ヴィヴァルディが書いた

ソプラノのためのカンタータは

モード・アンティコ盤

モニハン盤、そして

インヴェルニッツィ盤を揃えることで

すべて聴くことができます。

 

ヴィヴァルディが

ソプラノのためのカンタータの他に

アルトのためのカンタータを

9曲ほど書いていることは

以前にも書いた通り。

 

自分の管見に入った限りでいうと

アルトのためのカンタータを

すべて聴くためには

曲数が少ないにも拘わらず

CDだと3枚買う必要があります。

 

その内の1枚が

以前にもちょっと振れたことのある

黒人のカウンターテナー

デレク・リー・レイギンの

『室内カンタータ集』です。

 

Cantate da Camera

レイギン『ヴィヴァルディ:室内カンタータ集』

(蘭 Etcetera Records: KTC-1069、1989.1)

【収録】RV670、674、667、671、676、677

【録音】1988年?

 

通奏低音はチェロとチェンバロのみで

アルトと通奏低音のためのソナタは

ここに録音されている5曲で全部になります。

 

レオンハルトと共にチェンバロを学んだ

(とライナーに書かれている)

チェンバロのクリス・ファーが使っているのは

1700年頃のミュートケのコピー。

 

そのチェンバロの作成者らしい

T・A・ディール T. A. Diehl が

本盤のプロデューサーでもあると

ケース裏のデータから分かって

ちょっと面白かったり。

 

 

以前にも書いた通り

《天に紅の光立ち》RV667 は

ソプラノのためのカンタータですが

音域の幅の広さ(低音部の低さ)から

カストラート用に書かれたものではないか

という説があります。

 

これまで紹介した盤には

ソプラノ歌手の歌ったものが

収められていたわけですけど

どうも今ひとつ。

 

と思っていたところ

まずまずバランス良く聴けるかな

と思われたものが

レイギンの歌唱でした。

 

カウンターテナー自体が

男性の裏声ですから

むしろ高音部が無理なわけですけど

インヴェルニッツィのように

絶叫調を免れているのがベターかと。

 

もちろん、レイギンとても

これが理想的な歌唱かといわれれば

今ひとつなんですけどね。

 

 

本盤をリリースしてから5年後

映画『カストラート』(1994)で

カストラートの声を再現するために

協力したというキャリアの持ち主である

レイギンですら今ひとつなわけですから

カストラートと呼ばれる当時の歌手が

ほんとうに高音部から低音部への移行を

無理なく自然に響かせていたのだとすれば

確かに大したものだと思います。

 

もっとも

何を「無理なく自然な響き」とするかは

時代によって違うでしょうから

判断が難しいというか

今ではほぼ分からないというのが

正確なところでしょうけど。

 

 

演奏は可もなく不可もなく

といった感じがしますけど

《このような見知らぬ小道へ》RV677 の

第2アリアが聴きものかも知れません。

 

通奏低音の疾走感が

印象的だったりするんですけどね。

 
 
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