日本は貿易立国だということを皆さんは耳にしたことがあると思います。貿易立国とは、資源の乏しい国が外国から原油や鉱石等の原材料を輸入し、それを加工した製品を輸出する加工貿易で国の経済を維持することを言います。学校の授業でも、日本の貿易の特徴は加工貿易だと教えられたことを覚えている人は多いと思います。

 

では、日本経済はどのくらい輸出に依存している経済なのかを見てみましょう。

 

下のグラフは各国の2014年の輸出依存度(=輸出額÷GDP)ですが、日本は15.2%と先進諸国の中では低い方で、OECD加盟国で日本より低いのはギリシャと米国だけです。


各国の輸出依存度
資料出所:名目GDP-世界のネタ帳、輸出額-財務省貿易統計

 

日本は貿易立国で、内需の不足を輸出によって補う輸出依存型経済と言われることがありますが、実際には内需依存型の経済になっています。

 

また、中国の輸出依存度は22.3%で輸出依存度がそれほど高くなく、どちらかというと内需型依存型の経済構造になっているようです。現在中国は、国内の需要を大きく上回る供給力を抱えていて、需要不足の状態になっています。そういった意味では、中国の経済というのは今後も悪化していく可能性があります。

 

 

以前の日本経済は輸出依存型で、1980年代の米国との貿易摩擦によって、内需型経済への転換を迫られたというのが通説になっています。

 

日本と米国との貿易摩擦は、それ以前から起こっており、1960年代後半は繊維製品、1970年代は鉄鋼製品、1980年代は電化製品と自動車が米国から問題視されていました。

 

1980年代の日米貿易摩擦のときには、日本の経済構造の閉鎖性が莫大な貿易黒字を生んでいると指摘され、米国から「日本の内需拡大と市場開放」を求める圧力が強まりました。

 

それにより、牛肉やオレンジなどの輸入数量制限の撤廃、日本のメーカーが米国に工場を設立して現地生産をすることで、日米貿易摩擦が収束しました。

 

では、日本の輸出依存度の推移を見てみましょう。下のグラフは、1980年以降の日本の輸出依存を示したものです。


日本の輸出依存度推移
資料出所:名目GDP-世界のネタ帳、輸出額-財務省貿易統計

 

1980年代半ばから輸出依存度は低くなりましたが、1980年代前半も15%を下回っており2014年よりも輸出依存度が低く、輸出依存型というよりも内需依存型の構造になっていたようです。

 

私は、1980年代の日米貿易摩擦をきっかけにして、日本経済が輸出依存型から内需依存型に変わっていったと思っていましたが、実際は当時から既に日本は内需依存型だったのです。

 

 

日本は原材料を輸出して製品化をしていますし、原材料を加工した製品を輸出していることは確かです。しかし、需要の約85%を内需に頼っている内需依存型経済なので、実際には日本は貿易立国とは程遠い国というのが実情だと思います。


(関連の記事)
○消費税引き上げがアベノミクスの失敗を招く
○アメリカには消費税(付加価値税)がない
○消費者物価指数は色々ある
○何故アメリカは付加価値税を導入しないか
○「消費税増税は国際公約」は嘘
○日本の法人税率は高いのか?
○消費税増税≒賃金引き下げ

○デフレは物価の下落だけの現象ではない
○消費税増税で税収も景気もダウン
○月給は急には上がらない

○軽減税率導入は本当に低所得者のため?
○企業が内部留保を溜め込むのは需要が少ないから
○ベースアップがある企業は少ない
○ブラック企業が恐いのは経済成長
○建設単価の上昇は公共事業が減ったから


こちらをクリックしてください!