村の名士が集まって会食をしているとき、全員が白いナプキンを頭からかぶって料理を食べるシーン。これは、密猟で捕獲された小鳥(ortolan=頭青頬白=ズアオホオジロ=古代より最も美味しい鳥とされていた)を食べるときの暗黙の儀式らしい。ナプキンをかぶるのは、この珍味の香りを楽しむため、そして20gしかない小鳥を食べ散らかしたところを見られないためと言われている。この料理は、ズアオホオジロに無理やり餌を与えて太らせ、ブランデーに漬けてローストするというものらしい。無理やり餌を食べさせると言ったら、フォアグラもそうだ。しかし、こうしたフランスの食通たちの飽くなき欲望が、若い世代に受け継がれるかというとわからない。時代が答えを出してくれるでしょう。
Manger des ortolans=大変おいしいご馳走を食べる、という表現になるそう。
先日は、かねてから観たかった「戦場のピアニスト」を観に行った。舞台は第二次世界大戦下のポーランド。ナチスの強制収容所に送られそうになったユダヤ人ピアニストが、ナチスの手先になってしまった知り合いにそっと助け出されたのは良かったが、それから地獄のような逃亡の日々が始まる。実在のピアニスト(ウワディスワフ・シュピルマン)の実話。
戦火を逃れ、破壊された家から食料を探し出し、大きな缶詰を持って逃げ回るのだ。屋根裏部屋に隠れていた時ドイツ将校に見つけられ、お前はピアノが弾けるのか?ということになり、その将校の目の前で演奏を始める。それがなんと、ショパンのBallade g-moll Opus23!(死ぬまでには弾いてみたい!)圧巻の演奏を前に、その将校はどうしたか?(これまたイケメンの将校さんで、この場にどうしてピアノがあるの?とか考えないで、単純に)クライマックスは最高で実に感動的。ピアノの旋律が本当に美しく、そして力強くて涙。
しかし、隔離されたゲットーに住むポーランド人が、わけもなく殺されたり、列から任意に選ばれていきなり銃殺されたりと目を覆いたくなるシーンもあることも書き添えておきます。
3月には、パティシエが主人公の映画「パリ・ブレスト」が公開される。告知用の推薦文を書かせていただきました。こちらも乞うご期待!