●「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の概要のまとめ | 尾沼社会保険労務士事務所

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『パートタイム・有期雇用労働法』が新たに施行されたことによる「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の概要についてまとめておきました。

 

「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」

【法改正(大企業=2020年4月、中小企業=2021年4月施行)】

目的

①正社員(フルタイム)と非正規雇用労働者(嘱託社員、パートタイマー、契約社員、派遣社員など)との不合理な待遇差をなくす

②裁判における判断基準の「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を統一的に整備する。

 

 

改正点の概要

1、不合理な待遇差を無くすための法整備

均衡待遇

⇒ 職務の内容や配置転換の有無などが正社員と比べて相違があるとしても不合理な待遇差を設けてはならない(禁止)。

均等待遇

⇒ 職務の内容や配置転換の有無などが正社員と同じであれば差別的取扱いをしてはならない(禁止)。

※1、「職務の内容」 = 業務の内容 + 責任の度合い

 

同一労働同一賃金ガイドライン』 『パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書』 『不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル』 を参照する。

※2、賃金体系や人事制度の見直し、明確化が求められる。ただし、「働き方」や「役割」が異なるのであればそれに応じて賞与や手当を含めた賃金や福利厚生などの待遇が異なることはありえることで、何でもすべて杓子定規で処理しなければならないわけでもないので、社会通念(世間の相場)を押さえておくことが大切になる。【参考】平成30年6月1日最高裁判決『ハマキョウレックス事件』/同『長澤運輸事件』

※3、同一労働同一賃金を考慮する必要があるか?の切り分けは次のとおり。

■■■ ①正社員以外は雇っていない。

■■■■ ⇒ 考慮する必要なし。

■■■ ②非正規と正社員の仕事の内容が明確に分けられている。

■■■■ ⇒ 考慮する必要なし。

■■■ ③非正規と正社員の待遇差に合理的な説明ができる。

■■■■ ⇒ 考慮する必要なし。「働き方」や「役割」などの違いに見合った待遇であると社会通念に照らして合理的な説明ができなければ考慮する必要あり。

※4、賃金の決定基準・ルールの相違における合理的な説明とはどのようものか?

■■■ ①主観的または抽象的な説明 ⇒ × 「将来の役割負担が異なる」

■■■ ②客観的および具体的な実態 ⇒ ○ 「キャリアコースの実運用に基づいている」

※5、同一労働同一賃金の実施には「個別の雇用契約で対応する方法」「職務評価による分析を用いる方法」とがある。

 

派遣社員

派遣先は派遣元に対して派遣先従業員の待遇について情報提供しなければならない。

②「均等・均衡待遇」か「派遣元との労使協定」いずれかによる待遇が求められる。

※6、派遣先は派遣元が上記②による待遇を遵守できるよう派遣料金の額に配慮しなければならない。

※7、労使協定方式を採用するなら 『労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定(イメージ)』 『労使協定方式に関するQ&A』 を参照する。

※8、退職金の支給の対象となる派遣社員は常用型であり、登録型は基本的には対象にならない。

 

 

2、非正規雇用労働者の待遇の説明義務

嘱託社員、パートタイマー、契約社員、派遣社員などは「正社員との待遇差の内容や理由」など自身の待遇について説明を求めることができる。

事業主は非正規雇用労働者から求めがあれば説明しなければならず、

③それに対して報復的な不利益取扱いをしてはならない(禁止)。

※9、待遇差があることが不合理でないと判断したのなら、それを説明できるよう文書にまとめておく。

※10、待遇差があることに合理的な説明ができないと未払賃金の問題になる。

※11、「アルバイト」にも注意するべき。

 

 

3、行政による事業主への助言・指導や、裁判外紛争解決手続(ADR)の整備・強化

上記1、2に実効性を持たせるための法整備・強化。

上記1、2がADRの対象になる。

※12、労務管理の一環として事業主がADRを利用するのも一つの手。

 

特定社会保険労務士 尾沼昌明

 

 

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