第1シードのナダルに敗れました。少し遅くなりましたが、ペールとの4回戦とナダルとの準々決勝を簡単に振り返ってみます。
4回戦のペールとの試合は、3回戦に続きフルセットまで縺れ込みました。3回戦と同様に、第5セットで相手にリードを許して非常に苦しい展開となりましたが、そこから錦織が粘りを発揮して逆転で勝利を収めました。
上にある試合のデータを見ると、やはりペールのアンフォースドエラーとダブルフォルトの多さが目立ちます。数の多さだけでなく、大事な場面でそういったミスが出たことが、勝敗の分かれ目だったと思います。当然、ペールの凡ミスというものも多かったのですが、錦織のプレッシャーによってペールがミスをしたというのもあります。ペールは良い時のプレーはトップの選手と遜色ないのですが、凡ミスの多さ、しかも大事な場面でミスが出てしまうというのが、トップ選手との大きな違いではないでしょうか。
錦織は第1セットの第2ゲームでいきなり自分のサービスゲームをブレークされますが、すぐにブレークバックし、結局6ゲーム練習をして第1セットを取りました。
第2セットも錦織は先にブレークを許しますが、その後に追いついてタイブレークになります。セットポイントもありましたが、ペールがタイブレーク10-8で取り、セットカウント1-1となりました。
このセットを錦織が取っていれば、ストレートで試合が終わった可能性が高かったのですが、第2セットをペールが取ったことで、ペールにもまだ行けるという気持ちにさせてしまったかもしれません。このあたりのところは、3回戦のジェレ戦同様、非常にもったいなかったと思います。結局、第2セットを取られて最終的にフルセットまで縺れたことが、準々決勝のナダル戦に大きな影響を及ぼしてしまいました。
第3セットは再び錦織が6-2と圧倒してセットを取りますが、このセットが終わったところで日没順延となります。
第4セットは翌日に開始しますが、前日よりもペールの調子が上がっているのが分かりました。それでもタイブレークで錦織のマッチポイントがあり、試合を決めるチャンスがありましたが、第2セット同様にペールに10-8でタイブレークを制され、セットカウント2-2となってフルセットに勝負が持ち越されます。
第5セットになってもペールが主導権を握った展開となり、第4ゲームのサービスゲームを錦織がブレークされてゲームカウント1-4と厳しい状況になります。
第6ゲームの錦織のサービスゲームでは、40-15と錦織リードの状態からデュースになってしまい、その後に逆にリードを許してペールにゲームポイントを握られます。ここでこのゲームを失っていたら、ほぼ錦織の負けが決まってしまったと思います。しかし、ここから踏ん張って錦織がサービスゲームをキープしました。試合を見ていて、正直この日の調子などから錦織が勝つのは厳しいなと思っていました。しかし、ここでの錦織の精神的な粘りは素晴らしく、ペールに行っていた流れが徐々に錦織の方に戻ってきたような気がします。
直後のペールのサービスゲームを錦織がブレークして、ブレークの数で並びますが、第8ゲームで再度ブレークを許してゲームカウント3-5でペールのサービスゲームを迎えるという絶体絶命のピンチに陥ります。
しかし、ペールのサービングフォーザマッチとなった第9ゲームで、錦織は常にリードをしてペールにプレッシャーを掛けます。ペールもミスを幾つか犯して、錦織がブレークに成功します。前述のように、こういった重要な場面でペールがミスをしてしまうのが、トップ選手との大きな差で、それがランキングにも現れているのだと思います。
ペールとしては、勝利が目の前まで来ていたのに、そのチャンスを失ってしまったことで精神的に大きなダメージがあったのではないでしょうか。第5セットの序盤とは全く反対に、この後は錦織が主導権を握って試合を進め、第11ゲームのペールのサービスゲームをブレークして、今度は錦織がサービングフォーザマッチを迎えます。
第12ゲームは、ポイントが競りましたが錦織がサービスゲームをキープして、セットカウント3-2で準々決勝進出を決めました。
第5セットのゲームカウント1-4となってから、錦織は攻めの姿勢を見せるようになり、それが結果として錦織の勝利につながったと思います。逆にペールはミスが多くなり、勝利を手繰り寄せることができませんでした。やはり、重要な場面でどういったプレーをするのかが、勝負を左右するということを再認識しました。
4回戦が日没順延となり2日に渡って試合をしたことで、準々決勝のナダル戦まで錦織は3日連続で試合をすることになりました。また、3回戦と4回戦をフルセットで戦ったことで、体力の消耗も相当大きなものになってしまいました。一方のナダルは、4回戦まで失ったのは1セットだけで、準々決勝まで1日の休養があり、体力面での差は明らかでした。
ナダル戦では錦織の体力がどれだけ残っているのかが心配でしたが、試合が始まるとその心配が現実のものとなりました。第1セットと第2セットでは、錦織の動きにキレがなく簡単にナダルにセットを連取されます。
ナダルはミスが少なく、逆に錦織はナダルの弾むボールに苦戦してミスが多くなっていました。時折、錦織が素晴らしいストロークを打ってポイントを取りますが、それが続かずに流れを自分の方に持ってくることができません。
第3セットは体が解れて来たのか、錦織の動きが多少良くなりますが、試合を通して錦織はゲームカウントでリードすることができず、ベスト8で敗退となりました。
ナダル戦は内容云々ではなく、試合が始まる前から既に勝負が決していたような気がします。この試合は、4回戦までの2人の戦いが勝敗を左右していました。やはり、2週間の長丁場で5セットマッチを戦うグランドスラムの大会では、いかに体力的な消耗を抑えて勝ち進むことが重要だということです。
一方で、錦織の全仏での戦いは、今後に希望を持てるような内容でした。今年の全豪後の大会で、錦織は早期敗退することも少なくなく、勝負強さも影を潜めていました。クレーコートシーズンに入っても、錦織の調子は中々上向いていませんでしたが、この全仏の試合ではショットの質も良くなり、勝負強さも戻ってきました。
3回戦と4回戦の試合では敗戦目前までいって、見ている途中で敗戦も覚悟しましたが、錦織は崖っぷちの状態でも勝つことをあきらめず、逆転で勝利もものにしました。惜しまれるのは、この2試合とも格下との試合でしたので、できればこういった戦いをラインキングが自分よりも上位の相手でやって欲しいところです。
一昨年の手首の怪我から復帰後は調子が戻らずに苦しい時期もありましたが、これで昨年の全仏からは5大会連続でグランドスラムでベスト8以上と安定した成績を残しています。今年の全仏では悔いが残ることもありましたが、今後の錦織の活躍が期待できるような戦いでもありました。
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