昭和の文芸評論家;山本健吉氏が「戦後日本の三大愚行」を挙げている。これは、
2013(平成25)年8月27日の日経新聞のコラムに掲載されていた。 |
2013年8月24日に死亡された民俗学者・地名学者で近畿大学教授の「谷川
健一」氏が、以前に「私の履歴書」で紹介したものである。
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民俗学は森羅万象をさばくもので、「谷川民俗学」という独自の目を持った人だ。 |
「戦後日本の三大愚行」 |
①旧仮名を新仮名にしたこと |
②尺貫法をメートル法に変えたこと |
③住居表示法施行による地名の改悪 |
この「3つの愚行」に対して、小生なりのコメントを綴ってみる。 |
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①旧仮名を新仮名にしたこと |
1946(昭和21)年11月16日、内閣総理大臣吉田茂により「当用漢字表
の実施」とともに「現代かなづかいの実施」が告示、訓令された。 |
「戦前のものは全て悪である」ともいえるような考えで、旧仮名を新仮名にした
ことにより、我々世代は、小学校,中学校~高校・大学と戦後教育で学んだこと
により、「旧仮名」はなかなか取っつきにくく戦前の文書が読めないし、または
たいへんに理解しにくい点が多い。「日本人が使う言葉が、戦後になって分断を
されてしまった」という感が強い。 |
「古典」といわずに、明治・大正・昭和初期の小説など、新仮名使いでは 情景・
情緒など損なうものが少なくない。 |
特に、俳句・和歌などは「旧仮名を使わないと、ピンと来るものがない」という
場合が多い。 |
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②尺貫法をメートル法に変えたこと。 |
全てのものに「メートル法」を適用したことは果たして正しかったのかは、今で
も大きな疑問である。 |
不動産関係の業務を行っている小生は、未だに土地の面積は、「㎡(平方メート
ル)」ではピンとこないので、頭の中で概算して「坪」に変換をしている。業界
でも、土地の面積を表示するのは、今でも「㎡」と「坪」の併記である。 |
石油の量(バレル)・釘の長さ(寸)・ゴルフ(ヤード)等、未だに観念的には
メートル以外の尺度を使用している。 |
スポーツにしても、テニスのスコアーは未だに伝統を守っているし、アメリカン
フットボールやゴルフにしてもヤードを使っている。 |
裁縫をしている人は今でも昔の単位一反一匹を使い、物差しでも「鯨尺」を利用
している人も少なくない。 |
なぜ、「日本だけが、すべてをメートル法にしなければならない」のかは、なか
なか理解しにくい。 |
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③住居表示法施行による地名の改悪。 |
これこそまさに改悪だ。地名改悪だけは、「その通り」と両手を挙げて賛成する。 |
谷川さんは1970年代末から1980年代にかけて、市民組織の「地名を守る
会」と「日本地名研究所」を作って、この二つを拠点として行政の施策に抗する
活動を続けた。 |
地名とは…。「日本人が 大地につけてきた足跡である」,「もっとも身近な民族
の遺産である」,「時間の化石である」,「大事にされないのは水と同じだ」。 |
谷川氏は、言葉を変えて繰り返し訴えた。確かに私達が親しんだ地名が破壊され
ていったことは記憶に新しい。 |
特に東京の中心部から由緒のある町名が次々に変更され、神田界隈など、外神田・
内神田など区分もつかないように変えられ、青山・麻布・本郷・など無残なほど
変更されてしまった。 |
それでも、住民が結束して反対をして 谷川さんらの運動も功を奏して、辛うじて
残った町名もある。 |
「佃(つくだ)」も危なく変更される所だったが、運動のお蔭で残ったと聞いた。 |
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「平成の大合併」以降に市町村合併が盛んに行われ、かつての由緒ある市町村名
が別の市名に変更されている。 |
我が一宮市でも、地名変更が以前に行われており、昔からの旧町名は、すっかり
書き換えられてしまい、消え去ってしまった。 |
役所の都合で、由緒ある地名が消えてしまったことは、かえすがえすも残念だ。
出来ることなら旧に復してもらいたいものだ。 |
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本人は「長年の努力をあざ笑うような奇妙奇天烈な地名の横行」を嘆いていたが、
それでも、碩学(せきがく)の行動力が歯止めになったことは間違いない。 |
為したことのすべてを 門外漢が知ることはできない。ただ、地名の安直な改竄に
憤り、古い地名を守るため力を尽くした事は記憶しておかねば…と思う。 |