牛乳が体に悪い理由(カルシウム摂取量と骨粗鬆症の関係)
<2014年1月の記事の再掲>タイトルを見て、「何言ってんの?」「アホちゃうか?」と思ったでしょう。栄養の代名詞ともいえる牛乳は、確かにカルシウムが豊富です。しかし、牛乳にはマグネシウムが含まれていないため、牛乳を飲めば飲むほどに骨は弱くなってしまいます。世界で最も牛乳をよく飲むノルウェー人は、日本人の5倍の骨折率という有名なデータがありますが、ほかの研究結果もみていきます。西洋人は日本人に比べて大腿骨頚部骨折(原因は骨粗鬆症)を起こしやすいという調査結果があります。カルシウム摂取量の多い国ほど骨粗鬆症が多いということを初めて報告したのはハーバード大学のヘグステッド(Hegsted DM)という研究者で、彼が取り上げた国は10か国に過ぎませんが、アメリカやニュージーランド、スウェーデンなどのカルシウム摂取量の多い国(=乳・乳製品の消費量が多い国)では、シンガポールや香港などの摂取量の少ない国に比べて大腿骨頚部骨折が非常に多いことを報告しています。 【カルシウム摂取量と骨粗鬆症の関係】次に、アベロウ(Abelow BJ)という研究者は、16か国の動物性タンパク質およびカルシウムの摂取量と50歳以上の女性の骨折発生率との関係を調べました。その結果、カルシウムの摂取量および動物性タンパク質の摂取量と骨折の間に強い正の相関関係が認められました。(下図参照)肉や乳・乳製品をたくさん摂取している国ほど骨折が多かったのです。アベロウ氏は、カルシウムをたくさん摂取しても、動物性タンパク質の摂取量が多いと酸塩基平衡(血液の酸性とアルカリ性のバランス・pH)が酸性側に傾き、骨のカルシウムが溶け出して尿中に排泄されてしまうため、骨粗鬆症になるのだと考察しています。 【動物性たんぱく質と骨粗鬆症の関係】さらに、イギリスと日本で骨量と骨折(大腿骨頚部骨折)を比較した疫学研究において、ハートフォードシャーの男性172人および女性143人と和歌山県太地町の男性86人および女性90人について、体格、骨量(大腿骨頚部と腰椎)、生活習慣(飲酒、喫煙、カルシウム摂取量、屋外活動)などを比較しました。イギリスでは4年後、日本では3年後に再検査して、加齢による骨量変化を比較したところ、初回測定の骨量は男女ともにイギリス人の方が多かったが、骨量の1年当たりの減少率は男女ともにイギリス人の方が大きかった。つまり、イギリス人の骨量は、日本人に比べて、加齢とともに急速に減少したのです。牛乳を飲んでも骨粗鬆症の予防にならないことは、アメリカで行われた大規模疫学調査においても確認されています。そのためアメリカでは、1998年から、「骨粗鬆症の予防に牛乳を」というコマーシャルがメデイアから消えたようです。日本でも2003年から骨粗鬆症に絡めた牛乳の宣伝が行われなくなりました。厚生労働省が酪農業界と乳製品業界に自粛を要請したと考えられます。これらの結果により、「『牛乳は骨を丈夫にする』というのは誤りであり、かえって骨粗鬆症になりやすい」ということが明らかになりました。骨を丈夫にするためにはどうすれば良いのかについて、アメリカの「骨・ミネラル学会」において、1997年、「高タンパク食の骨代謝に与える影響」をめぐってシンポジウムが開催されたのですが、アルバート・アインシュタイン医学校のバーゼル氏(Barzel US)とワシントン大学のマッセイ氏(Massey LK)は、「必要以上にタンパク質を摂ると骨量が減る」ことを強調し、骨粗鬆症の予防のためにはタンパク質摂取を少なくし、野菜や果物(ともにカリウムが多い)を多く摂ることを勧めています。牛乳(乳製品)は有害なのか?牛乳をたくさん摂った場合、腸からの吸収を抑えるといった形でカルシウムの吸収を調整するようになり、カルシウムの排泄が促されます。そこで問題となるのが、カルシウムだけでなく、他のミネラルや栄養素も一緒に排泄されることです。(※海外の研究では、カルシウムを多く摂ると便の中のマグネシウムの排泄量が25%も増加し、吸収も抑制されることが報告されています。)牛乳(乳製品)は胃腸の消化・吸収を妨げることが分かっています。アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学の新谷弘案教授は、胃腸外科の世界的権威ですが、次のように語っています。「予防医学への関心が高いアメリカでは、最近牛乳を敬遠する人が増えています。牛乳が生活習慣病に罹るリスクを伴う食品だということがようやく認識され始めたからです」「アメリカでは、がんのほか潰瘍性大腸炎やクローン病などの難病が増えています。食歴を調べると小さい頃から牛乳をよく飲んでいる患者が実に多い。私はまず牛乳や乳製品を一切やめさせ、玄米、海草、魚、野菜など日本の伝統食に切り替えさせるんです」牛乳を悪者にしていますが、それには乳牛の生育環境も大きく関係しています。畜産で育った乳牛の牛乳には、成長ホルモンや女性ホルモンが含まれており、抗生物質や過酸化脂質も入っています。牛乳が性ホルモン系のがん(前立腺がん、乳がん、卵巣がん)の発症リスクを高めるという研究結果が複数あります。さらに、牛乳に含まれる脂肪は、ほとんどがコレステロールを増やす飽和脂肪酸であり、これが動脈硬化、心臓病、脳卒中などの原因になります。<ただし、日本人の医学者の多くはこれらについて否定しているようです>体質的なことでいえば、西洋人と違い、アジア人は乳糖を分解するラクターゼという分解酵素が、離乳期以降は体内で分泌されないため、うまく吸収できないケースが多いという人種的要因もあります。牛乳と小麦(パン)は、第二次世界大戦後、アメリカの商業戦略によって、体に良いと洗脳され、学校給食や病院食に当然のように出てきます。特に、「牛乳健康神話」は見事なまでに日本人に浸透しています。牛乳(乳製品)を全否定するつもりはありませんが、骨が弱くならないように、牛乳やたんぱく質の摂取はほどほどにしておいた方がいいでしょう。【参考文献、参考資料】 Hegsted DM. Calcium and osteoporosis. Journal of Nutrrition 116: 2316-2319, 1986.Abelow BJ, Holford TR, Insogna KL. Cross-cultural association between dietary animal protein and hip fracture: a hypothesis. Calcified Tissue International 50: 14-18, 1992.Dennison E, Yoshimura N, Hashimoto T, Cooper C. Bone loss in Great Britain and Japan: a comparative longitudinal study. Bone 23:379-82, 1998. Owusu W, Willett WC, Feskanixh D, Ascherio A, Spiegelman D, Colditz GA. Calcium intake and the incidence of forearm and hip fractures among men. Journal of Nutrition 127: 1782-1787, 1997.Feskanich D, Willett WC, Stampfer MJ, Golditz GA. Milk, dietary calcium and bone fractures in women: a 12-year prospective study. American Journal of Public Health 87: 992-997, 1997.Barzel US, Massey LK. Excess dietary protein can adversely affect bone. Journal of Nutrition 128: 1051-1053, 1998.ホリスティック健康学・ホリスティック栄養学研究所「最新の栄養学理論1・・・肉・牛乳・脂肪・油」http://www5f.biglobe.ne.jp/~hni/menu_1/menu_1-theory1.htm#sub_1_theory1_2【動物性食品の肉、牛乳、卵は体にいいのかしら?】【milk sucks 牛乳は体に悪い】牛乳は体に悪いのか―誰も知らなかった「国民食品」牛乳のつくられ方 (別冊宝島 1453)Amazon