テーマもそうですが、アプローチの仕方がなかなか際どくて・・・。攻めすぎても守りすぎても批判されそうですし、

 

さすがの宮藤官九郎さん脚本作品でも大外しする可能性があるんじゃないかとそわそわしながら初回を見ました。笑

 

正直、ミュージカル演出は最初見ていて少し恥ずかしかったのですが、

昭和では学校の職員室でタバコを吸い、部活で水飲むな~!ケツバット~!とか言ってる主人公・市郎(阿部サダヲさん)が、令和にタイムスリップしてあたふたする様は、ジェネレーションギャップコメディとして面白かったですし、

 

特に初回は、タッチパネルの注文ができなくて、シメサバを大量注文しているシーンで爆笑してしまいました。

 

その上、令和にきて大暴れする話かと思いきや簡単に行き来できてしまうガバさや、

かと思ったら、そのタイムマシンを開発したのがかつての教え子だったりと、クドカン脚本らしい抜かりない伏線回収もあって、ラフさと丁寧さがゴチャゴチャになっているのも面白いですね。

 

市郎と、その生徒・昌和(三宅弘城さん)との温度差や、最低っぷりも良かったです。

 

令和に来てからはテレビ局でカウンセラーに抜擢されたりと、活躍する一方で、スマホ依存になって周囲に迷惑をかけたりと、頑固というよりミーハーなダメ親父(?)がここからどう変化して、どう着地するのか予想できなくて楽しみです。

 

同時に私も、昭和パートに関しては知らないことも多くて、劇中の登場人物と一緒に、異なる文化を知って戸惑ったりしながら見ています。あとは、この時代のあの出来事をココに持ってきたのか!?という大河ドラマっぽい面白さもある気がします。笑

 

それにしてもクドカン脚本って、直近で見た「俺の家の話」では能やプロレス、介護などのテーマをたっぷり盛り込んで一気に描ききる大胆さや構成力の高さなどがありましたが、

 

本作の5話なんて、古田新太さん(青年期:錦戸亮さん)登場のノリから、あんな設定を盛り込んで、人情話に落とし込むところなんて、まさにそれでした。(「あの」とか「それ」が多くてすみません。笑)

 

その他にも難しくて避けられがちなテーマをラフに見れるようにする工夫が随所にあって良いなと思います。

 

私が見たことある作品は、割とずっとこのスタイルだった気もするのですが、今回は特にSNSでの炎上が注目されていますね。過去作で扱ってきた題材だってセンシティブなものが多かったはずなのに・・・。

 

制作陣もこの事態を見越していたのかキャスティングも、主演が長年タッグを組んできた阿部サダヲさんで、他も内輪と、割と炎上しても問題なそうな俳優さん(?)で固められている気がしますね。笑

 

とはいえ、「ゆとりですがなにか」のようにそういった小技や設定盛り盛りじゃないオーソドックス(?)なドラマも作れるところが、また凄いのですが。

 

美術セットのこだわりとかも知りたいな。

 

「不適切にもほどがある!」

主演:阿部サダヲ

脚本:宮藤官九郎

演出:金子文紀(1,2,5)、坂上卓哉(3)、古林淳太郎(4)、渡部篤史(6)

一昨年「相棒」を卒業された反町隆史さんを主演に迎え、脚本は「マイファミリー」「モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-」などを手がけたミステリーの名手・黒岩勉さん。

 

ということで、本来ならかなり期待値が高くなりそうなのですが、殺人球菌がテーマだったり、反町隆史さん演じる主人公・藤巻がボソボソ話す役だったり、映像作品としては地味な画が続かないかなと心配もしていました。

 

初回を見てもその印象は大きくは変わらなかったのですが、黒岩勉さんのスピード感のある巧みな脚本でグイグイと引き込まれて見てしまいました。

 

主人公はモサッとしていて鈍感なキャラクターではあるのですが、まっすぐで、内心は家族思いでもあるところが、単なる巻き込まれタイプの主人公とは違う魅力があって良かったです。

 

あと、久留米(波瑠さん)のキャラも面白いですね。主人公と久留米のやり取りが一番好きです。笑

 

佐々木蔵之介さん演じる白鳥が登場した瞬間から怪しくて、仮に犯人でなかったとしても重要人物であることに変わりはないので、犯人候補として引っ張るのは無理があるなと思っていたのですが、

 

初回で、まず白鳥が殺人球菌・通称ギフトを使った犯人であることを明かして、その後ギフトを作った犯人が別にいるという可能性を残して話を引っ張るところも上手いなと思いました。

 

佐々木蔵之介さんの真顔で恐ろしいことを言う、狂気に満ちあふれた演技も素晴らしいですし、津田健次郎さんの狂った感じや、筒井道隆さんの他のキャラとはちょっとズレたサイコパス演技も緩急が効いていて面白いです。

 

また、この手の長編サスペンスドラマでは無能で足を引っ張る存在になりがちな警察も、尾上松也さん演じる神林が優秀なので、話が早くて助かりますね。笑

 

倉科カナさん演じるアルカナムのオーナー・安曇がどこまで本筋に絡んでくるのかも気になります。

 

「グレイトギフト」

主演:反町隆史

脚本:黒岩勉

演出:本橋圭太(1,2,5)、星野和成(3,4)

相場英雄さんの原作小説をドラマ化。

 

身元不明のままとなっている死亡者のリストから発見した派遣労働者の死の真相究明に挑む刑事の姿を通し、非正規雇用問題、世界標準から孤立化(ガラパゴス化)する日本産業を描いた社会派サスペンス。

 

主演は織田裕二さん。相棒役に桜庭ななみさん。

 

脚本は「スペシャリスト」「相棒」「科捜研の女」シリーズなどで知られる戸田山雅司さん。

 

音楽は「アンフェア」シリーズの住友紀人さん。

 

監督は「振り返れば奴がいる」「お金がない!」などで織田裕二さんとタッグを組み、映画「Fukushima 50」で日本アカデミー賞 最優秀監督賞 を受賞された若松節朗さんです。

 

2023年の4月にBSで放送されていた特集ドラマ、私は当時見ていなかったのですが、同年11月に地上波で再放送されたタイミングで視聴しました。

 

内容をザックリと書くと、

 

織田裕二さん演じる主人公の田川は優秀な刑事なのですが、仕事に身を捧げるあまり体を壊してしまい、継続捜査班に移動となってしまいます。

 

そんな田川に、鑑識課身元不明相談室の木幡(桜庭ななみさん)が身元不明の死亡者リストの調査を依頼するところから話が始まり、粘り強い捜査で真相にたどり着く話です。

 

捜査を続けるなかで、身元不明の死亡者は沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文(満島真之介さん)であることが分かるのですが、

 

その死因に疑問を持った田川が捜査をするなかで、

派遣労働者の厳しい環境を、仲野のかつての同僚・脇田(篠原ゆき子さん)や宮崎(野間口徹さん)、経済アナリストの小島(矢島健一さん)から聞かされます。

 

私は理系大学生だったので、就活はじめたての右も左も分からない頃は技術系アウトソーシングの企業の説明会などにも参加していただけに(その後大学から、技術派遣、アウトソーシングには就職してはいけないとお達しがあり、選考には参加しませんでした)

 

背筋が凍る内容でしたね。

 

特に仲野が書いた「ガラパゴスの最前線」の内容は、世界標準から孤立化した日本の産業の実態を生々しく語るもので、満島真之介さんのまっすぐな演技も相まって、見ていて辛かったです。

 

最終話ラストシーンの田川の怒りに震える目が印象的でした。

 

最近では個人的に「初恋の悪魔」での怪演が記憶に新しい伊藤英明さんや、髙嶋政宏さん、泉里香さんら、盤石のキャスト・スタッフで、とても硬派な社会派ミステリードラマになっていたと思います。話数が少なくて後半駆け足になってしまったのは勿体なかったですが・・・。

 

田川と木幡のやり取りも好きだったので、是非シリーズ化してほしいところですね。

特に田川を演じた織田裕二さんは、「シッコウ」と同様の渋さや熱さを残しつつ落ち着いた冷静さもあるキャラクターを巧みに演じられていて、身近にもこういう人がいるなと思いながら見ていました。

 

現在就職活動をされている方々にも見てほしいです。(もちろんコレが全てではないと思うけど)

 

「ガラパゴス」

主演:織田裕二

原作:「ガラパゴス」相場英雄

脚本:戸田山雅司

演出:若松節朗