先に

『「琴」ヴィヴァルディ《四季》』の

CDについて書いたとき

《四季》の編成は録音された時代や

演奏団体によって異なる

といいました。

 

そのときに紹介した

日本で最も馴染み深いと思われる

イ・ムジチ合奏団の編成は

ヴァイオリン6、ヴィオラ2

チェロ2、コントラバス1

チェンバロ1で

これは室内楽的な編成に

あたると思います。

 

最近の研究だと

ヴィヴァルディが

《四季》を作曲したのは

ヴェネツィアにおいてではなく

マントヴァの宮廷楽長として

働いていた頃(1718~20年)だそうで

当時マントヴァの宮廷にいた

ヴァイオリン奏者数名で

演奏されたもの

とされているようです。

 

だから、

独奏楽器とオーケストラという

バロックの合奏協奏曲とは

違うスタイルになったし

少数精鋭による室内楽スタイルだった

と想像されるというわけで

1パート(声部)1人という編成が

もしかしたらオーセンティックかもしれない

ということにもなるわけです。

 

1パート1人といっても

通奏低音は複数の楽器が

担うことになりますけれど。

 

 

そういう1パート1人の演奏としては

以前、当ブログでも紹介した

ジャニーヌ・ヤンセンが

ソロを務めた盤があります。

(2004年リリース)

 

ちなみに、その時の記事では

「室内楽的な小編成の古楽器演奏」

と書いてますけど

ヤンセン盤は古楽器演奏ではないので

遅ればせながら訂正しておきます。

 

では古楽器による小編成盤が

ないのかといえば

もちろんあるわけで

それがこちら。

 

ベイエのヴィヴァルディ《四季》Alpha盤

(仏 Alpha Classics: Alpha 312、2018.6.5)

 

リリース年月日は

タワーレコード・オンラインに

拠りました(以下も同じ)。

 

上掲写真の日本流通盤は

2016年5月に

マーキュリーからリリース。

 

録音は2008年1月14~18日で

ヤンセン盤より4年ほど後になるのはともかく

リリース年と10年も離れているのは

Zig-Zag Territoires というレーベルから

2008年10月にリリースされたもの

仕様変更盤だからのようですね。

(同盤の日本流通盤は2011年2月リリース)

 

 

演奏は

ソロがアマンディーヌ・ベイエール

(原綴は Beyer なので

最近は「ベイエ」と表記されます)

アンサンブルがグリ・インコーニティ。

 

原綴が Gli Incogniti なのに

「リ・インコーニティ」

と表記される理由は

よく分かりません。

(単なる誤植?)

 

 

編成は

ソロ・ヴァイオリンに

第1ヴァイオリンと

第2ヴァイオリンが加わって

ヴァイオリン3

ヴィオラ1、チェロ1

ヴィオローネ(コントラバス)1

テオルボ1

チェンバロ(およびオルガン)1

という編成で

ヤンセン盤も同じ編成でした。

 

テオルボは

洋梨を半分に割ったようなボディを持つ

大きいギターのような形状の

リュート属の楽器で

そのテオルボとヴィオローネ、

チェンバロ(あるいはオルガン)が

通奏低音パートを担当します。

 

チェンバロおよびオルガンは

楽章によって、あるいは季節によって

使い分けているんだと思いますけど

CDで聴くだけだと

自分の耳ではよく分かりません。( ̄▽ ̄)

(ヤンセン盤だと〈夏〉の第1楽章は

明らかにオルガンのようですが……)

 

 

映像で観られれば分かりやすいのに

とか思っていたら

以前、ペルゴレージ作曲

《スターバト・マーテル》を

極小編成で演奏したものとして

ご紹介したことのある

ヴォイセズ・オブ・ミュージックの

ヴィヴァルディ《四季》の演奏が

YouTube にアップされていました。


ここではテオルボではなく

アーチリュートですが

両者はよく似ていますし

したがってテオルボの形状も

想像できないわけでもないるので

以下に貼り付けておきます。

 

 

英語の字幕は

出版された際

各楽章の頭に付いていた

おそらくヴィヴァルディの作詩

と目されているソネットの

英訳文です。

 

この演奏で不思議なのは

チェンバロとオルガンが

向き合って置かれていて

同時に演奏しているようにも

見えなくはないこと。

 

あと、季節によって

弦の編成を微妙に変えたり

(春と秋はヴァイオリン6、ヴィオラ2)

 夏と冬はヴァイオリン5、ヴィオラ1)

ソロの奏者を変えたりしてますね。

 

 

ソロ・ヴァイオリンの

トンがっていながらも

表情豊かな演奏と

〈春〉の演奏では

リピエーノ内の第1、第2ヴァイオリン

(とでもいうんでしょうか)

との掛け合いが

観どころ聴きどころ

といえるかもしれません。

 

イ・ムジチ合奏団の演奏と比べれば

ヴィヴァルディの演奏解釈が

ここ七、八十年ほどで

いかに変わったかということを

よく示している演奏だと思います。