リオ五輪が終わって早いもので、もう2週間ほど過ぎました。今回の五輪では、日本人選手の戦いでは「逆転」して勝つことが目立っていました。

 

逆転勝ちができたのは、あきらめない精神力や粘りや頑張りがあったからでもありますが、中身を見ていくと他に重要な要素があったからです。今回は、レスリング女子、体操男子、バドミントン女子の逆転劇について、なぜ逆転できたのかを分析してみました。

 

 

【レスリング女子】

48キロ級の登坂絵莉、58キロ級の伊調馨、69キロ級の土性沙羅が決勝の終盤に逆転して金メダルを獲得しました。

 

いずれも残り30秒くらいからポイントを奪って逆転しましたが、これは序盤で相手のスタミナを奪い終盤にポイントを奪うという日本レスリングの作戦でもありました。

 

日本選手は外国選手よりもスタミナがあり、相手選手が疲れた終盤にポイントを奪うことができます。日本の選手の練習量の多さは半端なく、外国の選手が日本に来て練習に参加しても体力的についてこれなくて同じメニューがこなせないようです。

 

実際に日本選手と対戦した外国の選手は、終盤になるとスタミナが切れて攻撃がほとんどできず、フラフラの状態になっていることがほとんどでした。

 

 

【体操男子】

男子団体でアテネ五輪以来の金メダルを獲得しましたが、6種目行われる演技では5つ目の鉄棒で逆転し、最後の床でロシアを突き放して優勝しました。

 

この逆転は日本が演技した種目の順番に要因がありました。日本は鉄棒と床を得意にしていますが、あん馬とつり輪は苦手にしていました。その苦手なあん馬とつり輪が最初に演技する2種目だったため、リードを許す展開になっていました。

 

しかし、後半になるにつれ得意な種目となっていたために、最終的に逆転で金メダルを取ることができました。前半リードされていても、おそらく選手たちには焦りはあまりなかったでしょう。

 

個人総合では、内村航平が最後の鉄棒を残した段階で0.901の差があり、逆転するのは難しいのではと思っていました。

 

内村が優勝するためには、トップのベルニャエフにプレッシャーを与えるために、鉄棒で高得点を出すことが必要でした。そうなると内村には難しい技をしつつミスは許されない状況と、非常に厳しい状態に置かれていました。

 

そのような状況でも、内村はほぼ完璧な演技をして底力を見せつけました。私は内村は相当な精神力な持ち主だと思っていたのですが、実は内村はそれまでベルニャエフの得点を見ないで、自分の演技だけに集中していました。

 

内村は点数のことよりも、自分がベストを尽くすことだけを考えて競技に臨んでいました。一方でベルニャエフは、内村を点数で上回ろうとプレッシャーがかかり、鉄棒ではその緊張で思うような演技ができませんでした。

 

点数を意識して自分にプレッシャーかけてしまったベルニャエフに対して、内村は相手のことは気にせずに自分の演技だけに集中していました。このことが、両者の鉄棒の演技に現れていたのだと思います。

 

 

【バドミントン女子】

高橋礼華と松友美佐紀ペアが、五輪のバドミントンで初の金メダルを取りました。決勝では第3ゲーム16-19から5ポイントを連取して逆転での勝利でした。

 

正直16-19となったときは、もう駄目かと思っていました。しかし、相手の19点というのはマッチポイントまであと1点という微妙なポイントだったことが、両ペアの心理面に影響を与えていたことが考えられます。

 

バドミントンに限らず、バレーボールや卓球など得点を重ねてセットやゲームを取り合う競技では、あと1点でマッチポイントという場面から中々点を取れないことがあります。

 

マッチポイントになると、相手にはもう一つもミスができないというプレッシャーがかかり、マッチポイントを迎えた方はあと1点だということで攻めの姿勢を取ることもできます。

 

しかし、マッチポイントまで1点という場面だと、マッチポイントを迎えた方はそれほど思いきった攻めをできるわけでもなく大事にいこうという気持ちになることがあります。点差がもう少し離れていれば思いきったプレーができるのですが、3点差だとあっという間に追いつかれてしまうため、そういう訳にはいきません。

 

逆に、タカマツペアは19点目を取られた後に開き直ってプレーをするようになりました。マッチポイントを取られていたら、一つのミスも許されないのであれほど開き直ったプレーは難しかったでしょう。

 

更に、タカマツペアが17点目を取った後に高橋がサーブを打っていたということも連続してポイントを取れた要因でした。

 

この日の松友のサーブは不安定で、ショートサーブのときに浮いてしまい叩かれたり、ロングサーブも読まれてスマッシュを打ち込まれたりしていました。一方で高橋のサーブは安定しており、レシーブで攻め込まれることはあまりありませんでした。

 

タカマツペアが金メダルを取れたのは、世界ランキング1位になった時期も非常にいいタイミングでした。タカマツペアは平成2610月にダブルスランキングで1位になりました。

 

しかし、1位になった後は「勝たなければいけない」ということがプレッシャーになり、更に各国から研究されて昨年は苦しい戦いを強いられました。

 

その苦い経験を生かして、今年になってから再び調子を取り戻してリオ五輪を迎えることが出来ました。もし、昨年リオ五輪が開催されていたら、タカマツペアの調子の波が低い時期と重なり金メダルは難しかったと思います。こういった巡り合わせもタカマツペアが金メダルと取れた要因だと思います。


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