エスタンピ『緑の森の木陰で』

(香 NAXOS: 8.553442、1998.2)

 

手元にある

ロビン・フッドがらみのCDの

3枚のうちの1枚です。

 

録音は1995年4月18〜20日で

演奏は

グラハム・デリック主宰

エスタンピという

イギリスのユニットです。

 

エスタンピ Estampie というのは

足を踏み鳴らすという意味の

estamper に由来するともいわれる

中世ヨーロッパのダンスないし

楽曲の形式を指す言葉で

それをそのまま

ユニット名にしたわけですね。

 

 

こちらは

どこだったか忘れましたが

新譜で出ていたのを

購入したものです。

 

その時は

〈グリーンスリーブス〉が

器楽のみの演奏と歌付きの演奏の

2種類収録されているのに

惹かれたのだと記憶しています。

 

当時、NAXOSといえば

廉価盤の代表レーベルで

1枚1000円しなかったこともあり

お目当てが1曲くらいでも

気軽に購入してたものでした。

 

 

今回、ロビン・フッドがらみの

曲のことを考えているうちに

なんとなく思いあたって

CDを引っ張り出してみたら

以下に記す曲が収録されており

あまりに多くて驚いた次第。

 

「ある朝ロバンは」

「ロビン・フッド」

「ああ、やさしいロビン」

「ロビン・フッドの結婚式」

「ロビン・フッドと短衣の修道士」

「ロビン・フッドと皮なめし工」

「ロビン・フッドとメイド・マリアン」

 

「ああ、やさしいロビン」以外は

いずれも作曲者不詳の楽曲です。

 

「ああ、やさしいロビン」は

ヘンリー7世(1457〜1509)に仕えた

ウィリアム・コーニッシュによるもの

とのことなので、15〜16世紀の作品。

 

「ロビン・フッドとメイド・マリアン」は

17世紀の曲集 The Dancing Master

収められているそうです。

 

採譜・出版されたのはそうでも

作られたのはそれよりも前

と考えられるわけですけど。

 

 

実際にロビン・フッドが

バラッドなどで歌われた頃の旋律は

現代には伝わっておらず

16世紀になって作られた曲になると

有名すぎてなのか

誰も歌詞を書き留めなかったらしく

現代では曲(旋律)だけが残っている

ということもあるようです。

 

そこで

演奏ユニットのエスタンピは

5月祭などで歌われたものを

その時代時代の作曲家が

同時代の観客の嗜好に合わせて

形を変えてきたのに倣い

今回の演奏に臨んだのだとか。

 

ちなみにライナーには

フランスの伝統的な牧歌から

ロビンはマリアンを手に入れた

と説明されており

以前ご案内の岩波新書

『ロビン・フッド物語』

紹介されていた説が

踏襲されていることが分かります。

 

 

ただ、本盤のライナーには

歌詞付きの曲が収録されているのに

歌詞の類はいっさい載ってません。

 

ですから

ロビン・フッドがらみの曲で

歌詞が付きの曲の詞の内容が

具体的にどういうものか

いっさい分からないという

(少なくとも自分の耳では聴き取れない)

それだけはちょっと困りものの

1枚なのでした。

 

 

本盤には他に

皆川達夫が

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』で

取り上げている

〈パレスティナの歌〉も

収録されており

以前ご案内のマンロウ盤との

聴き比べも可能です。

 

十字軍時代のものでは他に

リチャード1世が虜囚の憂き目を歌った

〈囚われ人は決して己が証を語らないだろう〉

Je nuts home pris も収録されてます。

 

歌詞がフランス語なのは

リチャード1世が

英語を学ぶ機会がなかったからだと

ライナーに書いてありました。

 

そうだったのかと驚いて

Wikipedia を見てみると

ちゃんと書いてあるという。(^^ゞ

 

そうなると

映画《ロビンとマリアン》での

描かれ方はどうだったか

気になるところですが

映画ではやっぱり普通に

英語を話してるのかしらね(笑)

 

 

本番での使用楽器は以下の通り。

 

【弦楽器】

バス・ヴィオール

ルネサンス・ギター

シターン、レベック

中世フィドル

ルネサンス・ヴァイオリン

 

【管楽器】

ショーム(オーボエのご先祖)

リコーダー、バグパイプ、パイプ

ドゥルシアン(ライナーでは curtal)

ソプラニーノ(小型のリコーダー)

シュリャリ schryari

 

【打楽器】

テイバー tabor

 

シュリャリはライナーだと

soprano schnitzer schreierpfeifen

と書いてあるんですけど

schreierpfeifen はドイツ語で

スクリーミング・ホイッスルを指す

というふうに

英語版 Wikipedia に書かれてあって

図版も載っており

それによって管楽器に入れました。

 

schnitzer は

木製という意味のようです。

 

その他、パーカッション

としか書かれてないんですけど

トライアングルや鈴なども

使われているように思います。

 

 

上にも書いた通り

グリーンスリーブスの

オリジナルはどんなものか

と思って買ったものでしたが

ひょんなことから

ロビン・フッドがらみで

聴き直すことになったという。

 

なんでも買っておくと

いつかは役に立つ

という証左のようなものだ

とかいうのはダメ? ( ̄▽ ̄)