こんにちは、税理士の柿白です。

以前に相続税の税務調査リスクを減らす方法をご案内しましたが、今回は生前対策編です。

 

 まずは、「預金通帳の入出金で不明事項を極力減らすこと」が最も重要ですびっくりマークびっくりマーク

 相続税の税務調査で問題になるのは過去の預貯金の動きです。税理士も相続税申告書の作成にあたり、相続人の方から過去の通帳を入手し不明事項はないか、財産に漏れがないかをチェックします。税務署は過去の申告状況や支払調書など私達には入手できない情報を持っていますが、やはり過去の預金調査を念入りに行います。したがって、生前のうちからなるべく預金通帳において不明事項や懸念事項がないようにしておくことが肝心です。

 

①タンス預金(自宅保管現金)はしない

 相続税申告のお手伝いをしていると、相当な金額をタンス預金している方がいらっしゃいます。タンス預金をする理由は様々でしょうが、タンス預金をしていることは簡単にわかってしまいます。先祖代々からタンス預金を受け継いでいるという方でしたらわからない可能性はありますが、過去の申告(収入)状況から相続発生時の預貯金残高が少ないとタンス預金を疑われてしまいます。また、過去の通帳の履歴から多額の出金がある場合も同様にタンス預金を疑われます。タンス預金をしているのは事情によるためで、脱税等の意思はなく私は適正に相続税申告をしたいと、実際のタンス預金残高を正しく計上したとしても、税務署からすると、その金額は正しいですか?本当はもっとあるのではないですか?とどうしても疑ってしまいます。タンス預金は預貯金のように残高証明書があるわけではありませんので、どこまでいっても疑念は残ってしまいます。

タンス預金していても現物証拠(いわゆるタマリ)が見つからない限り大丈夫でしょ?

 私が過去に経験した税務調査でタンス預金が疑われた事案(多額の現金出金があるが行方が不明)においては、実際に証拠がでてこないため否認されなかったことが確かにあります。しかし、毎年国税庁が発表している事例では、調査により自宅から多額の現金や金の延べ棒がでてきた例はいくつもあります。また、実際の現物証拠(タマリ)がみつからなくても、出金した現金が相続財産として認定された判例は複数あります(いずれも相続開始直前の出金ではありますが)。したがって税務調査のリスクを少なくするためには、タンス預金をそもそもしないこと、タンス預金と疑われるような現金出金はしないことが非常に重要となります。

 また、火災や防犯上の観点からもお勧めしません。実際にタンス預金をされている方にはいつもこの説明をしますが、みなさん相続後に金融機関に入金をされます。どうしてもタンス預金したいという方は、防犯上等の観点からせめて金融機関の貸金庫に保管をした方がよいと思います(そんなに入りませんが)。ちなみに、相続税の税務調査があった場合に貸金庫を借りていると必ず貸金庫の中身を確認されます。

 

②現金取引は極力しない

 これは相続税に限ったことではなく法人税や所得税の税務調査への対策として共通する重要な項目です。現金取引は支払証明能力が限りなく低くなります。いやいや私は領収書をきちんと保管しています、という人はいるかもしれませんが、領収書は極論を言うと簡単に偽造ができてしまいますので税務署からするとどうしても疑いたくなってしまいます。したがって、できるだけ現金での入金や出金は少なくし、振込など通帳を通して取引をすべきです。振込であれば支払いの事実は間違いありませんし、相手先も把握できるため使途も推計ができます。

 最も問題になるのは大きな金額の現金出金です。納税者の方からすれば現金で出金し現金で生活費等を支払っているだけと考えるかもしれませんが、通常よりも多額とみられる現金出金があると、どうしてもタンス預金やそのほかに財産として計上すべきものを買っていないか、親族等に流れていないかということが疑われてしまいます。

 

③贈与は適正に実行する

 相続税対策として生前贈与は非常に有効です。税制改正によって加算対象が長く(3年→7年)なりますが、それでも相続人以外への贈与(孫等)相続時精算課税の基礎控除を利用した贈与は非常に有効です。

 ②と同様になりますが、贈与をするのであれば、必ず、預金を通して振込をしてください。私どもも通帳を拝見した時に、110万円の振込があると親族への贈与かなとピンときます。これは税務署も同じです。一方、子供や孫へ一人づつ100万円の贈与をしたいと思い、例えば5人分の500万円を出金し現金で渡した場合はどうでしょうか。通帳には500万円の出金しか履歴として残りません。通帳を見ただけではこれは何に使ったのか、どこにいったのかが全くわかりません。とにかく不明な事項があればあるほど税務調査のリスクは高まります。実際に調査が行われる場合は、被相続人だけでなくご家族も含めて預金調査をされますので、出金日と近い日付でご家族(受贈者)の通帳に同金額の入金があれば、贈与の推計はできます。ただし、調査官も調査に来る前に被相続人の通帳は調べていても、ご家族までの預金履歴を確認していないケースは多いです。

 調査で調べられても贈与の事実は間違いなく、贈与契約書もあるし説明もできるし現金でも大丈夫と思われるかもしれませんが、やはりできるだけ調査には来られたくないですよね。贈与は必ず振込で行う。贈与契約書を必ず作成する。場合によっては110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告を行う。これが重要です。

 

名義預金と疑われないようにする

 名義預金は税務調査で問題になる論点の一つです。したがって、名義預金と疑われるような状況の場合、税務調査のリスクは高くなります。本人は贈与をしているつもりでも、税務署から名義預金として指摘される場合があります。贈与と名義預金については過去のブログでもご紹介しておりますので参考にしてください。

 贈与か名義預金か、については総合的に判断されます。重要な考え方は、過去のブログにも書いた通り、「贈与」は法律行為なので、「あげる」という意思と「もらった」という意思がお互いに合意したときにはじめて成立します。したがって、特に「もらった」という事実を積み上げていく必要があります。

 形式上の論点として贈与契約書は有効です。ただし極論をいうと勝手に父のみで作成することも可能です。また、受贈者の通帳の印鑑やその通帳の口座開設は誰が行ったのか等も論点としてあります(父の印鑑だったり、父が子供や孫の通帳の口座開設をしていると名義預金として疑われます)。また、贈与税の申告を行うことも贈与であることをアピールする材料になります。ただし、名義預金と判断されると過去の贈与税はお返ししますので、相続財産に名義預金として計上してくださいと言われる可能性はあります。

 「形式上」は贈与であることを満たしていたとしても、「実態」が伴っていないと名義預金として否認される可能性があります。例えばですが、贈与を行うためにわざわざ新しい通帳を作成し、そこに毎年110万円を振込んで貰い10年後に残高が1,100万円の通帳があったとすると正直あまり贈与としての印象はよくありません。もらった以上は、当然本人が自由に使うことが可能なはずです。本人としては父や祖父から貰った大事なお金なので大切にしようという思いかもしれませんが、入金のみで全く支払い等の動きがないと、これは名義預金ではないか?(本人が管理しておらず父が管理しているのでは?→自由に使用ができない通帳?→贈与は成立していない?→名義預金?)と疑われてしまいます。できるだけ、本人が普段の生活で使用するいわゆる入出金の動きがある通帳に振り込んでもらうとよいでしょう。

 また、名義預金で問題になるケースとして多いのが、配偶者名義の預金です。被相続人の預金残高は少ないのに、配偶者には多額の預金がある。配偶者は専業主婦なのに多額の預金がある。このような場合は、名義預金が疑われます。通常、夫婦であれば財布も一つでどちらのお金という認識もあまりないと思います。しかし、税務署はそのような状況を許してくれません。納得できないかもしれませんが、夫が妻に渡した生活費の残り(いわゆるへそくり)が名義預金として判断された判例もありますショボーン

 

長くなりましたので、この続きはまた後日びっくりマーク

 

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