昔、たまたま入った八百屋で、小松菜が10円で売っていたことがありました。
値段の書き間違いかと思って、おじさんに、「この小松菜、10円なんですか?」と聞いたら、待ったましたとばかりにギロリと睨みをきかせ、「10円で売ったらいけねーのか!」とブチ切れられました。
「いや、そんなことないです」
「値段書いてあんだから、見りゃわかるだろうが!」
「すいません。買います」
「いくらで売ろうと俺の勝手だ!」
「ほんとすいません…」
結局小松菜は売ってもらえず、っていうか今振り返ると売る気があったのかはなはだ疑問ではあるのですが、そのまま断念して帰りました。
世の中には、怒りやトラブルを燃料にしないとイキイキと生きられない人種がいるのだと思う。
この小説にも、その種の人間が出てきます。夫の莫大な借金にイキイキ、返済の催促の電話にイキイキ、娘の同級生の母親の口さがない噂話にイキイキ、あんまり腹が立って友人に絶好調で電話したら、ちょうどパイプカットの復元手術後でチンコが勃たないと愚痴られ、励まされるつもりが励まして、不完全燃焼になって電話を切り…。
哀しくておもしろい。おもかなしい。
めんどくさそうなので絶対知り合いにはなりたくないですが、「本の中の人」ぐらいの距離感なら、また会いたくなって読んじゃうんですよね。
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