インド亜大陸旅行記 -21ページ目

43日目 マハーバリプラム

『アンバランス』


久しぶりの快眠。
9時過ぎまで気持ち良く寝られたのは、いつ以来だろう。

窓を開けると、眩しい日差しと爽やかな風。
そして、白い砂浜、どこまでも広がる真っ青な海。
今までの人生で最もブルジョワなシチュエーションの中に自分がいる。

朝から湯の出るシャワーを浴びて眠気を覚まし、天気がいいので洗濯を始めることに。

日本でも滅多に洗わないジーンズを風呂場でジャブジャブと洗濯。
砂だらけの大地をあちこちと歩いてきたため、ジーンズに付いていた砂埃がものすごい泥水となって流れ出す。
何度も濯ぐが、なかなか泥が落ちない。
しかし、いつまで洗っていてもきりが無いので、ある程度の所でジーンズをしぼり、テラスに干した。

海を見ながらファンタを飲み、一息ついたところで外出。
まずは郵便局ヘ行き、切手を大量購入。
日本にいる家族と友人にせっせと手紙を書くためである。
無愛想な郵便局員の姉ちゃんから切手を受け取り、マハーバリプラム観光へと出かけた。

まずは世界遺産でもある、7世紀後半に建てられた“海岸寺院”へと行く。
250Rsも払って中へと入るが、やたら記念写真を撮りまくっているインド人観光客がたくさんいたので、邪魔にならないようにグルリと周りを見学。
思うに、インド人が大勢押し寄せるような観光地は大したことがないような気がする。
早々に退場し、隣にある海水浴場へと向かった。

海水浴場では、波打ち際に人がたくさん集まり、海水浴を楽しんでいた。
アイスを食べながら、子ども達が走りまわって遊んでいる様子や、サリーを着た女性たちが手を繋いで波打ち際で騒いでいるのを見たり、場違いな子馬が砂浜を歩いているのをしばらくボーっと眺めていた。
なんてこの空間は、ほのぼのしているんだろう…

お腹が空いてきたので、海岸の屋台で何の魚かよく分からない素揚げを5Rsで食べ、町の屋台でマトンビルヤーニー(羊肉のピラフ)を20Rsで食べる。
そこらのレストランで食べるよりも、屋台で食べたほうが安いし、美味い食事にありつける。
インドの旅は、いかに良い屋台に巡り合えるかが鍵なのかもしれない。

午後からは市街から少し離れた場所にある“パンチャ・ラタ(5つの寺院)”と呼ばれる寺院群へ。
この5つの寺院は、南インドにあるドラヴィダ建築の寺院の原型になっている7世紀半ばに造られた建造物で、それぞれ巨大な一枚岩から掘り出された形の違う寺院なのである。
見た目は、寺院と言うよりも大きな石の彫刻と言った方が正しいような建築物だった。

しばらくの間、寺院群の園内にある木蔭でインド人の若いカップルが仲睦まじく語り合う姿を見学。
インドの清純な恋愛の姿にも飽きた所で、町の西側にある小高い山に登ることにした。

山の頂上に着くと灯台が建っていたので上ってみる。
灯台の展望台に立ってみると、マハーバリプラムの町とマリンブルーがとても綺麗なベンガル湾を一望できた。

しばらく眺めていると、二人組のオッサンがやってきて、海をバックに記念写真を撮り始めた。
撮影の邪魔になると思ったので、その場を立ち去ることに。
しかし、なぜかオッサン達に呼びとめられ、なぜか一緒に肩を組んで記念撮影をさせられた。
アジアの端から来た日本人が彼らには珍しく見えたのだろうか?
あまり細かい事は気にせずにインド式世間話(どこから来た?何歳だ?職業は?父親の職業は?宗教は?など…)を5分ほど行い、おっさん達と別れ、山を降りた。

山の麓には、“クリシュナのバターボール”と呼ばれる、直径がおよそ7Mほどの大きな丸い岩があったのだが、この岩、ただの岩ではない。
今にも転がり落ちそうな状態で坂の途中で止まっているのである。
下から見ているだけでハラハラするのだが、インド人観光客の皆さんはその岩陰で休憩してたり、岩を動かさんとばかりに皆で押したりしているのだ。
しかし、岩は何百年も前から坂の途中で止まっており、びくともしないのである。
この岩は、まさにインドを象徴する摩訶不思議である。
今までいろんな名所を訪れたが、この岩の存在が一番驚きである。

夕方になったので、プライベートハウスへ戻る。
気分が良いのでテラスで手紙を書いたり、海をボーっと眺めたりしてのんびり過ごす。
途中、使用人のオッサンが庭でウロウロしていたので、声をかけて一緒に一服する。
サボっているのがバレると困るのか最初は落ち着きが無かったが、慣れてきたらタバコを要求したりとだんだん態度が大きくなってきた。
使用人をよく見てみると腕には金の時計がつけられている。
見せてもらうとシチズンの時計で、しきりに「これ、いいでしょ?」と満面の笑みで自慢してきた。
しかし、そんな立派な時計をしていても、彼の服装はボロボロなのである。
この一点豪華主義的なアンバランスさが分からない。

使用人は英語ができず、タミル語しか話せなかったので、お互いジェスチャーで会話した。
言葉無しでも簡単なことは、なかなか通じるものである。

日が暮れると寒くなるので、長袖のシャツを着て夕食へ。
マハーバリプラムのレストランは注文してから料理が出てくるまでが長いという事を身をもって学んでいるので、お腹が空く前にレストランに入ることに。
予想通り、料理を注文して40分も経ってから出て来たので、ちょうどいいお腹の空き具合で食べる事ができた。

食事を終え、通りをフラフラしていると雑貨屋のオッサン達に呼びとめられたのでしばらく雑談。
ついでに、バナナやポテトチップス、ファンタなどを購入して宿に帰ることに。

しかし、買った後重大なミスに気付いた。
食料を買ったのは良いが、買った場所がまずかったのである。
宿から遠い場所で買ったため、かなり離れた宿まで食料の入ったビニール袋をぶら下げて歩かなければいけないのだ。
ということは、歩いていると子ども達が“おこぼれ”をもらおうと集まってくるのだ。

案の定、あちこちで襲撃に会い、買ったものを持って行かれそうになるが、何とか死守。
途中、赤ちゃんを抱いた母親(2名)は不憫だったので、バナナを2本づつ進呈し帰ってくる事ができた。

誰にあげて、誰にあげないかは自分で判断するしかないのである。
何が正しくて、何が正しくないかも分からない世界で生きるということは、全てが決まっている世界以上に難しいことなのかもしれないということを実感した。