お母さんへ
あなたが天国へいって
あっという間に1ヶ月が過ぎました。
お母さんがいつも座っていたソファーを見ても
お母さんの部屋に行っても
どこにも姿はありません。
一年前のちょうど今頃、大きな病院で検査を受けましたね。
病院が嫌いなお母さんが、検査を受けるということは、相当辛いんだなと思いました。
病院としては、打つ手はないと言われて
その言葉がどういう意味を持つのか分かりませんでした。
ドクターは、残された時間があとどのくらいかなんて教えてくれませんでした。
今から思うと、あれから10ヶ月でお別れの日はやってきたのです。
もっと側にいて
いろんな話をすればよかったと
後悔が今頃やってきています。
チャンポンが大好物で
外食といえば決まってこれ。
ソフトバンク・ホークスが大好きで
テレビの前で一生懸命手をたたいたり、声を出したりしながら応援をしていましたね。
口数は少ないだけに、お母さんの言葉は、いつも鋭さがありました。
幼い頃は、お母さんの目の動きで、機嫌がいいのか悪いのかを伺っていました。
家での私の役割は、お客様へのお茶出しと洗濯物をたたむこと。
褒められたくて、がんばっていたように思います。
ああ
思い出は次々湧き出てきます。
昨年の秋からどんどん体重が落ち始め
小さくなっていくお母さんを見て
息子達とお別れの日が近いのかもしれないと話すようになりました。
人はいつか最期の日を迎えます。
お母さんにその日が来たら
『ありがとう』と言おうと決めていました。
決めていたけれど
決めていたけれど
言えませんでした。
目を開ける事はないのだと、頭で理解していても、心が追いつきません。
ありがとうって言ったら、二度と会えない気がして言えませんでした。
お母さん
お父さんより先にいっちゃダメだよ。
見ちゃおれないよ。
お母さんの写真に向かって
『おーい、どこおるとかい』って言ってるお父さんを見ちゃおれないよ。
お母さん、天国で、素敵なおうちを建ててみんなを待っててくださいね。
私は、ずっとお母さんの娘だし
私の息子達は、ずっとお母さんの孫。
沢山、沢山、家族が増えても一緒にいれるように
大きな大きなおうちを建てておいてね。
今、私は思います。
お母さんからもらった命はひとつだけれど、決して命はひとつなんかじゃないという事を。
お母さんからもらった命から
みっつの命が生まれました。
このみっつの命から、更に、沢山の命が生まれると思います。
ずっと続くね、命は続くね。
こうやって続いてきたんだもんね。
お母さん、ありがとう。
53年間、育ててくれてありがとう。
私、お母さんにもらった命を
ちゃんと受け取ったからね。
そしてまた、そのバトンを渡して
お母さんのところへ帰るからね。
命って終わらないんだね。
終わらないってわかったから
安心して生き抜きますから。
大切にしますから、お母さん。
ありがとう。
冨田優子