企業が残業代未払いをしているというニュースを時々目にすることがあります。最近では宅配便大手のヤマト運輸が、残業代未払いが190億円ということが報じられていました。

 

サービス残業も残業代の未払いに相当し、当然のように法律違反です。そして、この残業代未払いの他に、残業時の割増賃金についても法律違反をしている企業は少なくありません。

 

残業というのは、企業で決められている労働時間を超えて労働することです。労働基準法で1日の労働時間は8時間以内と決められていますので、1日で8時間を超えて働けば残業となります。

 

但し、企業の規定で1日の労働時間を8時間より少なくしていれば、その労働時間を超えて働くと残業になります。例えば、1日の労働時間が7時間と決めていると、7時間を超えて働くと残業になります。

 

また、労働基準法では18時間を超えて働くと、それを時間外労働と言います。従って、企業の規定で1日の労働時間を8時間と定めていると、残業=時間外労働となります。一方、規定で1日の労働時間を7時間としていると、7時間から最初の1時間は残業ですが時間外労働ではなく、8時間以上が時間外労働となります。

 

 

労働基準法では、時間外労働をした場合には割増した賃金を支払うことになっています。割増するのは、通常の賃金に対して25分以上5割以下の範囲内となっていて、働く時間帯や労働時間数などによって決まっています。

 

時間外労働の割増賃金

 

 

時間外労働に対しては、原則として25分以上の割増賃金が必要で、深夜の労働(22時以降5時まで)については5割以上の割増賃金となります。

 

更に、1ヶ月の時間外労働が60時間(休日労働として働いた時間数は含みません)を超えると、60時間を超えた時間外労働に対しては5割以上の割増賃金が必要になります。1カ月に60時間を超えた時間外労働を深夜に行わせた場合は、75分以上の割増賃金となります。

 

 

休日労働については、以下のように割増賃金となります。

 

休日労働の割増賃金


 

休日労働自体が時間外労働という考え方をするため、1日に8時間以内の労働に対しても35分以上の割増賃金が必要となります。従って、18時間を超えた労働をした場合も賃金の割増率は同じです。但し、深夜に労働した場合には、時間外労働と同様に深夜の割増率を加えることになります。

 

中小企業に対しては時間外労働の割増率で特例があり、5割以上の率の割増賃金率の適用についてだけは適用されません(5割未満の割増賃金率については適用されます)。

 

 

残業をして働いた時間に対する賃金を支払わない企業はもってのほかですが、時間外労働に対する割増賃金を支払わない企業も冒頭に書いたように少なくありません。

 

特に、22時以降5時までの深夜労働に対する割増賃金を支払わないようにするために、22時以降に働いた時間分を他の日の22時までに働いたとして労働者に申告させる企業があります。もし、読者の人が働いている企業で同じことをさせている時は、「これが労働基準法違反だと知っていますか?」と上司に聞いてみてください。

 

ちなみに、労働基準法の規定通りに時間外・休日労働や深夜の割増賃金を支払っていないと、6ヶ月以上の懲役または30万円以下の罰金となります。もし、部下に対して22時以降に残業しても、他の日の22時までの時間で残業したことにするよう指示していたとしたら、労働基準法違反で懲役刑になる可能性があるので気を付けてください。


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