昭和61年の4月か5月、就職した会社はリサイクルの会社だった。まず、一升瓶をトラックに積んで出荷する。
ぼ くは自動車免許はもっているものの、まだ運転は下手だと分かる人にはわかるようだ。
初日は、まずビンを運ぶ仕事だった。
その会社はチリ紙交換屋の仕事だが、その時は古紙価格が暴落して、ビンを扱っていた。ビンの出荷が終わるとビンの選別をするように言われた。
何故か知らないがみんなが、ぼくを知っている。自衛隊にいたことも知っているらしい。
そして、ビンの選別をしている時のことだった。
「モトユキよー、腹割かれた時、生きてあったとよー」と誰かが言った。ぼくと同じぐらいの年の人たちが集まっていて誰かが、そう言った。ぼくはその時、それが誰のことで、どうぼくとどう関係してくるのかよく聞いていれば後の精神障害はなかったかもしれない。
自転車で北へ向かうと、自転車のカゴにパンを積んだ3人ぐらいの人とすれ違う。パン工場を見つける。
そうだ、食糧は必要だ。工場でまとめ売りをしているのか。果たして、そうだった。
まとめ売りだから、安いわけでもないな。でも、買っておこう。水もいるな。ジュースの自動販売機もないか?
ジュースの自動販売機をみつけ、カゴに入るだけ買う。自転車を運転して、なんか解放感がある。気分がいい。
やがて、建物がまばらになり、なくなる。白神山地は世界最大のブナの原生林だ。近づけばわかるはずだ。
暗くなってきて、建物がないところで自転車をとめて、体育座りをする。ちょっと眠る。ちょっと寒いなとおもって目覚める。また北へ向かう。
いつの間にか、山の裾を沿って走っている。
ー秀和、日本中のどんな山、いくら入って行ったって宇宙人の基地なんか見つからない。
お前のひきこもりは自然に治った。早く家に帰れ。
えっ? あれ、誰か何か言った? 多分、ここはもう青森県との境だ。この山の中に宇宙人の基地がある。
ぼくは自転車をとめると、ショルダーバッグから使い捨てカメラを取り出す。
道路の端に自転車を駐車して、パンとか缶ジュースはそのままで、ぼくは山の中に入って行った。
基地は奥の方にあるはずだ。変だな。同じところに来てしまう。なかなか、奥に行けない。方向が分からなくなってきた。
ちょっと、疲れた。ちゃんと眠れていないのだな。少し休もう。木の根元で座りこんで体を木にもたせる。