52日目 バンガロール→412Km(バスで7時間、201Rs)→ホスペット
『中国人と日本人』
朝からカセットテープを買いに、バンガロールで一番大きいミュージックショップへと行く事に。
ホテル前でいかにも人柄が良さそうなリクシャーを捕まえて乗りこむ。
予想通り運転手は良い人で、面倒で無駄な交渉も無しにメーターで行くことに即OKしてくれた。
(基本的にバンガロールのリクシャーは他の地域に比べて、メーターで行ってくれるので有り難い。)
相手の顔を伺って、良い人なのか悪い人なのかが分かるようになってくると(直感?)、気分良く旅を続けられる気がする。
しかし15分後、いい気分も一人の店員によって早々に打ち砕かれることになる。
店内に入り、端の棚から順番に品定めしていると、視界を遮るようにして顔を覗きこんできた男。
ミュージックショップの店員、中国人留学生のチャン君である。
彼は熱い口調で話しかけてくるのだが、英語がものすごく中国語訛りで下手なので、内容の80%は聞き取れない。
しかも興奮しすぎて、英語で話していたのがいつの間にか中国語になっている。
中国人ではなく日本人だと説明し、もっと落ち着いて話してくれと言ってもチャン君の興奮は収まらない。
インドで東洋人を見ただけで興奮するのも百歩譲れば分からなくもないのだが、チャン君のそれは、ちょっと異常である。
そんな彼をさらに興奮せようと、大学の授業で覚えた中国語で自己紹介してみると、「お前、中国語話せるのか!」と甚く感動し、俺の手を握りしめてメチャメチャ喜んでくれた。
未だ単位を取得できないくらい苦手な中国語ではあるが、意外な場所で使えたことにチャン君同様、俺も興奮した。
その後、チャン君は「これが中国式の挨拶だ。」と言って、お礼にカンフーな挨拶を教えてくれた。
絶対ウソだと思いながらもチャン君のマネをしてカンフーな挨拶の練習をすることに。
インドのミュージックショップでカンフーをする東洋人が二人…かなり怪しい。
当然の事だが、変わり者好きのインド人達でさえも近づいてこなかった。
チャン君との異文化交流も済ませ、本来の目的であるカセット購入へ。
早速チャン君に聞いてみたのだが、あまり音楽に詳しくないようで、思いっきりランキングをカンニングしながら勧めてきたり、危うく古いカセットを買わされそうになったりと散々であった。
なぜ彼がこの店で働いているのかは、あえて聞かないことにした。
チャン君の話を聞き流しながら、自分でディスプレイやランキングを参考にして購入することに。
まず最初に洋楽が聞きたかったので、“OASIS”のアルバム「heathen chemistry」とオムニバスな「THE BEST OF MTV.03」を購入。
インド音楽は、タミル映画で流行っている「DHOL」という映画のカセットと、クリケットのインド代表応援ソングを買った。
計4品で380Rs(洋楽1本145Rs、国内1本45Rs)、ウォークマン本体よりも高くついてしまった。
昨日と同じように近くのKFCで昼食を済ませ、リクシャーに乗ってホテルへと帰る。
特にする事がなかったので、仲良くなった従業員達と部屋のテレビでクリケットを観戦。
最初は皆でクリケットの話をしていたのだが、いつの間にか仕事の話に。
「俺は月1200Rs(約3000円)で働いているんだが、日本のホテルマンは月にいくら貰えるんだ?」とか、「俺も日本で働きたいから良いホテルを紹介してくれないか?」など、メチャメチャなことを皆で言い始めた。
仕方ないので、日本の物価の説明から始まり、インド人の性格では日本のサービス業は勤まらないと言うことまで図を使いながら分かりやすく説明した。
しかし、彼らが理解できるはずがなく、最後まで「日本で仕事を探してくれよ。」の大合唱だった。
21時を過ぎたので、ホテルをチェックアウトする。
最初に日本から持ってきた荷物も、いらない物を捨てたり、あげたりしてかなり減ってきたので移動も楽になった。
バックパックの中身が一つ一つ減って軽くなっていくごとに、真の旅人に近づいているような気もする。
大勢の人達で混み合うバスターミナルで少年と遊んでいると、バスがやって来た。
今回は修学旅行で使われるような観光バスだったので、シートも堅くなく快適そうである。
しかし、走り出してすぐに快適という言葉を打ち消した。
バスはいいバスなのだが、道が悪すぎるのである。
とても眠れるような環境ではないのだが、周りを見渡すと、インドのオッサン達は皆、爆睡していた。
2時間後、ドライブインで休憩。
バスはホスペットが終点ではないので、途中下車となるホスペットの到着時刻を聞こうと「ホスペットまでどれくらいかかるの?」と車掌に聞くが、「ホスペット”#$%&’()…+*<>?」という、何語なのか分からない返事が返ってきた。
何度も英語で聞いてみるのだが、こちらが求めている返事が返ってこない。
ホスペットで下車できるのか、ものすごく不安になってきた。