キングズ・コンソートの
未収録となっている
ヴィヴァルディのモテット
残り3曲を聴くためには
CDをあと3枚買わねばならない
という話題の最終回です。
本来なら当記事のタイトルは
「ヴィヴァルディのモテット(その3)」
とすべきところなんですが
2007年に発見されたモテットを含む
Vivaldi: New Discovers の
収録曲が多岐にわたるため
モテットについてだけ書くのも
バランスが悪い感じですし
収録曲すべてについて言及すると長くなって
収拾がつかなくなることでもあり
2回に分けることにしました。
たびたび書いているように
キングズ・コンソートが録音しなかった
3曲のモテットの内の最後のひとつ
《私はあなたを喚ぶ》RV811 は
2007年に発見されたそうです。
そのため
2005年リリースの
キングズ・コンソートのボックスには
間に合わなかったわけですが
発見された年の翌年
ナイーヴ・レーベルからリリースされた
新たに発見された作品集の1枚目に
早々に収録されることになったようで
それがこちら↓
Vivaldi: New Discoveries.
(仏 Naïve: OP-30480、2008)
【演奏】ロミーナ・バッソ(メゾソプラノ)
フェデリーコ・マリア・サルデッリ(指揮)
モード・アンティコ
【録音】2008年5月
ヴィヴァルディ・エディション
というシリーズの1枚ですが
通し番号は付されていません。
ヴィヴァルディ・エディションには珍しく
男性がカバーのモチーフになっています。
(それとも男装の麗人なのかしらん)
当ブログで紹介した
4枚のカンタータ集をリリースしている
モード・アンティコの演奏で
同ユニットを指揮する
フェデリーコ・マリア・サルデッリは
リコーダー奏者としても参加していますが
声楽曲には残念ながら
リコーダーの出番はありません。
で、本盤に収録されている声楽曲は
モテット《私はあなたを喚ぶ》RV811 の他に
歌劇(オペラ)《アルジッポ》RV697 から
アリア〈まだ光が遅いなら〉と
「種々のアリア」RV749の第32
〈星よ、おまえたちが
美しいのと同じくらいに誠実ならば〉
を含めて、3曲となります。
歌劇《アルジッポ》RV697 は
楽曲全体は散失しており
アリア数曲が現存しているだけとか。
(何曲、残っているのか
あいにくと調べがつきませんでした)
ここに収録されているアリア
〈まだ光が遅いなら〉は
Aメロ - Bメロ - Aメロという
ダ・カーポ形式のものですが
Aメロの疾走感はハンパないですし
例によって弦楽合奏はドスが利いたもの。
それに対して
〈星よ、おまえたちが…〉の方は
テンポは相変わらずいいし
A' メロのメゾソプラノも
それなりに盛り上がるんですが
〈まだ光が遅いなら〉と比べると
ややエモさに欠ける感じかなあ。
〈まだ光が遅いなら〉のA' メロは
なかなかの聴きものでした。
「種々のアリア」というのは
元の作品からは別に保存されている
オペラやそれに類する作品のアリアを
まとめたカテゴリーで
全部で32曲あるようです。
1曲が今回のように3分程度のものなら
まとめて録音してくれてもいいのに
とか思うんですけど
今のところ、そういう盤はないようで。
32曲の中には
元の作品が不明のものもあるそうですが
〈星よ、おまえたちが…〉の場合
1724年にナポリで上演された
Turno Aricino RV Anh.125 という
パスティッチョ作品に含まれる1曲だと
分かっているみたいですね。
パスティッチョというのは
様々な作品からアリアを借りてきて
つぎはぎしてまとめられた作品で
借り物のアリアの中に自作のアリアを
はめ込んだりもしたようです。
全曲録音されているオペラだと
《バヤゼット》RV703
《忠実なロズミーラ》RV731 なども
パスティッチョに当たります。
ちなみに
Anh はドイツ語 Anhang の略語で
補遺、付録という意味ですけど
従来、真作と考えられていた偽作が
含まれていることが多いようです。
モテットは
例によってコンチェルト・グロッソ風で
通奏低音はアリアとアレルヤがチェンバロ
レチタティーヴォのみテオルボという
インヴェルニッツィ盤の方式でした。
第1アリアのテンポが
アレグロ・アッサイ(とても速く)なので
非常に快速快適な感じ。
対する第2アリアのテンポはラルゴで
アダージョよりもゆっくりと
抒情的に歌われていきます。
アレルヤのテンポはプレストで
再び速くなって歌い上げてますが
レチタティーヴォは短いため
第2アリアとセットにすれば
速い - ゆっくり - 速い、という
バロック時代の協奏曲
特にヴィヴァルディのそれに
典型的な様式と同じというわけ。
その他の収録曲である器楽曲
協奏曲やソナタについては
最初にも書いた通り、また改めて。
●訂正(翌日、22:15頃の)
ブログ・タイトルで
Discoverise を
「ディスカヴァーズ」と
表記していたのを直しました。
お恥ずかしい。(^^;ゞ