『よこはま・たそがれ』などの作詞でも有名な、山口洋子さんの直木賞受賞作。(1985年)
『演歌の虫』に収められている小説。
なんか、伝統工芸職人の粋を集めた、ものすごくよくできた漆の器みたいな短編でした。
私が今まで読んだ小説のなかで、いちばんわびさび利いとるかもしれん。一見、地味な話でそんな大したことは起こらないんだけど、「女の運命は、爪の色まで変えるのか」、こういうかっけえセリフがばんばん出てきて、もう短編なのにしっかりおなかいっぱいになる。
この小説の良さが、ツーンとくる歳になってから読んでよかった! と思うけど、さらに30年経ってから読んだら、もっと奥に何かを隠していそうで、もうわくわくする。この物語の人物が背負い込んだものなんて、三十路じゃわかんないわね、とかわされた気分にもなる。
老後に読み返すのが楽しみです。
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- ●直木賞受賞作の読書記録(隠居の本棚より)