アルトのためのカンタータを
全曲聴くために必要なディスクを紹介して
カンタータ・シリーズを終えるつもりでしたが
すごいディスクを聴いちゃったので
あと1枚、紹介しておきます。
現在、カウンターテナーとして
まず指を屈せられるのは
おそらく、フランスの
フィリップ・ジャルスキーでしょう。
そのジャルスキーが歌い、彼が率いる
アンサンブル・アルタセルセが演奏した
『ヴィルトゥオーソ・カンタータ集』は
アルトと通奏低音のためのカンタータを聴く場合
無視できない1枚だと思います。
Vivaldi: Virtuoso Cantatas.
(EMI Records Ltd/Virgin Classics:
7243 5 45721 2 8、2005)
【演奏】フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
アンサンブル・アルタセルセ
ジェレミー・パパセルジオ(バスーン)
エミリア・グリオッツィ(チェロ)
クレア・アントニーニ(テオルボ、リュート)
中村葉子(チェンバロ、オルガン)
【録音】2004年10月26〜30日
アルトと通奏低音のためのカンタータ全曲
(RV670、671、674、676、677)と
オペラ『怒れるオルランド』および
『ティート・マンリオ』から
アリアを各1曲ずつ収録している他
器楽曲として
チェロと通奏低音のためのソナタ 変ロ長調
RV47 の全4楽章、および
2挺のヴァイオリンのためのソナタ イ長調
RV75 のプレリュードを
テオルボのソロ用にアレンジして収録。
使用楽器は上記の通りですが
インヴェルニッツィ盤と同じく
(ということはコンセルト・ヴァーゴ方式に)
楽曲によって、また楽章によって
編成を変えるスタイルの演奏で
これが聴いていて実に面白い。
(残念ながら、ライナーには
楽章ごとにどういう組み合わせで演奏したか
記されていませんけど)
本盤に収録されているカンタータは
すべてレイギン盤で聴けるものですが
演奏は本盤の方が明らかに優れています。
歌いっぷりは
全体的にオペラちっくですが
それがいい方向に働いている気がされ
そこらへんも
インヴェルニッツィ盤を
髣髴させるものがありますね。
本盤を聴くと
ヴィヴァルディの演奏が
世紀をまたいで、いかに変ってきたか
ということを実感させられます。
少なくとも
レイギンの頃(1990年代後半)は
ここまで自由に
通奏低音楽器の組み合わせを
とっかえひっかえするなんて
想像すらされなかったはず。
器楽曲のチェロ・ソナタですら
第1、3、4楽章はオルガン
第2楽章はチェンバロと
使い分けられていて
これにはびっくりでした。
カンタータの聴きものは
RV677 と RV676 でしょうか。
RV677 の第1アリアの哀感
第2アリアの情熱的で
スパニッシュな雰囲気。
RV676 の第1アリアでは
Aメロのバスーンによる
ピョンコ節っぽいメロディーが印象的。
その「のどか」な感じから一転して
Bメロではチェロが速いパッセージを奏で
情熱的になったかと思うと
再びAメロでのどかになるという
緩急の差にシビレます。
RV676 の第2アリアでは
疾走感あふれる
コロラトゥーラ風のパッセージが
聴きものといえそうです。
また『ティート・マンリオ』からのアリアは
チェロの細かく譜割りされた
速いパッセージが印象的で
伴奏だけ聴いていると
まるでチェロ・ソナタのようにも
聴こえてきます。
というわけで
アルトと通奏低音のためのソナタは
レイギン盤ではなく
ジャルスキー盤がおススメです。
レイギン盤は
もはや入手難でしょうから
その意味でもジャルスキー盤がおススメ。
ヴィヴァルディのカンタータは
日本ではあまり需要がないのか
本盤の日本流通仕様盤は出てないようです。
そんなわけで
輸入盤ということもあってか
中古でとても安く入手できました。
(送料の方が高いという
Amazon あるある、な感じ)
その意味でもおススメといえるかも。( ̄▽ ̄)