以前、ミッシェル・ルブランの

『殺人四重奏』(1956)を紹介した際

妻が不倫している夫に

別れを告げる前にかけているのが

ヴィヴァルディのチェロ協奏曲

ホ短調だというシーンがある

と書きました。

 

ヴィヴァルディには確かに

ホ短調のチェロ協奏曲はありますけど

小説中でかかっているのは

チェロと通奏低音のためのソナタを

協奏曲として編曲したものであり

小説が発表された時期からして

ピエール・フルニエが

カール・ミュンヒンガー指揮の

シュトゥットガルト室内管弦楽団と

共演したレコードではないか

とも書いておきました。

 

 

そのフルニエと

ミュンヒンガーによる演奏が

収録されたCDが、こちら↓

 

フルニエ『ヴィヴァルディほか:チェロ協奏曲集』

(英 Testament: SBT-1359、2004)

 

ディスクユニオンの新宿店が

Amazon に出品してたのを見つけて

注文したものです。

 

 

録音は1952年で

その翌年、イギリスのデッカから

リリースされました。

 

ライナーによれば

最初、デッカの10インチLP盤で

本CDにも収録されている

クープランとのカップリングで出て

その後、両曲が

やはり本CD収録の

ボッケリーニとともに

12インチLP盤で出されたようです。

 

その12インチ盤のリリース年が

1953年ということになりそうで

10インチ盤も同年なのかどうかは

ちょっと判断がつきませんでした。

 

なお、10インチ盤というのは

一般的なLPよりも少し小さい盤で

たまに中古で見かけますが

日本でも出ていました。

 

 

収録されているのは

チェロと通奏低音のためのソナタ

第5番 ホ短調 RV40を

フランスの作曲家

ヴァンサン・ダンディ

編曲したものですけど

Wikipedia のダンディの項目を見ると

教え子に日本人作曲家が何人かいて

ちょっとびっくり。

 

フルニエは1960年代に

同じダンディ編曲版を

ルドルフ・バウムガルトナー指揮

ルツェルン音楽祭弦楽合奏団とも

録音しています。

 

「クラシック音楽へのおさそい

〜Blue Sky Label〜」というサイトに

音源をMP3化したものが

公開されていますので

曲の雰囲気を知りたい方は

そちらが便利です。

 

 

ヴィヴァルディのオリジナル曲は

最近の演奏であれば

ジャン=ギアン・ケラスのものが

評判が良いようです。

 

ケラス『ヴィヴァルディ:6つのチェロ・ソナタ』(タスキ付)

(キングインターナショナル

 KKC-5944、2018.10.20)

 

本体は筒型のハコ入り仕様。

 

ケラス『ヴィヴァルディ:6つのチェロ・ソナタ』(ケース別)

 

原盤は

ハルモニア・ムンディ・フランスで

本国では2018年8月24日に

リリースされました。

 

(上記リリース年月日は

 いずれもタワーレコードオンラインに

 拠るものです)

 

何で知って買ったものか

ちょっと記憶が曖昧ですけど

タワレコオンラインの

新譜案内だったかも。

 

 

ケラス盤は

曲や楽章によって

通奏低音楽器を変えており

それが単調さを回避させています。

 

ヴィヴァルディのカンタータでも

インヴェルニッツィと
アンサンブル・アルタセルセ盤などで

通奏低音の編成を

曲によって変えていたことが

思い出されますけど

それが最近の(1990年代以降の?)

傾向なんでしょうか。

 

 

ちなみに第5番 ホ短調は

チェンバロ、テオルボ、チェロが

通奏低音を担当。

 

ソロ楽器がチェロなのに

さらに通奏低音でもチェロが鳴ると

変な感じがするというか

チェロの二重奏曲みたいですね。

 

以前、当ブログでご案内の

アンナー・ビルスマと
鈴木秀美による演奏

チェロ二重奏的でした。

 

CDがすぐに出てこないので

比較して云々することは

今はできませんけど

ケラス盤を買うとき

ビルスマ盤のことを

すっかり忘れていたという。(^^;

 

ちなみにケラスは

ビルスマに会って話を聞き

ビルスマの書き込みのある

楽譜をもらったりしているようです。

 

 

さて、協奏曲版とオリジナル版と

どちらがいいかといえば

もちろん

オリジナル版に軍配が上がります。

 

オリジナル版の

第2楽章のアレグロは

例によってエモいですけど

人によっては「騒々しい」と

感じられるタイプの演奏かも。

 

でも、イタリア系の演奏に耳が慣れると

これぞヴィヴァルディ

という感じがするんですよね。

 

 

『殺人四重奏』の劇中で流れるなら

それこそ「おっとり」した感じの

フルニエ盤がぴったりかも

とは思いますけれど。

 

緩徐楽章はひたすら美しいですし

第2楽章のアレグロも

荒々しさが抜けた

優美な旋律になっています。

 

(第2楽章のアレグロでは

 途中、キーを変えるところがあって

 ちょっと変わってるといえば

 変わっている気もしますが)

 

フルニエの弾く

第4楽章のアレグロは

跳ねるようなリズムが

軽快で印象的なこともあり

好みなんですけど

『殺人四重奏』で流すなら

ブラームスちっくな印象も受ける

第1楽章のラルゴあたりでしょうか。

 

ハマり過ぎのような気も。( ̄▽ ̄)

 

 

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