《スターバト・マーテル》は
よく参照する皆川達夫の
推奨盤として取り上げられています。
もっともイチ押しではなく
四つ挙げられている盤の
四番目なんですけどね。
その薦めに従って
同書を読んだ当時、聴いたとしても
ヤーコプス盤の記事でも書いた通り
今の自分くらいハマることは
なかったかもしれません。
もっとも
同書の初版が出た1992年には
すでに廃盤扱いになってますから
当時は聴こうと思ったところで
聴けなかったでしょうけど。
(前回ご案内の盤は、その後
再リリースされたものです)
『ルネサンス・バロック名曲名盤100』には
「古楽の様式をふまえた演奏」が
もうひとつ紹介されており
それが今回ご紹介の
クリストファー・ホグウッド指揮
エンシェント室内管弦楽団の盤なのでした。
(ポリグラム POCL-5234、1996.10.2)
上にあげたものは
〈オワゾリール NEW ベスト50〉
というシリーズものの1枚として
再リリースされた盤ですね。
ソプラノはエマ・カークビー、
カウンターテナーが
ジェイムズ・ボウマンという
ホグウッド盤ではお馴染みの2人。
カークビーが歌うんだから
良くないわけがない
というわけでして。
器楽の編成は
どこにも書かれてないんですけど
(再リリース盤あるあるかもw)
おそらく
同じだと思われます。
音が艶やかで
よく響いてますし
メリハリがしっかりしており
軽快にして美しい。
これを聴いたことが
《スターバト・マーテル》を見直す
きっかけになったのでは
なかったかしらん。
《スターバト・マーテル》の他に
《サルヴェ・レジナ》ハ短調の
ソプラノ独唱バージョンを併録。
歌うのはもちろん
カークビーで
清冽な歌声が沁み入ります。
最近では、このように
ペルゴレージの別の宗教曲と
カップリングにするというのが
当たり前になってますけど
当時としては珍しい。
《スターバト・マーテル》だけか
そうでなければ
例えばヴィヴァルディなど
他の音楽家の宗教曲とのカップリング
というのが一般的だったと思います。
ヤーコプス盤は併録曲がないので
その意味ではホグウッド盤は
お得かもしれませんね。
ちなみに
〈サルヴェ・レジナ〉は
古くは「元后」と訳され
本盤のライナーに載っている
今谷和徳の訳だと
「めでたし女王」となってます。
女王 regina とありますが
世俗の女王ではなく
聖母マリアを讃える聖歌です。
salve というのは
「めでたし」という意味はなく
挨拶の言葉だそうで
手元にある志田英泉子編著
『ラテン語宗教音楽キーワード事典』
(春秋社、2013.7.25)
こんなのいつ買ったんだろう
を繙いてみると
「ごきげんよう、女王」
と訳されていて、びっくり。
宗教的なニュアンスを
崩さずに直訳するのは
難しそうな言葉ですね。