はい、行ってきましたインセクトフェア。2年…いや3年ぶりですかね。

 

知らない方には一応説明として昆虫標本の即売会でして、関東のコイン収集の方ならばコイン即売会もやっている大手町のサンケイプラザと言えば分かると思いますが、そのフロア会場を3階と4階全て使用して行われる大規模イベントなのです。

ちなみに撮影禁止ですので会場の写真は無しです。

 

で、結果でございます。

あれっ?なんでこんなにエンマハンミョウ買ったんだろう…。

 

全体としてはあまり沢山は買わなかったというか、前日ちょっと忙しくてろくに寝ておらずフラフラしながら行ってまいりましたので、後回しにして入手していなかったチリクワガタやナンベイオオタマムシ、あとは大型のケンランタマオシコガネとか目に付いた物を購入。

しかし、いつもなのですが帰ってきてからあれを買えば良かったとか後悔してしまいますね。しょうがないですまた次回です。

 

今回は展脚品がほとんどで未処理のパック品は2点しか買いませんでした。本当は糞虫とか探したかったのですが、寝不足で目がショボショボして見ていても全然ピンと来ませんでした(笑)

あと、だいぶ状況が落ち着いてきたとはいえ、自宅待機なんかになると困るので人込みに長時間いるのも躊躇してしまい、あまりじっくり見る時間が無かった事もありました。今度はもう少しゆっくり時間を掛けて参加したいですね。

 

でも長年欲しかったトルキクスが買えたのでよしとしましょう。

70年代ブルガリアのビンテージ品。ブルガリアの名産はヨーグルトだけではないのですよ(?)

 

あまり昆虫やミヤマクワガタに詳しくない方は何のこっちゃでしょうが、いずれヨーロッパミヤマ関係は記事を書いてみるつもりですので詳しい話はその時にでも。

本当は70mm以上の大型個体が欲しかったのですが、お値段も凄い事になるでしょうし、私はこれでいいのです。

 

そして、もう一点こちらも買いたかった物。

ヤンバルテナガコガネの模型。

 

テナガコガネはかつて飼育していたくらい好きな昆虫で一箱専用に作っておりまして、本物は天然記念物で入手不可能なヤンバルのキットが欲しかったのです。

私はガレージキットとかも作ったりするので組み立ては問題ないのですが、手が遅いので完成は1年くらいかかると思います。いずれ完成しましたら個別のテナガコガネと一緒に紹介したいかと思います。

 

まあ、しかし問題は他にもありまして。

もう入れる所が無いんだよねこれが。(ギリギリ、ヤンソニーの下辺りに入るように作るつもりですが。)

 

あっ!もう一つ問題がありました!

3年前に買った物がぜんぜん展脚終わっていないんだよねこれも。(いや、オサムシは結構展脚しましたよ。)

 

そういえばたしか前回最後に行ったときはタイタン買ったんですよね。(思えばあれが父に見せた最後の標本…しみじみ。)

 

ではこんな所で、次回はいい加減にコインの紹介をしたいと思います。

 

朝夕がだいぶ涼しくなりまして、もう夏も終わりですね。

今年も忙しいままでろくに昆虫を見に行けなかったなという気持ちなのですが、毎年秋分の日に行われるインセクトフェアという標本の即売会には久しぶりに行けそうですので、ちょっと息抜きに昆虫を絡めたコインの話でも。

 

さて、スカラベと言いますと日本には生息していない昆虫なのですが、国内でもファーブル昆虫記で虫好きの方ならば読んだりしてお馴染みの、和名でタマオシコガネやフンコロガシと呼ばれる糞虫ですね。

 

ファーブル昆虫記のタマオシコガネ。

左からスカラベ・サクレ(ヒジリタマオシコガネ)。スカラベ・ティフォン。オオクビタマオシコガネ。アシナガタマオシコガネ。

 

ファーブルの時代にスカラベ・サクレからスカラベ・ティフォンが新たに新種記載されたそうで、現在では昆虫記で観察したスカラベはティフォンではないかとされているそうですが、生態はどちらも似ていますし私は何とも判断が付きません。

サクレの方はアフリカや地中海の沿岸部と島嶼。ティフォンはヨーロッパ側の内陸部からアジアへと棲み分けているとの事。

 

名前の通り自らや幼虫の食料にするために動物の糞で糞玉を作り、後ろ足でコロコロと転がす所からタマオシコガネと呼ばれますが、昆虫記に登場するスカラベ・サクレ(Scarabaeus sacer)は学名で”神聖な甲虫:ヒジリタマオシコガネ”という意味でして、こちらは古代エジプトで太陽や復活・再生の象徴である”ケプリ”として神聖視されていた事からの命名になります。

 

古代エジプトの人々はスカラベが糞玉を転がすのを太陽の運行に重ね合わせたり、昆虫記で語られているのですが糞玉を土に埋めた後の幼虫の成長期間が丁度月の公転周期と同じになるとの事で、これらの事柄から古代の人はスカラベが土中に埋めた玉から生命を生み出すと考えたようです。有名な王家の谷の遺跡の壁画や副葬品でも太陽の化身であるスカラベを使った物が沢山ありますよね。

 

GREEK COINSより。

 

と、前置きが長くなりましたが古代のコインの話を一つ。ギリシアコインにもスカラベを彫った物がありまして、名品コインと呼ばれると必ず取り上げられるであろう希少コインなのですが、シチリア島のアイトナ(エトナ。現カターニア)で発見されたとされる紀元前5世紀頃に作られたテトラドラクマ銀貨。現存一枚でベルギー王立図書館に収蔵されているこちらのコイン、表面はディオニュソスの従者でもあるシレノスの肖像が打たれていますが、その首の下にスカラベが打ち出されています。

 

ギリシア文明は地中海を挟んで古代エジプト文明とも交流があり、初期のアルカイック時代は先行した文明のエジプトから交易と共に芸術文化も取り入れられた為、初期ギリシアの彫像にはエジプト文化の影響も見られるそうです。

 

アフリカのタマオシコガネ(Kheper aegyptiorum)

 

という事で、このコインのスカラベもエジプトの影響を受けてスカラベのデザイン元であろうスカラベ・サクレやアフリカに広く生息するエジプトタマオシコガネ(Kheper aegyptiorum)とその近縁種かと思っていたのですが、ギリシア世界ではシチリアに生息するスカラベ(Thorectes marginatus)が大型で有名だったそうで、どうもこれが元ではないかとされるそうです。コインの作られたシチリア島のご当地スカラベだったみたいです。

 

と、書いていて昆虫に詳しい方は学名を見て気が付くと思いますが、これスカラベじゃなくてセンチコガネじゃん!(糞虫ではあるのですが糞玉は転がさない。)

実は古代世界では羽の硬い甲虫などは元々みんなスカラベと呼ばれておりまして、有名なヨーロッパミヤマクワガタも農家の害虫コフキコガネもみーんなスカラベ。分類学など考えなくてもよい古代世界の大らかさですね。(古代ローマではミヤマクワガタをルカニアの牛とか鹿の角のスカラベと呼ぶように、種類によって~のスカラベと呼んだようです。)

確かにスカラベは前脚の跗節が無いのですが、上記のコインをよく見ると前脚の跗節があるように見えるのでセンチコガネなのかもしれませんね。

 

大らかさというと、古代の人はスカラベの生活史や太陽と星座の運行など自然環境を詳しく観察している方もいたようですが、中にはいい加減な人もいたようで、発掘されたお墓の副葬品としてスカラベの代わりに大型のゴミムシダマシを入れてるのを以前に見た事がありました。うーん、神官の方か、はたまたお手伝いの職人か、古代の人もいい加減だなと思ったりしちゃいますね。

 

パッキングのままで申し訳ありませんがエジプトのゴミムシダマシの仲間(Prionotheca coronata)これをお墓の中に入れられても復活はできません。

 

ともあれ、エジプトからの影響は多少としてもあるのではないかと思いますし、ギリシア人が独自に自分の土地の昆虫に対応してコインのデザインに取り入れたと考えるとそれもまた素晴らしい事だと思います。

古代世界のスカラベのデザインはちょっと思い浮かぶ限りで私はこのコインしか知らないのですが、近代コインではいくつかスカラベデザインの物を見た事がありますので機会があれば入手してみるのもいいかもしれませんね。

 

ではこんな所で。

 

ふー疲れた。

毎年夏は忙しいのですが、私の職場も遂に自宅待機者が連続で出てしまい、穴埋めでもー大変!おまけで法事まで重なってこりゃ倒れるかもしれないな状態でした。家に帰って寝るだけの生活も逆に健康的な気がするものの、ブログもろくに見れない毎日はやっぱり心の健康には悪いですよね。

 

さて、ようやく余裕が出来たので何か書かないとという事で、紹介が残っていたヘレニズムコインの最後としてアレクサンドロスタイプの銀貨の話をしたいと思います。

 

トラキア メセンブリア 紀元前175-125年

テトラドラクマ銀貨

AU Strike5/5 Surface3/5 lt.graffito

 

メセンブリアの都市があったトラキア地方と言うとリュシマコスの銀貨で触れたヘレニズム国家のトラキア王国があった地ですね。王国はリュシマコスの死によって短期間で崩壊してしまい、アンティゴノス朝マケドニアの影響を受ける事になりましたが、勢力を拡大してきた共和制ローマによりマケドニア王国が紀元前168年に滅亡すると、メセンブリアを含めたトラキアは都市連合の感じで独立していたようで、その頃に作られた物となります。

その後、紀元前71年にローマに組み込まれ都市国家としての独立は終わりを迎えます。

 

紀元前168年頃のトラキア周辺(マケドニアはローマに敗北後、4つの自治領に王国を分割されています。)

 

アレクサンドロスの金貨の話でこれもちょっと触れましたが、金貨と比較してアレクサンドロスタイプの銀貨の方は結構後の紀元前1世紀まで作れていたりします。マケドニアの影響範囲であったせいか同じトラキア地方のオデッソスや各都市と共に、メセンブリアはローマの支配になった後も紀元前60年前後くらいまで作られていたようです。

 

そして、トラキア地方では長くアレクサンドロスタイプが作られ続けていますので、連続して図柄の作りの変貌を追う事も出来ます。NGCだと3区切りくらいで時代毎にラベルがありますね。私の紀元前175~125年の物は真ん中辺りになります。近代貨の年号完収みたいに揃えてみると面白いかもしれませんね。えっ?私は予算無いので無理ですよ(笑)

 

裏面は…どうなんでしょうかねこれ。

表面も図柄のオリジナルであるマケドニアからはだいぶデザインが変わっていますが、裏面のゼウスの座像のこれは…。

 

ヘレニズムの後期に入るとコインが幅広になるせいか、打ち出しも浅打ちが多くなり不鮮明になってしまう物もありますが、これは図柄の出来自体のやる気がだんだん無くなってきていますね。ギリシア都市国家はローマに先立って銀貨の原材料不足に悩む事になりますので、材質が劣化したコインなんて作る気にならないよ!なのか単純に職人の腕が落ちてきてるのか。

このコインの後の紀元前1世紀のコインになるとさらに図柄の出来が落ちたり、プトレマイオス朝のような大国でも材質の劣化したビロン貨になってしまいますので、ヘレニズムとギリシア都市国家コインの終焉を見るような気持ちになってきますね。

 

プトレマイオス朝が滅亡し、ローマの中に島のように残されていたギリシア都市国家もコインを皇帝肖像の物に切り替えていき、帝政期には一時的に鋳造権を戻される事もあったようですが、多種多様な国家で発行されたギリシアコインは役割を終える事になります。

ギリシア・ローマ時代と呼ばれるように、ローマのコインもギリシアから引き継いだ神話の神々や、皇帝達の肖像も素晴らしいのですが、私はやはり大型のギリシアコインの素晴らしさも捨てがたいのですよね。

 

という事でヘレニズム時代のコインの話はここら辺で一旦終わりにして、次は少しだけ残っているギリシア都市国家のコインの話でもできればと思います。

 

ではこんな所で。