もうひとつ収められている
《クリスマス・オラトリオ》が
1973年にリリースされた
こちらの盤です。
(Eloquence: 484 4722 の内
484 4740、484 4741 &
484 5426、2023.3.28)
元盤のレーベルは
ジャケの右肩の
マークでも分かる通り
フィリップスで
したがってユニバーサルが
ライセンスを持っています。
録音は1972年10月9〜15日で
オイゲン・ヨッフム指揮
バイエルン放送交響楽団と
バイエルン放送合唱団
(合唱指揮ヨーゼフ・シュミットフーバー)
さらには、テルツ少年合唱団
(合唱指揮ゲルハルト・シュミット=ガーデン)
も加わっての演奏です。
ソリストはアメリングの他
ブリギッテ・ファスベンダー(A)
ホルスト・ラウベンタール(T)
ヘルマン・プライ(B)という面々。
こちらは
ヴェンツィンガー盤とは異なり
器楽のソリストおよび
通奏低音奏者の名前も
ライナーの小冊子に載ってますが
馴染みのない名前ばかりなので
(少なくとも自分にとってはそう)
申し訳ありませんが省略します。
2部ずつで3枚組ですから
各部がかなり重厚長大であると
想像されましたが
その想像が外れることなく
テンポの遅さには
つくづく参りました。
テンポが遅いから
アメリングのソプラノ独唱も
今ひとつの感じですが
それでいて
第4部のテノールの独唱は
そこそこ違和感なく聴けます。
第4部のテノールのアリアが
テンポに左右されない
良い曲だということですかね。
テルツ少年合唱団が
第1部の第7曲目
ソプラノ・パートがコラールを歌い
バスがそのフレーズを解説する
というところで歌っているのは
はっきり分かりましたけど
他の部分のどこで
どう参加しているのか
今ひとつはっきりしません。
冒頭合唱と最終合唱のみ
バイエルン放送合唱団と共に
歌っているような気がしましたが
それは当方の空耳かもしれず。
第4部の
ソプラノとバスの二重唱や
エコーを伴うソプラノ・アリアで
二重唱のソプラノ・パートおよび
ソプラノ・アリアのエコーを
担当しているのかと思いきや
そうでもなさそう。
もっとも
エコーを伴う
ソプラノ・アリアでは
エコーがよく聞こえず
それは当方が使っている
再生機の問題かもしれませんが
ボーイ・ソプラノかどうか
判断がつかないのですけれど。
以下、タイトルの内容に入ります。
《クリスマス・オラトリオ》第5部
〈栄光あれと、神よ、汝に歌わん〉は
新年後の最初の日曜日用として
(1月2〜5日の間に限られるそうですが)
1735年1月2日に初演されました。
イエスが生まれた頃
東方から三人の博士が
イスラエルにやってきます。
〈星〉に導かれて
ユダヤの王として生まれた方に
会いにきたという話を聞き
時の支配者ヘロデ王と
イスラエルの人々は不安に陥る
というマタイによる福音書の
第2章の記述に基づく内容を
曲にしたものです。
上に掲げた
ヨッフム盤のジャケットは
三博士がイエスにまみえた場面を
描いた絵画から採られてますけど
第5部の時点ではまだ会ってません、
念のため。
第3曲目(全体では45曲目)の合唱の途中
アルトによるレチタティーヴォが入る
という変則的なものもありますが
ほぼ合唱とコラール合唱で構成されており
第5曲目(第47曲目)のバスのアリアと
第9曲目(第51曲目)の
ソプラノ、アルト、テノールによる三重唱が
アリアの全てになります。
冒頭合唱(43曲目)は
何らかの曲からの転用という説と
オリジナルという説の
二つに分かれているのだとか。
合唱とアルトが絡む第3曲目は
消失した《マルコ受難曲》
BWV247からの転用
とされています。
逆にいえばこの第3曲を元に
《マルコ受難曲》の一部が
再構築できるわけですね。
バスのアリアは世俗カンタータ
《おのが幸を讃えよ、祝されしザクセン》
BWV215からの転用で
三重唱も失われた曲からの
転用とされています。
消失した曲なのに
そこから転用された
というふうにいえる理由は
よく分かりませんけど
バッハ学の成果なんでしょう。
というわけで
動画をあげることにしますが
今回もルドルフ・ルッツ指揮
スイス・バッハ財団のものとなります。
例によって以下に
アドレスもアップしておきます。
2019年1月18日に収録されたもので
ソプラノのマリー・ルイーゼ・ヴェルネブルクは
以前、ルーシー・シャルタンが歌う
《マタイ受難曲》のアリア
〈愛ゆえに〉の動画を紹介した際
同曲を歌うヴェルネブルクの動画も
アドレスだけですが
あげたことがあります。
その時は
オランダ・バッハ協会との
共演でした。
テノール(福音史家)は
お馴染みのダニエル・ヨハンセンで
アルトはマーゴット・オイツィンガー
バスはマティアス・ヘルムです。
Bach Cantatas Website で
マティアス・ヘルムの経歴を見たら
オランダ・バッハ協会版の
歌っていたようですけど
まったく覚えてなかったという。(^^;ゞ
マーゴット・オイツィンガーは
同じくスイス・バッハ財団の方の
第2部でも歌っていて
声質が好みだと書いた人ですが
今回もなかなかよろしい。
三重唱アリアで
ソプラノとテノールの背後に
アルトが立っているのは
救世主が治める日はいつ来るのか
とソプラノとテノールが歌うのに対し
「問うのをやめて黙[もだ]せ、
彼はいま現にここにいます!」(杉山好訳)
と諌めるような歌詞をうたうからです。
『バッハ事典』(東京書籍、1996)には
「小さな祝日に供されたためか、
軽い編成で書かれており
(管は2本のオーボエ・ダモーレのみ)」
と書かれていますが
映像を見ると
それがよく分かります。
合唱は20人ほどで
ヨッフム盤を聴いた後だと
ホッとさせられるのでした。