ヴィヴァルディのカンタータを
最も多く録音しているのは
管見に入った限りで判断すると
フェデリコ・マリア・サルデッリ指揮
モード・アンティコによるものではないか
と思います。
ヴィヴァルディの作品を整理した
リオム番号では
RV649から686までが
カンタータに当てられています。
その内に
偽作が3曲含まれており
その3曲と
第1アリアのみが異なる他は
歌詞も音楽も同じ1曲を除けば
全部で35曲。
それに
1990年代に発見された2曲
(RV796、799)を加えると
全37曲(ソプラノ28曲、アルト9曲)
となります。
モード・アンティコは
その内の24曲を録音して
4枚のCDをリリースしていますが
それが以下の4枚です。
(全てソプラノ独唱曲)
Le Cantate / Parte prima
(伊 Tactus: TC-672207、1997/2002. 3rd ed.)
【ソリスト】ロッサーナ・ベルティーニ
【録音】1997年3月
【収録】RV651、654、652、661、668、664
Le Cantate / Parte seconda
(伊 Tactus: TC-672208、1997)
【ソリスト】エレナ・チェッキ・フェンディ
【録音】1997年8月
【収録】RV669、655、657、658、659、660
Le Cantate / Parte terza
(伊 Tactus: TC-672209、1999/2000. 2nd ed.)
【ソリスト】二ッキ・ケネディ
【録音】1998年8月
【収録】RV665、662、667、656、796、653
Le Cantate per soprano e stromenthi
(伊 Tactus: TC-672210、2001/2006. 2nd ed.)
【ソリスト】二ッキ・ケネディ
【録音】1999年8月
【収録】RV682、679、681、680、678、799。
自分は最初、第2巻を
新宿のディスクユニオンで見つけました。
第2巻だけ持ってると
残りも欲しくなるのは自然な流れで
店頭で見つかるのを
のんびりと待っていられず
Amazon で購入した次第です。
Amazon で買ったものは
いずれも再プレス盤だったわけですけど
CDで再プレスであることや
第何版かまでを表示しているのが
たいへん珍しいと思って
つい上にもそれを記しちゃいました。(^^ゞ
モード・アンティコを率いる
指揮者のサルデッリは
以前、こちらで紹介した
『失われた手稿譜』(2015)
という小説を書いた人です。
と同時に
木管楽器奏者でもあり
4枚目のCDに入っている
《疑いの影をさして》RV678 では
自らフラウト・トラヴェルソを演奏。
ちなみに
《疑いの影をさして》は
前回ご案内のヒルシュ指揮の盤にも
《疑惑の影に》という邦題で
入っていた曲です。
同曲を含む4枚目は
『カンタータ集 第4』というタイトルではなく
『ソプラノと器楽のためのカンタータ集』
というタイトルになっています。
同盤が世界初録音となるRV799を除き
他の曲が、通奏低音楽器以外に
フラウト・トラヴェルソや
ヴァイオリンのソロ、ないし
弦楽合奏の伴奏が加わる曲を集めており
《グローリア》の独唱を思わせる曲もあったりして
オペラちっくな迫力という点では
他の盤に勝るかもしれません。
特に、ヴァイオリンが加わる
《恋人から遠く離れて》RV680 の迫力には
圧倒されました。
もっとも他の盤にしても
通奏低音楽器は
単に和音を補填するだけでなく
第2ソロのような絡み方をしますので
(特にチェロがそう)
それがぴったりハマったりすると
実に聴きごたえがあります。
第2巻の冒頭に収録されている
《春風が草を渡り》RV669 の
第1アリアの疾走感は
実にヴィヴァルディらしくて
聴いていて爽快ですね。
第2巻に収録されている曲は
総じて聴きごたえがありました。
ターニャ・ダルタンが歌っている
《愛よ、お前の勝ちだ》RV651 は
第1巻の冒頭に入っています。
同じ巻に入っている
《エルヴィーラ、我が魂よ》RV654 や
《お前の心はよく分かる》RV668 の
第2アリアでは
キターラ(キタッラ。現在のギター)が
そういう奏法なのか
パーカッションのように聴こえて
(たぶんテオルボではなくキターラでしょう)
まるでスペイン舞曲のような感じなので
ちょっとびっくりでした。
サルデッリは曲によって、あるいは
レチタティーヴォとアリアによって
時にテオルボとキターラを使い分けており
非常に印象的な響きを聴かせます。
ちなみに第3巻収録の
《天に紅の光立ち》RV667は
歌詞が上下する音域の広さや
低音域へと一気に下がるパッセージから考えて
カストラート用と思われる
という解説を何かで読みましたが
一聴すれば、なるほどと頷けます。
この曲ばかりは
映画『カストラート』(1994)で
伝説のカストラートである
ファリネッリの声を再現するために
音源を提供した黒人カウンターテナー
デレク・リー・レイギン盤が
おすすめといえるかも。
ソプラノ独唱では他に
ロベルタ・インヴェルニッツィが
歌った盤がありますけど
それについては
レイギン盤ともども
いずれまた。
モード・アンティコが
あと4曲録音して
もう1枚リリースすれば
ソプラノ・カンタータ全集に
なってたんですけど
5枚目は、残念ながら
出てないようです。
(少なくとも Tactus 盤では
見つけられませんでした)
というわけで
残りのソプラノ・カンタータを聴くために
例によって Amazon で検索しまくり
あと2枚入手して
コンプリートさせました。
その2枚が何かというのは
長くなりましたので
次の機会にでも。