ロビン・フッドが活躍した

とされている頃の楽曲を集めたCDを

持っていることを思い出したので

そのうちの1枚をご案内。

 

マンロウ指揮『十字軍の音楽』再発盤

(ユニバーサル ミュージック

 UCCD-3257、2004.2.25)

 

録音は1970年で

翌年、イギリスのレーベル

デッカからリリースされました。

 

 

デイヴィッド・マンロウは

中世・ルネサンス音楽の演奏で有名な

イギリスの古楽演奏の

草分け的存在ともいえる

管楽器奏者です。

 

彼以前にも

アーノルド・ドルメッチという人が

いましたけど、録音は少なく

数多くの録音を残し

中世・ルネサンス音楽の魅力を

一般に広めたという意味では

マンロウの方が重要でしょう。

 

 

マンロウは、皆川達夫の

『ルネサンス・バロック音楽100』(1992)でも

しばしば言及されていました。

 

本盤についても

トルヴェールやミンネゼンガーの歌う

世俗歌謡を取り上げたページで

紹介されており(pp.22-23)

皆川の本が出た時には

まだCD化されていなかったため

キングから出ていたLP盤の規格番号が

記載されています。

 

 

ちなみに皆川は

「CDになっていないのが残念です」

と書いてますけど

本が出たのと同じ年の8月に

国内盤のCDがリリースされました。

(本が出たのは2月)

 

今回のディスクは

その後に再リリースされたものですが

ただし自分の場合

例によって中古で見つけました。

 

1992年にリリースされた盤も

中古で買っていたような気がしますが

記憶が定かではないこともあり

えいやっと買ったものです。

 

 

上記のトルヴェールというのは

北フランスでの名称で

南フランスではトルバドゥールといい

ミンネゼンガーはドイツでの名称。

 

いずれも

騎士や貴族階級出身の

アマチュア歌人を指します。

 

本盤には

十字軍遠征に参加した

騎士や貴族の歌い手による

遠征をテーマにした作品が

収められているわけですけど

興味深いのは使用楽器です。

 

今日では

中世・ルネサンスの曲を

演奏するとき以外に

使用されることのない楽器が

ふんだんに使われてるんですね。

 

 

というわけで

映画《ロビンとマリアン》

使われている楽器も

おそらくは演奏されているだろう

と思い、聴き直してみました。

 

とはいえ

ライナーに楽器の説明があっても

写真がないために

聴いただけでは判断がつかず

使われている楽器名を検索して

どのような楽器なのか、その形を

調べざるをえませんでしたけど。

 

 

映画《ロビンとマリアン》の

王の居城で使われている楽器は

二つの管を口元で同時に加え

指穴で音程を調節する

金属製と思われる楽器でした。

 

映画では金属製ですが

当時のことですから

実際は木製だったと思われます。

 

二つの管を同時に加えることと

音色がバグパイプに似ている

というのがヒントとなって

古代ギリシアで使われていた

アウロス aulos と呼ばれる楽器で

マンロウ盤ではカラムス calamus

といわれている楽器が

それだろうと思われた次第。

 

Wikipedia の説明では

古代ギリシアの楽器としての説明が

メインですけど

以下のページに

YouTube にアップされている

復元楽器の演奏が貼られています。

 

 

映画の楽器とは

かなり印象が異なりますけど

音色はかなり近い。

 

映画が公開された

1970年代半ばと今日とで

楽器研究のレベルも異なりますから

70年代のアウロス(カラムス)が

映画のようなものであることは

充分ありうることです。

 

映画の場合

音の大きさも要求されますから

金管で復元されたとしても

不思議ではありません。

(実際のところは分かりませんけどw)

 

というわけで

映画《ロビンとマリアン》の冒頭

王の居城で演奏されていた楽器は

アウロス(カラムス)である

という説に1票

といったところです。

 

 

マンロウの『十字軍の音楽』には

獅子心王リチャードが書いた

フランス語の詩に基づく曲や

獅子心王の死を悼んだ曲が

収められています。

 

バッハ以降の

いわゆるクラシックに慣れた耳には

素朴な曲ばかりですが

素朴なりに味わいがあり

トラッドやフォークソング好きなら

一聴の価値はある一枚です。

 

もしかしたら

本盤での演奏が

映画の方に

影響を与えてるのかもしれず。

 

そう考えて聴いてみても

愉しめたりするかもしれません。

 

 

なお、YouTube に

本盤の全曲(約50分ほど)が

アップされていたので

以下に貼り付けておきます。