タルト・ヴォードワーズ秘話 | 大森 由紀子のブログ

大森 由紀子のブログ

フランス菓子・料理研究家、大森由紀子が日常の美味しいを綴るブログです。

タルト・ヴォードワーズ秘話。このお菓子は、フランスとの国境となるレマン湖をはさんだスイスのヴォ―州の伝統菓子です。初めて食べたのは30年前。当時3つ星で全世界のグルメが憧れたローザンヌ近郊にあったレストラン「ジラルデ」に、たまたま近くを通りかかったので、電話したら一人ならいいよ、と言われ(当時は恥も外聞もなく、一人で地方の3ツ星や2つ星もチャンスがあれば訪れていたのでした。でも、一人だとお店の人が不思議がってくれて色々お世話してくれるんです。厨房案内してくれたりね)、デザートで出てきたのがこれ。あまりの素朴さにびっくりしましたが、濃厚な焼きクリームの美味しさと生地の食感がパリにはないものでした。その後帰国し、Nakazawaさんとお仕事をしていく中、ノルマンディーなどで見かけるスプーンも立つような固いクリームを開発したとのことで、そのネーミングをお願いされ、それを利用したお菓子を考案することに。私はそのクリームをクレーム・ラフィネと名付け、これであのタルト・ヴォードワーズを再現してみたのです。すると見事、あの時の味と感動がよみがえってきました。このお菓子は、「マッシュルーム」開店以来、唯一私のお菓子のレシピで採用されたレシピです~(笑)。あ、縁のヒラヒラしたパータフィロの飾りは、私のオリジナル。「ジラルデ」は、三國シェフや深津シェフが修行したお店でも有名ですね。