35日目 ラーメーシュワラム→約180Km(バスで4時間、49Rs)→マドゥライ
『少年との駆け引き』
今日も寺院から流れる怪しい歌で目覚める。
シーツに包まり再び寝ようとするが、延々と歌は続き、いつまで経っても終わりそうにもない。
単に「観光地に近い」と言うだけでホテルを選んでしまった自分に後悔した。
結局、6時に目が覚める。
特にすることがないので荷物整理をしながらクリケットの試合をテレビで観戦する。
インドのテレビ番組は映画、音楽、クリケットの3つがメインのようで、これ以外の番組はほとんど放送しない。
暇をつぶすのには必然的にクリケットの番組を見ることになる。
野球ほど動きもなく、あまり面白くないのだが。
クリケットが流行るのは、のんびりとしたインド人の国民性からだろう。
10時になったので、ホテルをチェックアウトし、次の目的地であるタミルナードゥ第2の都市“マドゥライ”へと向かう。
市街地からローカルバスでバスターミナルへ向かい、マドゥライ行きのバスを探す。
事務員のオッサンに聞くと、すぐに出発するとのことで、また堅いシートのオンボロバスに飛び乗った。
4時間で着くと言っていたが、本当かどうか…
インド人の言うことは適当なので信用ならない。
マドゥライまでの道のりは、カニャークマリ~ラーメーシュワラム間とは違い、全線舗装されていて、揺れもほとんどなく快適である。
しかし、いつまで経っても休憩がなく、座りっぱなしなので、お尻や足が痛くなり、思った以上にきつい。
バスの旅は始まったばかりなのに不満ばかりである。
途中の停留所で、サモサ(マサラで味をつけたジャガイモを、小麦粉の皮で三角形に包んで揚げたスナック)を持った子ども達が乗り込んできた。
彼らはそれをバスの乗客に売り、一家の生活費を稼いでいるようである。
朝から何も食べてなかったので、ひとりの少年を呼び、1つ2Rsのサモサを2つ買った。
10Rs札を渡しておつりを受け取ると、6Rsのはずなのに5Rsしかなかった。
1Rsごまかされたのである。
やられた。
うまく誤魔化されたのがくやしかったので、ちょっと試してやろうと思い、再び少年を呼んだ。
そしてまた、サモサを2つ買う。
今度は「2つで4Rsだよね?」と聞きながら3Rsを差し出した。
少年は、おつりを誤魔化したのがバレてたことでバツが悪そうな顔をしたが、すぐに笑顔でお金を受け取り、バスを降りた。
俺もサモサ売りの少年のようにインド人のずる賢さを覚えたひとときだった。
バスはトラブルもなくエンジン全開で突っ走り、終点のマドゥライへ到着。
バスを降りると、リクシャーのオッサン達に囲まれ「どこへ行くんだ?ホテルはもうとってあるのか?」と質問攻めに。
しかし、こちらもインドへ来てはや1ヶ月。
そういうことには慣れているので嫌な思いをすることもなく、軽くあしらって市内へ向かうローカルバスを探すことにした。
バスを探していると、トイレに行きたくなったので、構内にあるトイレへ。
しかし、中に入ろうとすると入り口にいたオッサンに「ここは有料だ。金払え。」と言われて止められた。
インドには有料トイレもあることは知っていたが、オッサンが嫌な笑みを浮かべてたので、トイレは我慢することに。
事務員のオッサンに「700番のバスに乗れば市内へ行けるよ。」と教えてもらい、バスを探して乗りこむ。
20分ほどで市内の中心にあるマドゥライ・ジャンクション駅に着き、降りた。
今晩泊まるホテルはどこにしようか迷ったが、駅に近くて便利そうな“K・T LODGE”に泊まることにした。
建物は部屋数が200室以上あり、増築の繰り返しのせいか、廊下も迷路のように入り組んでいて迷いそうだったが、1泊185Rsと安かったので文句はない。
ホテルに荷物を置き、バラナシで購入した青のルンギーを身につけ観光にでかけた。
まず、駅近くにある政府観光局へと行き、マドゥライの見所を教えてもらい、地図を貰って観光に出た。
ゴータル・アラガル寺院などの小さな寺院をいくつか見学した後、南インドを代表する“ミーナークシ寺院”へと行く。
パールヴァーティーやシヴァ、ガネーシャ(ゾウの頭を持った神)、ナンディ(シヴァの乗り物である牛)を祀る大きな寺院なので、寺院内は大勢の信者がおり、神殿内では熱心にお祈りをしていた。
その敬虔な信者達を見ていると、観光目的で寺院内に足を踏み入れている自分は、ヒンドゥー教の神々を冒涜しているようで、後ろめたい気持ちになった。
独特の匂いと神秘的な雰囲気を放つ寺院を粛々とした気持ちで見て周り、早々と外へと出た。
夕食はオープンエアのレストラン“Ruby”でチャーハンとフライドチキンを食べた。
久しぶりにするカレー以外の食事だったので美味しかったが、外で食べているので蚊が群がり、食事どころではなかった。
帰りに屋台で軟骨のから揚げを買ってホテルへ帰った。
インドは屋台が至る所にあるので、町中を散歩するだけで楽しい。
マドゥライの人は日本人に対して他の地域とは違った挨拶をする。
「オ~!ジャパニ~!ドングリコロコロ~!」と話しかけてくるのである。
彼らは「ドングリコロコロ~」が日本の挨拶だと勘違いしているのではと思ってしまうほど、会う人みんな「ドングリコロコロ~」と言うので笑えてくる。
明日からの挨拶は「ワナカム(こんにちは)」ではなく、「ドングリコロコロ~」にしよう。